過失割合について~別冊判例タイムズ38の読み方~part1

酔いどれのミドル弁護士による過失割合についての「別冊判例タイムズ38」の読み方を解説したものです。今回は、「第1 38の読み方」の前半です。次回は「第1」の後半を載せる予定です。 その後に「第2 38未掲載の過失割合 」「第3 過失割合の争い方」が続きます。
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ミドル巻き @igiarigodoudesu

では、ぼちぼち「過失割合について~別冊判例タイムズ38の読み方~」を緩やかに投下していきます。 コメントやRT大歓迎ですので、「こういう方法もある」「こういう点にも注意」「それって本当にそうなの?」等ございましたらどしどしお願いします。 そうやって皆でスキルアップできればと思います。

2020-06-01 11:46:34
ミドル巻き @igiarigodoudesu

過失割合について~別冊判例タイムズ38の読み方~ 第1 38の読み方 1 総論 別冊判例タイムズ38(以下「38」と言います)は過失割合を検討するにあたってのマストアイテムです。

2020-06-01 11:49:43
ミドル巻き @igiarigodoudesu

個人的には、ここに記載されている割合の中で9対1や8対2なんかは全部100対0でいいんじゃないかと思うのですが(被害者に落ち度ないと思う。てか、これ実際に車運転したことがある人が作ったのかって思うときもある)、実際裁判実務がこれで動いているので、38を使いこなせる必要があります。

2020-06-01 11:51:07
ミドル巻き @igiarigodoudesu

昔は単に該当する事故態様のページだけを見ていたのですが、それだけでは案外見落としが多いということに気が付き、これは簡単なようで意外と奥が深いと思っている次第です。 私の知識整理も兼ねて38の読解術(というほど大げさなものではありませんが)を記載してきます。 誤字脱字はご容赦ください。

2020-06-01 11:55:25
ミドル巻き @igiarigodoudesu

2 38の基本的構造 (1)総論 最初に「序章」として、序論と各種用語説明(この用語説明が重要)が記載されています(第0章です)。その後、第1章から第6章にかけて、当事者の形態ごとに分類された事故態様の各論があります。

2020-06-01 12:00:46
ミドル巻き @igiarigodoudesu

第1章「歩行者と四輪車・単車との事故」、第2章「歩行者と自転車との事故」、第3章「四輪車同士の事故」という感じです。

2020-06-01 12:00:47
ミドル巻き @igiarigodoudesu

(2)各章の構造解説 第1章「歩行者と四輪車・単車との事故」(以下「歩行者と四輪車の事故」とだけ記載します)を例にとります。 まず「1 序文」があります。

2020-06-01 12:03:52
ミドル巻き @igiarigodoudesu

この序文は「歩行者と四輪車」の事故態様における簡単な概説と、当該事故態様の過失割合の修正要素を判断するに必要な事項(幹線道路、児童・高齢者等)の記載があります。この修正要素事項が重要です。

2020-06-01 12:03:52
ミドル巻き @igiarigodoudesu

その後、「2 横断歩行者の事故」、「3 対向又は同一方向進行歩行者の事故」、「4 路上横臥者等の事故」というように、「歩行者と車の事故」の中での典型的な事故態様に分類されています。この分類にも序盤に解説があります。

2020-06-01 13:00:57
ミドル巻き @igiarigodoudesu

この分類の中でさらに分類分けがされています。 「2 横断歩行者の事故」を例にとると、「(1)横断歩道上の事故」「(2)横断歩道外における事故」という分類があります。 この分類の序盤にも解説文があり、これも重要だったりします。

2020-06-01 13:00:57
ミドル巻き @igiarigodoudesu

この分類の中に、さらに事故態様に分かれて分類されています。「(1)横断歩道上の事故」で言うと、「ア 信号機の設置されている横断歩道上の事故」「イ 信号機の設置されていない横断歩道上の事故」等です。 この分類の序盤にも解説文があり、これも結構重要だったりします。

2020-06-01 13:00:57
ミドル巻き @igiarigodoudesu

その後、ようやく各事故態様の図が出てきます。 「ア 信号機の設置されている横断歩道上の事故」で言えば、「(ア)歩行者と直進者との事故」→「a  横断中の信号変更なし」でようやく事故図の1図が出てきます。

