印象に残った落選作についての、いくつか

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K島氏 @blue_airship

ミステリーズ!新人賞の二次読みのためにいろいろな仕事が停滞していたのだが、そこから解放されたいま、どこから手をつけて良いのかわからない。いや、まずは『聖域』文庫版の残った作業を片づけることが最優先事項なのですが。大倉崇裕さんの山岳ミステリ『聖域』の文庫版は7月上旬刊行予定です。

2011-06-23 22:44:16
K島氏 @blue_airship

第8回ミステリーズ!新人賞の二次選考結果が公開されました。最終候補作品は7編です。桜庭一樹、辻真先、貫井徳郎各氏による最終選考は、7月中旬に行われる予定です。 http://bit.ly/a30g2v

2011-06-23 22:52:05
K島氏 @blue_airship

第8回ミステリーズ!新人賞、ここまでの雑感。今年の傾向や最終候補作については最終選考後につぶやくつもりですが、いまのところは飽くまで個人的な視点から、印象に残った落選作についていくつか述べます。作者がこれを読む可能性は低いでしょうが、面白く読んだ、ということが伝わればいいな、と。

2011-06-23 22:59:52
K島氏 @blue_airship

今回は迷った末、10編に票を入れましたが、なんとその半数以上が僕のみ投票した作品でした。ぼ、僕の評価眼ってそんなに偏ってるの? そのあとの討議の結果、最終的にそのなかから何編が最終候補に決まったか、それは秘密です。ただこれは、今回は大混戦だったことの証左でもありました。 

2011-06-23 23:06:43
K島氏 @blue_airship

まずは山下敬さんの「黒衣の聖母」。第1回創元SF短編賞、日下三蔵賞を「土の塵」で受賞した方ですね。安土桃山時代に舞台を設定した、黒衣の聖母をめぐる時代ミステリ。読みながら《宝石》とか《推理文学》という雑誌名が脳裏を過る、懐かしいトーンの作品でした。山田風太郎お好きですよね!

2011-06-23 23:13:24
K島氏 @blue_airship

荒野泰斗さんの「百合の墓」。明らかに連城三紀彦氏の作品に影響を受けた作品が、今年は三編一次予選を通過していましたが、これもそのひとつ。流麗な筆遣いが印象的で、狙いもミステリ的に楽しいものでしたが、動機に説得力が欠けていたことが惜しまれます。

2011-06-23 23:20:09
K島氏 @blue_airship

(続き)昨年の「牡丹の灰」も看過し難い難点が含まれていて、強く推すには至りませんでした。そのため昨年も今年も僕は荒野作品に票を入れてはいないのですが、しかしミステリ的な仕掛けや筆遣いには好感を持っております。もっとプロットを練り込んで! いまのままでは勿体ないです。

2011-06-23 23:25:08
K島氏 @blue_airship

中村憲一さんの「蝶の通る道」。三十年前に架空の国で起きたクーデターと現在を繋ぐ時系列パズル。わかりにくいという欠点はありますし、ラスト(語られた順においての)が綺麗に決まっていない点も気になります。しかし、潔く時系列パズルで勝負してきた応募者は、僕が知る限り貴殿が初めてです。

2011-06-23 23:31:03
K島氏 @blue_airship

(続き)そして時系列パズルを丹念に追ってゆくと、これは力作であると認めざるを得ませんでした。話の器も大きなものです。この作品だけでは、貴殿が今後どんなものを描いてゆくのかまったく想像できませんが、これからを楽しみにしています。

2011-06-23 23:34:32
K島氏 @blue_airship

水原有希恵さんの『メリット~感度~』。社の機密を盗んだ犯人は誰か。辻褄のおかしい応募作が多い中、綻びが目につかなかった本格ミステリで、僕はよくできていると思いましたが、惜しくも票が集まりませんでした。ひとつ弱点を挙げるなら、水原さんの個性があまり感じられなかったことでしょうか。

2011-06-23 23:39:00
K島氏 @blue_airship

(続き)たとえば、『NOVA4』(河出文庫)に収録された森深紅氏の「マッドサイエンティストへの手紙」を読んでみてください(設定が似ている)。謎解きの堅牢さは水原さんのほうが上だと思いますが、個性、という点では矢張り負けてしまいます。しかし、短い枚数で纏め上げた点はすばらしかった。

2011-06-23 23:43:58
K島氏 @blue_airship

倉科りとさんの「paper voice」。40枚の作品です。それで破綻がないのだからそれだけでもう好印象でした。折り紙で遣り取りするという発想がすばらしく、バッドエンドにもできるラストに敢えて救いの余地を差し込む手際もいいですね。鮎川賞応募作と比べ、文章も洗練されてきています。

2011-06-23 23:53:40
K島氏 @blue_airship

岡崎琢磨さんの「児童たち」。実は二次選考で物議を醸した作品です。事情によりその理由は最終選考後に述べますが、力はあると思います。がんばってください。あと、語彙を増やすのはたいへんけっこうなことですが、遣い慣れない言葉を遣う際にはきちんと辞書を引いて意味を確認するべきです。

2011-06-24 00:00:36
K島氏 @blue_airship

(続き)難しい単語に振り回されている印象を読者に与えるのは損です。貴殿はもっと滑らかな文章が書ける方ではないですか? と思いつつも、謎解きのみに拘泥せず、ドラマをも描こうとするところ、好感度が高いです。登場人物も描き分けられています。バッドエンドは、必要なかったと思いますけど。

2011-06-24 00:04:37
K島氏 @blue_airship

吉野泉さんの「スプリング・ロコモーティブ」。日常の謎を扱った作品です。ミステリとしては弱いとしか言いようがなく、外さざるを得ませんでしたが、物語を構成する要素の組み合わせが絶妙で、正直感心しました。うちの相談役を見習って「この続きは書き溜めていますか?」と訊きたくなります。

2011-06-24 00:12:18
K島氏 @blue_airship

沖田秀仁さんの「人待ち橋」。一堂「お見事です」と唸った、堂々たる時代小説です。問題は「これをミステリとして評価すべきか?」という点に集約され(捕物帖ではありました)、討議の結果、受賞可能性の点から最終候補には選出しませんでした。近いうちに一度御連絡差し上げたいと考えています。

2011-06-24 00:20:53
K島氏 @blue_airship

取り敢えずはここまで。僕が票を投じた作品は他にもあるのですが、片っ端から語ってゆくといろいろ明らかになってしまうので、この辺でやめておきます。……いちおう、このように毎回きちんと応募作は拝読しております。引き続き第9回ミステリーズ!新人賞への御応募、楽しみにしております。

2011-06-24 00:25:46