低線量放射線被曝を巡る混乱の背景にある医学と保健物理学のアプローチの違いについての分析ツィート

低線量放射線被曝を巡る混乱の背景にある「医学(放射線医学、画像診断額、がん治療等)」のアプローチと「保健物理学(放射線事業従事労働者、作業員の「被曝」予防)」のアプローチの違いを分析した医学編集者@tomojiroさんの、非常に興味深い連続ツイートです。 (私の理解と若干のコメント) 「医学」では、日常的に、相当量の放射線を実際に照射して医療行為を行っているため、放射線のリスクとベネフィットを勘案して許容放射線量続きを読む低線量放射線被曝を巡る混乱の背景にある「医学(放射線医学、画像診断額、がん治療等)」のアプローチと「保健物理学(放射線事業従事労働者、作業員の「被曝」予防)」のアプローチの違いを分析した医学編集者@tomojiroさんの、非常に興味深い連続ツイートです。 (私の理解と若干のコメント) 「医学」では、日常的に、相当量の放射線を実際に照射して医療行為を行っているため、放射線のリスクとベネフィットを勘案して許容放射線量を検討するアプローチに比較的拒絶感が小さい。そのため、放射線を浴びてしまったことを前提としてそのデメリットがどの程度か(医療行為の場合には反面として得られるベネフィットと比べて過大なリスクでは無いか)を具体的に検討するアプローチ自体に対する拒否反応が低い。そのため、医学のアプローチからは実際に放射線を浴びてしまった広島長崎の長期追跡データなどから100msv以下の被曝の発ガンリスクの可能性も、他の生活習慣に起因するガンのリスクと大差ないレベルという発想に比較的親和性がある。 他方、鉱山労働者の健康を守るために1930年代に「放射線防御学」としてスタートした「保健物理学」の目的は放射線事業(原発等の民間核施設、各軍事施設等)に従事する労働者、作業員の「被曝」の予防。そのため、保健物理の立場からは例え些少なリスクの可能性(低放射線)でも、それが科学的に否定されない限りそれを回避する対応を優先する傾向がある。 今回の福島の事故は、放射線を浴びること自体に何らメリットが無いことは事実だが、低線量の放射線を浴びないための回避行動に伴う住民の負担(慣れない環境での生活の長期化による精神的肉体的疲労、長年の生活基盤から隔離されることによる将来・生活への不安等)によるデメリットやコストと、低線量の放射線を浴びないことによる健康リスク逓減のメリットを比較する視点を最初から排除してしまうアプローチは、本当に、住民の生命健康幸福のためにも有益なのか非常に疑問。 したがって、いかなる低線量の放射線被曝でも住民や国民の負担デメリットを一切考慮しないで回避行動を最優先するのではなく、住民の生活・精神状態・健康・生活基盤にどのような負担がかかるか、地域社会・国民にどのような負担がかかるかといった点も勘案しつつ、妥当な線引きを行うべきだと思います。
低線量放射線 放射線 医学 保健物理学 原発
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  • tomojiro @tomojiro 2011-06-22 20:14:03
    @Shimazono @naoshiy 島薗先生が間違っているとまでは言いませんが、この混乱の背景には医学と放射線防御学の放射線に対するものの見方の違いがあり島薗先生が語っているような単純な問題ではない。しかも日本に限った話ではなく国際的な問題だと思っています。
  • 島薗進 @Shimazono 2011-06-22 20:16:31
    ご教示感謝。よい資料あったら教えて下さい。@tomojiro @naoshiy 島薗先生が間違っているとまでは言いませんが、この混乱の背景には医学と放射線防御学の放射線に対するものの見方の違いがあり…単純な問題ではない。しかも日本に限った話ではなく国際的な問題だと思っています。
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-22 20:35:59
    このトピックをどのようにつぶやいたらいいのかわからんが、取りあえずやってみよう。
  • 島薗進 @Shimazono 2011-06-22 21:05:02
    私も極端に走らない議論のつもり。いろいろとご教示ありがとうございます。@tomojiro @naoshy 日本の医療のもう一つの問題は臨床医と研究医の分業が制度化して確立されていないことだと思います。両方必要なのですが、資質がちがう。
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 21:57:55
    今回の低線量放射線被曝を巡る混乱は医療と保健物理という二つの専門分野の専門家の意見が極端に違うところからおきていると思う。問題はこの二つの分野の放射能のリスクに対する見方が全く別で、歴史的にも違う形成をされてきたことに問題がある。
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:02:46
