掌小説語り~自作つぃのべる集~56

自作つぃのべるのまとめです。 2017年12月分。
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リュカ @ryuka511

薄い服の上から、君の背骨の凹凸がはっきりと分かる。吐く息が白くなって、君はこの冬を越えられないかもしれないという嫌な予感に苛まれた。今にも倒壊しそうなボロ小屋で、君を抱きしめ震える。ずっと一緒に生きてきた。君の生命が尽きる前にこの小屋が倒壊してくれたら、一緒に逝けるのに #twnovel

2017-12-01 01:09:08
リュカ @ryuka511

ひとふりの塩で私を退けられると思うなよ。怨霊と化した女はにやりと笑い男に近づく。腕を伸ばせば、魔除けの塩も呪符も彼女を妨げる事はなく、怯えた顔で震える男の喉を掴んだ。事切れた男を無造作に放り捨て女は笑う。「お前が信心深ければ塩も呪符もお前を助けただろう。全ては報いだ」 #twnovel

2017-12-02 00:41:12
リュカ @ryuka511

強大な彼女の力は、魔界と地上を繋ぐ門の結界だ。彼女はその為だけに存在を許された。魔王の侵攻が無ければ彼女が魔王にされただろう。そして世界は、彼女の生命をもって魔界を永久に封じる事を求めた。諦観の顔で頷く彼女の手を引く。「君の死で何が終わるという」閉ざされた君に愛と自由を #twnovel

2017-12-03 00:23:45
リュカ @ryuka511

色褪せた写真の中の君は笑っていた。この笑顔が好きだったのに、僕は君を泣かせる事しか出来なかった。不安そうな君の傍にいるべきだった。だけど、あの時の僕にその選択は許されていなかった。写真が色褪せる程の時が過ぎても、君の顔は戦死した僕の遺品を受け取った日のまま凍りついている #twnovel

2017-12-04 01:07:41
リュカ @ryuka511

この雪原を抜ければ魔王城はすぐそこだ。だが仲間とはぐれ吹雪の中を彷徨う。点在する枯れ木、あの木はさっきも見た気がする。皆は無事だろうか。どっちに進めばいい。吹雪の中では全ての音が絶望の嘆きに聞こえる。囚われてはいけないと首を振る。魔王城は、最後の戦いは、近いはずなのだ #twnovel

2017-12-05 00:36:24
リュカ @ryuka511

絶対に生きてやると誓った。奴隷船に私を売った奴に、そいつから私を買った奴に、復讐してやるのだ。傷だらけの身体を、縮こまらせて眠る。寒さも痛みも飢えも、その為に耐えてやる。絶望などしないと、固く噛み締めた唇に血の味、滲んで、まだ生きていると実感する。これも希望のひとつ。 #twnovel

2017-12-06 01:29:43
リュカ @ryuka511

兄上が不慮の死を遂げ、異母弟の僕が帝位を継ぐ。とはいえ、成人前の僕が戴いた帝冠はただの飾り、実権を握るのは母上だ。僕は知っている。母上が兄上を弑したのだと。僕が成人して実権を握ったら、次は僕が狙われるのだろうか。母上ならやりかねない。自分の身を守らなくては。やられる前に #twnovel

2017-12-06 23:39:11
リュカ @ryuka511

街を訪れた旅芸人に惹かれ、僕も旅芸人になると誓った。華麗な舞や歌で人の心を癒す、素晴らしい職だ。だが、旅芸人とは卑しい身分の奴がなるものだと猛反対され、家を飛び出した。弟子入りを許され厳しい練習に耐え、初ステージを踏む。身一つ、嘘偽りの無い生き方。この路を恥じはしない #twnovel

2017-12-07 23:55:44
リュカ @ryuka511

高級スポーツカーに乗り、多忙なスケジュールの合間を縫ってジムに通い自分を磨く。気さくで真摯な人柄の彼に、女性だけでなく男性のファンも多い。彼がTVに映らない日は無かった。 #twnovel 誰もが彼を成功した幸せなスターだと思っていた。連日世間を賑わせる彼の自殺の動機は、誰にもわからない。

2017-12-09 00:23:05
リュカ @ryuka511

穏やかな笑みを湛えた彼女の預言は、行く先々で重宝がられる。預言者である彼女が振るう剣は、いつしか希望の剣と呼ばれた。人々を守り、未来を拓くと。だが人々は知らない。彼女の内に渦巻く愛憎を。彼女が何を思い剣を振るうのかを。彼女の旅は、世界の全てを失くす旅。「未来など、不要」 #twnovel

2017-12-10 00:52:06
リュカ @ryuka511

「王子、こちらに!」私の手を握り返した幼い手は、恐怖で震えていた。王と王妃は無事だろうか。隣国の奇襲に自ら剣をとった王、王子を逃すため進んで囮になった王妃。二人の想いに応えるべく、王子の手を引き城から脱出する。王子の手に平和な王国を取り戻せる日まで、お守りし共に戦うのだ #twnovel

2017-12-11 01:42:38
リュカ @ryuka511

予告通り宝石を奪った怪盗は、駆け回る警部達を眺め満足げに笑う。「ご苦労様です」「人の物を奪って楽しむとは悪趣味だな」「奪うからこそ宝石は美しいんですよ」現れた探偵に嬉しそうに笑った。「所有欲を掻き立て、人々の手を流転した魔性の輝き。私が手にするに相応しいでしょう?」 #twnovel

