日本労働研究雑誌 2020年2・3月号~学界展望:労働法理論の現在 / 特集:産業としての就職活動
日本労働研究雑誌 2020年2・3月号~学界展望:労働法理論の現在 / 特集:産業としての就職活動 / jil.go.jp/institute/zass…
2020-05-30 00:20:12[PDF] 産業としての就職活動 大学におけるキャリア支援・教育の現在地─ビジネスによる侵蝕、あるいは大学教育の新しいかたち? 児美川 孝一郎(法政大学教授) / jil.go.jp/institute/zass…
2020-05-30 00:21:11今どきの大学は,正課外の活動としては,「キャリア支援」という名の就職支援サービスを多種多様に学生たちに提供し,正課教育においてすら,「キャリア教育」の名のもとに,就職支援とそう遠くはない教育機会をいかに提供するかに躍起になっている。
2020-05-30 00:21:12学生たちは,そんな大学側の姿勢を敏感に感じとり,大学教育のホンネ(=「学業も大事にしてほしいが,就職実績はもっと重要だ」)を,いわば「隠されたメッセージ」として嗅ぎ取っている。
2020-05-30 00:21:12つまりは,今では大学教育の側こそが,「学生の本分は学業」という不文律を,単なるタテマエの位置に奉りはじめているのである(児美川2018)。
2020-05-30 00:21:13(´ω`;) 教員控室に行けば,従来の大学教育の現場にはいなかった,必ずしもアカデミックなバックグラウンドを有するわけではない「新しいタイプの大学教員」(児美川 2017a)の方々とお会いすることが少なくない。
2020-05-30 00:21:14彼らは,人材系の企業などから派遣された方を含めて,大学の「キャリア教育科目」を担当する非常勤講師であるか,学部・学科等の教学単位ではなく,キャリアセンター等に所属する任期付の特任教員である。
2020-05-30 00:21:14見てきたような大学教育をめぐる今日の「風景」は,少なくとも30年前の日本の大学では見られなかった,いや,ありえなかったものであろう。端的に,大学教育そのものが,明らかに就職支援の側に傾き,前のめりになってきているのである。
2020-05-30 00:21:15就活のプラットフォームと活動スタイルの変化(ウェブサイトを軸にした募集,エントリーシート,能力・性格を測る適性検査の導入等)の影響もあって,大学が行う学生への就職支援は,しだいに人材ビジネスへの依存を強めていたのである。
2020-05-30 00:22:42そこに,新たに「キャリア支援」という業務が生まれたために,ビジネスへの依存は一気に加速したと見ることができる。
2020-05-30 00:22:44(ヽ´ω`) もとより大学の就職部(キャリアセンター)は,就活前の低学年次の学生を対象とする「キャリア支援」の実績やノウハウを持ち合わせていたわけではない。そこに目をつけ,巧みに大学教育の世界に参入してきたのが,人材・教育ビジネスに他ならない。
2020-05-30 00:22:45人材・教育系の事業者は,各大学におけるキャリア教育科目の授業設計や教材等についてのコンサルティングを請け負うとともに,キャリア教育科目の担当者を派遣しはじめ,その数を増加させていった。それだけではない。
2020-05-30 00:22:47これらの民間事業者の出身者で,その後は個人事業主などとして活動している者や,民間事業者によるキャリア教育科目への派遣講師の経験者などの中から,続々と個人としてキャリア教育科目の非常勤講師となる者が増えていったのである(渡邉 2017)。
2020-05-30 00:22:48こうして,大学のキャリア教育科目を担当する「外部人材」のプールが膨れていくわけであるが,このプールの中から,キャリアセンター付の特任教員などとして大学スタッフになる「新しいタイプの大学教員」も生まれ,各地の大学に定着していったわけである。
2020-05-30 00:22:49大学設置基準の改訂によって,日本の大学教育が,キャリア支援・教育に取り組むことを義務づけられ,かつ,法的にも正当化されることによって,全国の大学に遍く普及した時期である。原理的に考えれば,そもそもキャリア支援・教育は,
2020-05-30 00:23:58「学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第83条)すべき大学が,正課教育において取り組むべきものなのかといった議論が起きたとしても不思議ではない。しかし,各大学において,そんな大議論が生じた形跡はおそらくない。
2020-05-30 00:23:58文科省の高等教育政策も,各大学も,大学制度の「原則」ではなく「現実」と「実態」を優先し,ユニバーサル化した大学におけるごく普通の学生が,困難化した「大学から職業への移行」プロセスを漕ぎ渡っていくことを大学教育全体で支援するという道を,言ってしまえばなし崩し的に選んだのである。
2020-05-30 00:23:59キャリア教育科目の多くは,キャリア関連の学問や理論を基盤として,系統的な学びを深めていくといった授業設計になっているというよりは,将来設計に向けて,学生の気づきや意識づけを促すことを目的とするような実践的な内容・組み立てである。中には,かつては正課外のセミナーや講座で
2020-05-30 00:24:59実施してきたような内容を各回の授業にあてはめ,「キャリア教育科目の授業の一部を担当する者」を示す図4(日本学生支援機構2017)が示唆するように,授業担当責任者は存在しているものの,実質的には毎回のように異なる担当者がやってきて授業をするといった例もないわけではない。
2020-05-30 00:25:00(・д・)ホォー 大学におけるキャリア支援・教育の拡大プロセスは,結局のところ,人材・教育ビジネスとの「連携」という名の依存関係を抜きにしては成り立たなかったという構造的特性を有している。そもそもの背景には,1990年代以降における長期不況と日本型雇用の縮小・再編に基づいて,
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