    放射線を診断と治療に扱う医学(放射線医学、画像診断学、がん治療)にとって放射線とはリスクとベネフィット両方の意味がある。そもそも医療行為一般というのは常に患者・対象者にとってリスクとベネフィットと考慮して治療手段を選ぶ。その上で侵襲性の高い手技を選ぶのか他の手段をとるのか考慮する
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:12:13
    さらにここ10年、20年の医療の現場での「激変」と言うと(これは必ずしも徹底されておらず問題もある)医師のパターナリズムの排除(つまり医師が患者に一方的に治療方針を決定することを排除)、患者・当事者の生活の視点の重要視(QOL)、インフォームド・コンセントと患者の自己決定権の尊重
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:16:31
    以上のことはリスクコミュニケーションが適当であったかどうか、あまりに対応がナイーブ過ぎたのではないかといった疑問もあるが、長崎大学の山下俊一氏がなぜ今回のような対応を提案したのかを理解するのに重要。100mSv以下の放射線のリスクをどう見るかは技術的な問題だが。
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:23:23
    それでは20mSv問題で涙の退任をした小佐古敏荘氏が理事長を務める保健物理学の見解の基盤はどこにあるのか。自分は医学編集者なので保健物理に関しては今回の事故が起きて急遽勉強したのでそこは割り引いてほしい(この教科書わざわざ買ってしまった http://t.co/HL0Oyqt
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  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:28:05
    "Radiation Protection and Dosimetry"によれば保健物理とはそもそも鉱山で働く労働者の健康を守るため1930年代に「放射線防御学」の名ではじめられたがある時期からその否定的名称が嫌われ「保健物理(Health Physics)」と名前を変えたらしい
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:33:11
    保健物理の目的は放射線事業(原発等の民間核施設、核軍事施設等)に従事する労働者、作業員の「被爆」の予防。放射線が人体に与える影響を動物実験や試験管等の実験で研究。疫学的調査も行う。しかし、治療や診断は行わない(これは医療の仕事)
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 22:40:44
    保健物理学からみれば放射線というのは純粋なリスクであり何としても避けなければいけないものとして捉えられる。保健物理の専門家はこのリスクの予防と回避の専門家である。医療のあらゆる医療に関連した行為・現象はそのリスクとベネフィットを計算して当事者と合意の上で選択する姿勢とは大きく違う
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:26:30
    保健物理と医学の放射線に対する見方の違いは直接今回の福島原発事故の対応に影を落とす。医学の立場(疫学)からすれば原爆の被爆者等に関する膨大な疫学的追跡調査などから「経験的(事後的)」に100mSv以下の放射線被爆は統計上生活習慣に起因するガンのリスクと大差がないと判断する
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:30:38
    一方、日常的に放射線を被爆する現場(原発での作業、あるいは放射線を扱う医療機器等に関わる現場)での継続的被爆を考慮しなければいけない保健物理の立場からすれば「予防的」に、「保守的」に放射線被爆の影響を想定しなければならないため、あらゆる仮説や可能性を取り入れて保守的に対応する
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:34:00
    たとえば医療の立場からすれば先ほどtweetしたが最近(2000年以降)広島・長崎の原爆被爆者の長期追跡データから100mSv以下の被爆で(具体的には60mSv)の発ガンリスクの可能性が提唱されている。疫学の立場からするのならたとえこれが事実だとしても他の生活リスクによる(続く)
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:36:26
    (承前)発ガンリスクと大差ない誤差ないの可能性としてある意味では「のんびり」と対応しかねない。しかし、保健物理の立場からすればたとえ些少な可能性としてもそれをリスクに入れて対応するインセンティヴが働く。これがまさに低量放射線被爆に対する対応の違い