2017-12-12 00:48:22
リュカ @ryuka511

暗くて冷たい海の底、結局ここが一番落ち着く場所だった。人間に恋をして、足を得て陸へ行った。だが二本の足で歩くのは、人魚には苦行だった。太陽に煌めく街も、ただ眩しく目を射るだけだった。失意を抱え人魚は海に帰る。冷たい水の中を自由に泳ぐ、そんな当たり前の暮らしの尊さを知った #twnovel

2017-12-13 01:25:51
リュカ @ryuka511

こんなにも辛く悲しい別れが来ると知っていたなら、始めから愛さなかっただろうか。出会わずに、愛し合わずにいた方が、幸せだっただろうか。君の棺にすがり首を振る。それでも、君との時間は幸せだった。君もそうだろう?私はいつ君の元へ行けるのだろう。転生などせず、待っていてくれないか #twnovel

2017-12-14 00:41:26
リュカ @ryuka511

戴冠式を控え王子は警戒を強める。継母である王妃が、自分の王位継承を快く思うはずがない。王位継承を無事に済ませ、王国と自分の身を守らなくてはならない。そして、母親の思惑など知る由もなく、自分を兄と慕う幼い異母弟を、王妃の傀儡になどさせはしない #twnvday

2017-12-15 02:25:44
リュカ @ryuka511

剣を構え対峙した瞬間、敵わないと悟った。だが戦わねばならない。私には切り札がある。間合を詰め攻撃を誘う。私の胸を刃が貫くその刹那、仕込んでいた術を放つ。奴の手を掴み剣を通して術を叩き込む。王国を守るため、この戦に負けは許されない。刺し違えてでもこいつを倒すのが、私の使命 #twnovel

2017-12-16 01:19:07
リュカ @ryuka511

「姫、どうか幸せに」船は嵐に遭い沈んだ。本来ならこの船には魔女が最も大切に想う姫が乗るはずだった。人質として嫁がされる姫に化け、魔女が船に乗った。姫がいないとバレないよう魔法で船を隠す。魔女の話を聞いた人魚は魔女の魔法を助けた。やがて船は朽ち果て、今は人魚も魔女もいない #twnovel

2017-12-17 00:08:47
リュカ @ryuka511

満月への願い事は強く願えば何でも叶うという。「なら、矛盾した願いを同時に願ったらどうなるの?」「より気持ちの強い方が叶うのさ」「そうなんだ」私達は無言で満月を見上げた。 #twnovel 数日後、私達は別れた。私の気持ちの方が強かったようだ。少し欠けた月にお礼を言って歩き出す。

2017-12-18 00:55:53
リュカ @ryuka511

魔物なんて異世界のモノガタリだと思ってた。だがここは紛れもなく昨日までと同じ世界で、目の前の魔物もまた現実だ。混乱しながら手にした傘で魔物に応戦する。戦い方なんて知らないし怖い。でもやらなきゃやられる。傷だらけで魔物を追い払う。現実の痛みに震え、この物語の終わりを願った #twnovel

2017-12-19 01:08:42
リュカ @ryuka511

ゴーストタウンと化した街を魔女は悲しげに見つめる。街は突然深い霧に包まれた。人々は魔女に助けを求め、魔女も力を尽くした。だが、意思を持つかのような霧は街を覆い尽くす。霧に閉ざされ街は魔女を残し死に絶えた。どうしてこんな事に。霧に潜む悪意の正体を掴めぬまま、魔女も息絶えた #twnovel

2017-12-20 02:26:34
リュカ @ryuka511

見上げた空は、あの人の瞳と同じ色をしていた。遠い故郷に残してきた恋しい人。戦が終わって無事に帰ったら、結婚を申し込むのだと密かに決めていた。「綺麗だ……」遠のく意識で見た空は、鮮烈な色をして、悲しむだろうあの人の瞳を思わせた。「どうか……」 #twnovel

2017-12-21 02:02:03
リュカ @ryuka511

母は妹だけを連れて家を出た。何度も振り返り泣きながら僕を呼ぶ妹。そんな妹を急かして叱り、ちらりとも僕を見ない母。母を責める祖母。無言の父。何があったのかなんて知らないし、知りたくもない。昨日と同じ明日はもう来ない。両親の離婚、それは幼い僕らにとっての世界の終わりだった #twnovel

2017-12-22 01:40:45
リュカ @ryuka511

私の行為は罪であり正義である。法は明らかな悪を罰さなかったから、他の何かが罰さなければならない。目には目を、悪には悪を。復讐は何も生まないというのは嘘だ。破壊された心に僅かでも慰めが得られるなら意義はある。法や、まして神に成りかわる気など無い。神に赦しなど乞うものか #twnovel

2017-12-23 00:15:25
リュカ @ryuka511

「お前だけは儂の傍にいてくれるのだな」かつての王は痩せた手で猫を撫でる。栄華を極めた魔法王国は、彼の代で滅んだ。彼は自分を責め続けていた。猫になった魔女は小さく鳴く。悪いのは己の力に驕った私だと。魔法文明を築き王国を支えた魔女は道を誤り国を傾けた #twnovel 王を弔い、猫は姿を消した

2017-12-24 01:36:53
リュカ @ryuka511

サンタの正体は父親だと、息子は友達から聞いたらしい。それでもサンタを信じたい息子の為に、私達は必死になって演じるの。サンタに扮したパパが息子の枕元にプレゼントを置き「Merry Xmas」と囁いてる所を撮影する。翌朝、「サンタさんを隠し撮りしたよ」と動画を見せたら喜んでくれるかな? #twnovel

2017-12-25 00:09:01