2020-06-01 13:00:58
ミドル巻き @igiarigodoudesu

(3)プチまとめ 要するに、序論→第1→1→(1)→ア→(ア)→aで「1図」にたどり着くという構造になっています(各事故態様によっては分類が“ア”のラインで止まっているものもあります。“a”がたぶん最小の分類です)。

2020-06-01 13:20:07
ミドル巻き @igiarigodoudesu

ここで重要なのは、各図に行き当たった後、それぞれの序文を読まなければいけないということです。

2020-06-01 13:20:08
ミドル巻き @igiarigodoudesu

(これから各論に入ります。たぶんここから面白くなります)

2020-06-01 13:23:15
ミドル巻き @igiarigodoudesu

(4)43図を用いた説明 43図(120頁)を例に説明します。 43図は、「第1章 歩行者と四輪車の事故」→「3 対向又は同一方向進行歩行者の事故」→「(3)歩車道の区別のない道路における事故」→「ア 道路の側端を通行している場合」→「(ア)右側端を通行している場合」の事故です。

2020-06-01 13:26:16
ミドル巻き @igiarigodoudesu

依頼者から聞き取った事故態様から43図が妥当すると考えた後、その1ページ前の119頁を読みます。 そこに、「歩車道の区別のない道路とは、歩道等が設けられていない道路をいう。ただし、幅員が1mに満たない路側帯であっても歩行者がその路側帯上を通行していた場合は【39】を適用する」とあります。

2020-06-01 13:26:16
ミドル巻き @igiarigodoudesu

もし、被害者が路側帯上を通行していたら、43図ではなく39図を適用しなければなりません。当然ですが、39図の方が被害者に有利です。 路側帯を歩いていたのに、「歩道を歩いていないから」と深く検討せずに43図をそのまま適用したら弁護過誤になる可能性があります。

2020-06-01 13:26:16
ミドル巻き @igiarigodoudesu

(5)黄色点滅・赤点滅の交差点 もう一つ例をあげます。 信号機のある交差点での自動車の直進車同士の事故で、信号機が赤点滅と黄色点滅の状態であったとします。

2020-06-01 14:02:05
ミドル巻き @igiarigodoudesu

被害車両が黄色点滅の交差点を直進しようと交差点に進入したら、左側からバイクが赤点滅無視で直進してきたので、交差点内で一時停止をして、バイクが交差点を無事に通過したので直進を再開しようとしたら、さらに左側から来た後続の四輪車が被害車両に衝突したという設定にします。

2020-06-01 14:02:05
ミドル巻き @igiarigodoudesu

その場合、直感的には黄色対赤色の交差点の事故のように思えます。 黄色対赤信号の事故であれば、99図です(210頁)。

2020-06-01 14:02:05
ミドル巻き @igiarigodoudesu

構造上は、「第3章 四輪車同士の事故」→「2 交差点における直進車同士の出会い頭事故」→「(1)信号機により交通整理の行われている交差点における事故」→「イ 黄色信号と赤信号者との事故」です。

2020-06-01 14:40:42
ミドル巻き @igiarigodoudesu

ところが、「イ 黄色信号と赤信号者との事故」の序盤(209頁)に、「一方が黄色点滅信号、他方が赤点滅信号の交差点における出会い頭事故については基本的に【104】により処理するのが相当である」と書かれています。 104図は、信号のない交差点で一時停止規制がある交差点の事故です。

2020-06-01 14:40:42
ミドル巻き @igiarigodoudesu

つまり、この事故は「信号機あり」ではなく「信号機なし」の事例になります。 さらに、ひとつ戻って「2 交差点における直進車同士の出会い頭事故」の序盤を見ると「交差道路等を走行する車両の通過を待つために停止していた車両等に衝突した場合は、本基準の対象外である」(207頁)と書かれています。

2020-06-01 14:40:42
ミドル巻き @igiarigodoudesu

今回の事故は、バイクが通過するのを停止して待っていた際に起こった事故ですので、そもそも104図も対象外ということになります。 停止車両に対しての追突なのでむろん事故状況によりますが104図よりも相当有利な過失割合になるはずです。

2020-06-01 14:40:43