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:39:22
    @naoshiy @kaikaji いや、これはネットでとかそれ以外と言う以前に恐らく世界的に対応できない問題。そもそもICRP自体が二つの基準での混乱した対応を推奨している。医学の基準を基にした「のんびり」とした緊急時での20mSvから100mSvの間に基準を設ける対応
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-24 23:43:19
    @naoshiy @kaikaji 一方では『回復時」には過敏とも言える保健物理の基準に基づいた1mSvを目標とした対応の要請。日本の首相がオバマ、JFKであろうとこれでは混乱します。一方では「放射能被爆は怖くない」といいながら次には「放射能に気をつけろ」と叫ぶようなもんです
  • tomojiro @tomojiro 2011-06-25 00:12:44
    小佐古氏が例の20mSv問題で涙の辞任をした背景には恐らくあの次期管政権が放射能被爆に関するアドバイスを保健物理の専門家から山下氏を中心とする医療の専門家のアドバイスに切り替えたことが背景にあると思う。どちらも自分のフィールドに忠実に従事した結果だと思うとやりきれない

コメント

  • sakanoue @sakanoue_kiku 2011-06-25 09:00:31
    「再臨界の可能性はゼロではない」発言を思い出しますね。低線量の影響を「ゼロではない(存在する)」と見なすのが保健物理学で「ゼロではない(ほぼゼロと言えるほど極めて微小)」と見なすのが医学
  • t_o_s_h_i_3_5 @XC60Rd 2011-06-25 11:44:33
    全くです。可能性のみに言及しその現実的数値をを無視する。学術的にはそれで良いかもしれませんが、現実生活は出来ません。犠牲になるのは一般人。
  • 偽教授 @Fake_professor 2011-06-25 11:44:54
    なんだこりゃ。くだらねえ
  • 木村義志 @Kimupon_Cicadan 2011-06-25 11:56:28
    専門家は詳しい情報とそれに応じた複数の選択肢を示すだけでよく、最終的な判断は当事者の市民に委ねるべき。行政や専門家と呼ばれる者が民を操作しようとするから混乱が生じる。
  • またはち @matahatikumicho 2011-06-25 12:14:51
    ふむ、そういう二つの流れがあるのか。勉強になりました。
  • ると。 @nec0lt 2011-06-25 12:49:18
    なるほど。参考になりました。と云うか、酷い平行線だなコレ。
  • PKA @PKAnzug 2011-06-25 12:49:21
    私は2つの流れの片方にドップリな立場なので、ここでの発言は控えめにしておきますが、少なくとも医療側の考え方についてこのまとめは正しいです(まとめ主さんコメントにも完全に同意です)。正直私も「どうして放射線のリスクだけ見るんだろう」と思い続けてきたので、保険物理学的立場については非常に勉強になりました。
  • w_trlvr @w_trvlr 2011-06-25 12:55:09
    これはいいまとめだな。
  • sivad @sivad 2011-06-25 13:31:45
    そもそも日本の医療被曝っていろいろ問題視されていませんでしたっけ。 http://www.jcr.or.jp/news140/140_3.html http://www.freeml.com/bl/7723080/243946/
  • 水面計@いつのまにかオッサン @W_L_G 2011-06-25 13:44:14
    こういった分野間の見解の相違って、原発事故に限らず色々なところで問題となってそうだな~ 最近の電気屋は売り場によって言語が違うとか言われるけど、同じ事が人命に関わるような身近な諸問題で起こって専門外の人々を混乱させている…  う~ん科学リテラシーとここら辺を簡便に評価、説明してくれる人間が重要だな
  • かーる٩( ˘ω˘ )و @ka_ru0603 2011-06-25 14:44:17
    非常に面白い見解。個人的にはストンと来るような納得感がありますね。あと専門家の問題点はコミュニケーション(相手に理解してもらう為の説明能力)不足もあると思います。
  • PKA @PKAnzug 2011-06-25 15:31:41
    >sivad氏  日本の医療被曝の多さが問題視されてるのは事実。ちょっとCTとかホイホイ撮り過ぎだろうって話ですね。ただ、海外諸国では、医学的に必要だと思われても保険がおりないから撮れないとか、少ない装置に患者が集中して撮りたくても撮れないとか、医学的判断と無関係の理由で少ないという側面もあります。それを差し引いてもちょっとCT多くね?って思うことは時々ありますけど、大抵は必要に応じて撮ってると思いますよ。あと、それとこのまとめに何の関係があるんでしょう?
