剣と魔法の世界で奇祭「風雲あざらし祭り」が行われる話7(#えるどれ)

簡単な解説がしづらい…
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21774 pv 167 2 users

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まとめ 剣と魔法の世界で奇祭「風雲あざらし祭り」が行われる話6(#えるどれ) ハッシュタグは「#えるどれ」 楽しくなってきた!(男の体の話ばっかしてたら) 4300 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語はこの海で一番いい男を選ぶ マッシブファンタジー #えるどれ 男と男の顔が近い過去のまとめはこちらから togetter.com/li/1479531

2020-06-04 20:40:34
帽子男 @alkali_acid

最高の筋肉と最高の雄臭。 そういうものを求めて集まった風雲あざらし祭り三日目、男性向けの祭典、白銀侍従選抜がいよいよ始まった。 互いのますらをぶりを競い、優勝者は白銀侍従として、古の歌姫、白銀后の威徳を筋肉で支える祭司の役割を担うのだ。 今回の参加者も世界中から集まり多士済々。

2020-06-04 20:44:13
帽子男 @alkali_acid

まず辺境の丘王国(どこ?)から来たという二人組。 ミオンとキシオの双子だ。 どちらも筋骨隆々には程遠い蒲柳の質に見えるが、白銀侍従候補の飛び入り枠を決める重量挙げで好成績を上げた。 兄弟だというが、互いに手加減せず戦うと誓っている。

2020-06-04 20:47:05
帽子男 @alkali_acid

続いてははるか東方から来たという七尺を裕に超える巨漢、牙の部族ガウドビギダブグ。 何やらひどく不機嫌だが、闘志は十分。やはり飛び入り枠で伝説の巨鬼の侍従長ゴジが運んだ蒸気鍵盤の金属模型を軽々と肩より上に掲げた怪力無双。

2020-06-04 20:48:42
帽子男 @alkali_acid

さらに西の果てから来たという流麗美貌の貴公子ダリュート。ミオンとキシオ以上に華奢そうだで、鍛えぬいた肉体を見せびらかす候補が多い中、体の線を出さない厚着をして登場。 またしても飛び入り枠で、何と片手で重量挙げをして見せたのだ。

2020-06-04 20:50:47
帽子男 @alkali_acid

祭りを主宰する邪教、白銀后親衛隊の一員で、過激な一派、燃波(モエルナミ)派に属する花火師ゲンゼド、通称ゲンさんもいる。こちらは予選を勝ち抜いての参加だ。

2020-06-04 20:53:56
帽子男 @alkali_acid

大兵肥満ながら本命候補とされるペドロフスコは白銀后親衛隊、幼姫派の新鋭だ。 幼姫派は白銀后が女童(めのわらわ)だったと信じており、「白銀后”たん"」と敬意をこめて呼ぶのが習慣となっている。女童として表現した白銀后の人形を数多く手がけ、そうした造形の技では他派の追随を許さない。

2020-06-04 20:57:03
帽子男 @alkali_acid

そのペドはぎょろぎょろした目を動かし、口を理由もなくもぐもぐと動かしながら、ぽっちゃりした指をうごめかして、会場の貴賓席に座る人物を凝視していた。 「はぁはぁ…信じられないんだな…今回の白銀侍女はむきむきの大女になるって聞いてたのに…ぶひ…まさか…ぶひひひ」

2020-06-04 20:58:52
帽子男 @alkali_acid

ペドの視線の先にいるのは、どこか虚ろな表情をした赤頭巾の少女だ。 首から上はほぼすっぽり隠しているが、下はほぼ剥き出し。夜を思わせる暗い膚は、ほとんど布面積のない花と蔦をかたどった水着で申し訳程度に飾ってあるだけで、ほっそりしてしかしほのかに丸みを帯びた未熟な体の線を強調する。

2020-06-04 21:02:03
帽子男 @alkali_acid

「ぶひいいい!!このペド様が…初めて生身の女の子を…人形の題材にしたくなったんだなあ!!ぜったいぜったい優勝して、今年の白銀侍女とお近づきになって、体の隅々まで調べさせてもらうんだなあ!」

2020-06-04 21:04:13
帽子男 @alkali_acid

そう。 貴賓席に座る娘こそ、風雲あざらし祭り第一日目で古の歌姫、白銀后に楽才と泳法、知識で仕えるべく選ばれた白銀侍女であった。 祭りにおいて白銀侍女と白銀侍従は対。 しばしば男女の祭司は、恋に落ち、結婚することでも知られる。

