
ミネアポリス/セント・ポール抗議デモ・騒乱の社会・文化的背景解説
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Dan Kanemitsu-Translator, etc. Likes models and doujinshi. 英和和英翻訳&通訳・文化考証・演技指導、創作。趣味は模型や同人誌。pixiv.me/dankanemitsu log twilog.org/dankanemitsu

1976年に創業のアメリカ中西部屈指のSF/ミステリー小説専門店、Uncle Hugo's & Uncle Edgar'sが焼き討ちさ・全焼に。大変な損失です。半世紀以上前の貴重な資料や稀覯本が失われてしまいました。前回立ち寄ったときに撮影しなかったのに慙愧に耐えない思いです。非常に悲しい facebook.com/permalink.php?…
2020-05-31 02:19:56
ミネアポリスで起きた抗議デモを発端に全米で騒乱が発生しています。個人的な感想ですが、一応自分なりに解説させてください。あくまでも兼光個人の分析です。
2020-05-31 13:09:48
警察官に取り押さえられた丸腰の黒人男性が死亡した事件が起きた米ミネソタ州で、抗議デモ参加者が暴徒化。 pic.twitter.com/IzPfQsMFGc
2020-05-29 17:00:01
ミネソタ州はリベラル気質が古くからあり、民主党の牙城でした。全米がレーガン大統領へと傾いた時でさえ、50州で唯一民主党のモンデール候補を選んだ州です。まあ、地元候補ということもはあるのですが。 en.wikipedia.org/wiki/1984_Unit…
2020-05-31 13:13:31
常に民主党はリベラル気質を代弁していたわけではありません。共和党が企業・大都市寄りである一方で、民主党は労働者&農民・地方寄りだった時代が20世紀初頭から21世紀手前まで続きました。ミネソタの民主党は性格にはDemocratic Farmer-Labor Partyと言って民主農民労働党というくらいです。
2020-05-31 13:17:40
人種差別的扱いを受けていた黒人の参政権と隔離政策に対抗した公民権運動が大きく噴き上がった1960年代、当初民主党は懐疑的でした。特に南部の民主党は反対していましたが、都市部の民主党の声が強い北部民主党は公民権運動を支持する方向へと舵取りをします。ケネディ・ジョンソン政権が後押しします
2020-05-31 13:22:41
ミネソタは田舎が広いです。林業や鉱業、農業が非常に盛んでしたが、貿易や工業化を伴い相対的に縮小します。一方、ミネアポリスやセント・ポール、ダルースやロチェスターなどの都市化は活発で工業化も進みます。一次産業から二次産業、三次産業へと転換して言ったのです。
2020-05-31 13:27:07
例えば皆さんが知っているかもしれない3Mですが、この会社の正式名称はMinnesota Mining and Manufacturing、つまり「ミネソタ鉱業及び製造会社」だったのです。ミネソタは他にもHoneywellやControl Data、SeagateやMedtronicsなどの企業が地元のIT化と経済基盤と教育の高度な発達に関わっています。
2020-05-31 13:46:32
北欧系・ドイツ系アメリカ人が圧倒的に多いミネソタですが、都市部では足りない労働力を向かい入れるために多くの黒人やヒスパニックなどの有色系アメリカ人を向かい入れてきました。比較的教育がしっかりしていることと地元製造業やサービス業での雇用口がたくさんあったのです。
2020-05-31 14:04:43
市民の大よそ温和な気質と人種差別を禁ずる法整備もあり、他の州からの移住だけに留まらず多くの移民が流入。同時に1960年代から1980年代にわたって裕福な人々(主に白人)は都市部の喧騒を忌避し、より閑静な町並みである郊外へと流出します。この結果、地域によって人種構成に大きな偏りが生じます。
2020-05-31 14:12:29
この結果、一部の地域に黒人やヒスパニック、ソマリアやモン族の方々の構成が非常に大きい地域ができました。ミネソタの総人口は500万人強ですが、そのほとんどが都市部に集中しています。人種構成からすると85%くらいが白人なのですが、都市部などの一部の地域となると白人が少数派になりかけます。
2020-05-31 14:16:12
90年代になるとIT系や弁護士、会計士などの高度な訓練が必要な職業の方々が長い自動車通勤を嫌がり、都市への逆流入が一部で始まります。これで今まで比較的安価だった住居が高価になり、裕福ではない住民は特定の地域へと集中するのが加速しました。
2020-05-31 15:28:25
郊外へと移転していた富裕層が大都市中心部への回帰するのを「都心回帰」といいますが、この結果で発生するのが「ジェントリフィケーション」(gentrification)です。住居や商業設備がより裕福な地域へと変貌する減少ですが、家賃上昇でそれまでの住民が追いやられる結果がミネアポリスでも発生します。
2020-05-31 15:35:33
90年代に入ると富裕層を優遇するような共和党の政策、即ち減税を行い、教育や福祉などを抑制して政府の支出を減らす主に共和党の政策がミネソタにも大きな影響を及ぼし始めます。財政的に苦しいので教育費への補助が削減される一方で、より教育が必要になる移民の流入が止まらないのです。
2020-05-31 15:39:49
以前のミネソタから比べると福祉・教育政策はかなり骨抜きになったという印象が強いのですが、それでも他の州に比べるとまだマシという具合です。労働力不足の業種、主に製造業とサービス業がまだまだあるので雇用の受け入れ口はあるのですが安価な住居は少なく、まともな教育は大変高価になりました。
2020-05-31 15:42:54
製造業が縮小する最中、よりよい生活を目指すならばより良い教育を目指すのが至上命題ですが、都市部の公立学校はかなり疲弊しており、都市部に住む富裕層は良い私立学校や高価な州立大学へと子供を送り出します。社会的地位向上の機会が失われる問題はツィンシティーズの黒人を直撃したのです。
2020-05-31 15:47:20
麻薬問題をはじめ、都市部に住むアフリカ系アメリカ人には多くの逆境が待ち受けています。雇用不安と麻薬の浸透、そして貧困層にとって法の運用が不利に働きやすいことがかかわり、家族が不安定であることが多いのです。父親を知らない黒人の子供はめずらしくないといわれています。
2020-05-31 15:50:53
警察の活動は地域住民にとって必要不可欠ですが、経済的地位が低く、長年にわたってアフリカ系アメリカ人に対して犯罪者のレッテルや無意識的な差別意識が浸透している米国において、経済的に裕福ではないアメリカ黒人社会は警察によって不当な扱いが発生しやすい現状があります。
2020-05-31 15:58:12
黒人にとって警察は安心・安全を可能にする存在ではなく、自らに対して脅威を与えることが珍しくない存在と感じているのです。これは全米で起きている問題なのですが、ミネアポリスとセント・ポールには独自の事情があります。ここ5年以上、警官が軽はずみで発砲する事件が多発しているのです。
2020-05-31 16:07:17