  • Totemo512 @Totemo512 2011-06-25 19:54:47
    「リスクとベネフィット」を医療は考慮しているが、(治療を行わないから)保健物理は考慮していないかのようなまとめは偏りがあるように思えました。(今回のリスクは、今までの日常の他のリスクにプラスアルファされるのでは?)
  • Totemo512 @Totemo512 2011-06-25 19:56:41
    (当然別の意味での「リスクとベネフィット」を考慮しているとは思いますが)保健物理の専門の方の意見も聞きたいですね‥
  • すもつく れん @WrenSumotsuku 2011-06-25 21:18:05
    放射線防護に責任を持つと言う立場の場合、責任を持つべきは「被爆軽減」となるので、その立場上「コスト」だの「ストレス」はやはり「理解はしていても・・・」となります。それをやると、業務効率が良いという理由で、少々の被爆は目をつぶれ的な事になるので。医療被爆はリスクとベネフィットと言われていますが、その中でもやはり無駄な被爆は極力抑える傾向はありますよね。仮説でのみ語られるリスクで、誰が責任を持って被爆を容認できるのだろう?これは個人個人の判断に委ねるしかない。事故のリスク容認しつつも、自動車を運転するように。
  • 砂肝貴族 @wansyuwa 2011-06-25 21:23:46
    なるほど。これはすごく合点がいきました。 
  • 憑かれた大学隠棲:再稼働リプレイスに一俵 @lm700j 2011-06-25 22:56:48
    逃げろ逃げろっていう側が逃げる場合のリスクや不利益に関心を払ってないのと相まって亀裂が悪化してるな
  • 憑かれた大学隠棲:再稼働リプレイスに一俵 @lm700j 2011-06-25 22:57:44
    逃げろ逃げろっていう側が逃げる場合のリスクや不利益に関心を払ってないのと相まって亀裂が悪化してるな
  • sivad @sivad 2011-06-26 00:48:04
    PKAnzugさん。国内でも世界でも問題視されている日本の医療被曝管理状況で「医療側」を代表させるのはちょっとどうなんだろうと思い、紹介しました。またそもそも保健物理がリスクとベネフィットを考えず被曝を避けるなら、原発で働くことすら禁止するでしょう。労働のベネフィットと、被曝のリスクを勘案してるわけで。別に医療側だけがリスクとベネフィットを考えているのではないし、そのバランスが適切かどうかもわからない、ということですね。
  • めだかのぶぅ @MedakaNoBoo 2011-06-26 01:02:48
    放射能汚染の専門家がどこにもいなくて、放射線の専門家が自らの知見を拡大理解していることが、そもそもの混乱の原因だと思う。だから、いつまでたっても原発事故がタブーになっていて、危険か安全かだけを論点にするから馬鹿げている印象を受ける。環境汚染とは学際領域なのだから、医学や保健衛生だけでなく、工学や地学やら心理学やら農学から人材をあつめて、ちょっと不謹慎かもしれないが、新たな知見を高めるチャンスにして欲しいなあ。
  • 御堂岡啓昭 @Ani2525 2011-06-27 18:52:28
    そもそもICRPが初期の被曝群を考慮していないトンデモな疑似科学。被爆隠しをGHQに命じられ公職追放された都築正男さんを知っておきたい。

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