2020-06-04 21:06:17
帽子男 @alkali_acid

「このペド様もど、独身のまま三十を過ぎたし、そろそろ、け、けけけ結婚するんだなあ…結婚するならやっぱりああいう子がいいんだなあ。毎日型が採れるんだなあ」 興奮して甲高くまくしたてる肥満漢に二つの凝視が注ぐ。一つは灼けつくような敵意に満ち、一つは凍てつくような殺気を漲らせていた。

2020-06-04 21:08:34
帽子男 @alkali_acid

「今すぐ殺すか…」 牙の部族ガウドビギダブグは、そううそぶいて拳を握り固めた。歴戦の傭兵であるガウドは素手でも人の命を奪える。 もう一人、貴公子ダリュートは無言だったが、気配は完全に殺戮衝動に支配された爬虫類か何かに近かった。

2020-06-04 21:10:48
帽子男 @alkali_acid

一方、貴賓席で伴侶の選抜を待つ幼い白銀侍女はというと、もうすべてがどうでもよさそうな態度だった。 「ウィスト。何や調子悪そうやな」 「…別に…」 隣から黒い海豹が妖精の言葉で話しかけてくる、という奇怪な出来事が起きても塩対応である。

2020-06-04 21:13:05
帽子男 @alkali_acid

「せやけど…ええ男がぎっしり集まってきとんで?ほわー…客席にもどんどんええ匂いのええ男で埋まってきおった。んー…」 海豹は首を前後させながら席の周りを這い回り、あたりに満ちる匂いを嗅ぎ、さざめきに聞き入る。 「ええな!」

2020-06-04 21:15:17
帽子男 @alkali_acid

客席には女性の数は少なく、多くは妙齢の男性である。なぜかみんな上半身や下半身をおおう衣服をどんどん脱ぎ捨て、油を塗りこみ、力瘤を作ったり腰をひねって背中の筋肉を見せる決め仕草をし始めている。 単なる観衆で、別に白銀侍従の候補という訳でもないのだが。

2020-06-04 21:17:02
帽子男 @alkali_acid

「こないなええ匂いの祭り、ワテが生きとるうちにしてほしかったわー…いや…そもそも何で影の国におるときに思いつかんかったんやろ…」 黒海豹は残念そうに鰭で座席の側を叩く。 「せや。誰勝つと思う?」 「…さあ…」

2020-06-04 21:19:50
帽子男 @alkali_acid

相変わらずどこか虚無を宿した双眸でみるともなく舞台に並ぶ男達に視線をさまよわせるウィスト。 あられもない恰好の矮躯からただよう思いはただ一つ「はよ帰りたい」であった。

2020-06-04 21:23:58
帽子男 @alkali_acid

不意に石舞台に立つ白銀侍従候補の一人が一歩前へ踏み出し、慇懃な辞儀をしてから、人差し指の関節に唇を当て、そっと接吻を投げる。 「白銀侍女よ。白銀侍従たらんを欲する候補のひとり、ダリュートが挨拶を送る。今少しの辛抱ぞ。間もなくこの私が御身を解き放とう」

2020-06-04 21:27:08
帽子男 @alkali_acid

声を聴いたとたん、はっとウィストは表情をあらため、身を乗り出してダリュートなる人物を見つめた。 「あ…ダリューテさん…!」 「あの声、仙女はんか。過保護は治らんのやな」 隣で黒海豹がごろっと腹を見せながらのんびり告げる。

2020-06-04 21:29:20
帽子男 @alkali_acid

浅黒い少女は不思議そうに海獣を見やる。 「ミチビキボシって…」 「なんやろ?」 「カミツキ達と違うね」 「んー。せやろか」 「ダリューテさんのそばに飛んでくかと思った」 「ないわー」

2020-06-04 21:32:12
帽子男 @alkali_acid

黒海豹は見えぬ目を虚空に向け、どこか陰りのある笑みを浮かべる。正直あんまり似合わない。 「色々あったけど…もう終わったわ」 「…そっか」 ウィストは何となく微笑む。ミチビキボシはひげをひくつかせてまた太い首を傾げた。 「どないしたん」 「…ほかのみんな、すぐむきになるから…」

2020-06-04 21:36:21
帽子男 @alkali_acid

「んー…せやな」 「ミチビキボシは、ダリューテさんに会っても落ち着いてて偉いなって」 「女の人にいつまでもつきまととったらあかん」 「うん」

2020-06-04 21:38:43
帽子男 @alkali_acid

よく知る黒猫や黒犬や黒歌鳥や黒蝙蝠とは異なる、黒海豹のいかにも泰然とした大人の余裕すらあるふるまいに、少女の評価はぐんと上がったようだった。 「…指輪の仲間って…皆おかしい訳じゃないんだ」 「ワテ、昔船長やったし。そう浮ついとれん。乗組員が不始末したら、尻拭いせなあかんし」

2020-06-04 21:42:15
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