『スペース太平記』 ぷりめ文書

月の裏側に逃れていたスペース後南朝との宇宙南北朝戦争の話です。
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@ぷりめ @prime46502218

子供の頃からSFを読んでいますけど、「人種の線引きとは」「貴人の血統は何故神聖視されるのか」とかに拘泥しだして、 「火星独立戦争で日系コロニーをまとめる為、植民者たちが保存されていた皇室の遺伝子組成をつかって火星天皇を作成し即位」とか考える人になりました。

2020-05-26 00:00:57
@ぷりめ @prime46502218

美少女火星天皇が「朕が崩御しても代わりはいるであろう」と言い、一生懸命お諫めする火星首相たち。 火星から地球へ質量兵器を投射するマスドライバーに翻る錦の御旗。 火星地上軍抜刀隊がスイカ売りに化けて地球艦隊に斬り込み。 みんな読もう、SF。いいぞ。深いぞ。 俺と同じ沼に落ちろ!

2020-05-26 00:11:59
@ぷりめ @prime46502218

月の裏側に逃れていたスペース後南朝が日本侵攻開始……!?

2020-05-26 13:12:12
@ぷりめ @prime46502218

吉田キャンパスに自衛隊のヘリが着陸し、授業中の教授に御動向を願う。何事かと驚く教授が連れていかれた先は、首相官邸地下の内閣危機管理センター。 「教授、失礼しました。国家の一大事です。あなたの知識をぜひお借りしたい」 「しかし、私は歴史学部ですよ」 「だからお呼びしたのです」

2020-05-26 13:23:48
@ぷりめ @prime46502218

担当官がうなずくと、センターの画面いっぱいに写る宇宙艦隊。 「これは……SF映画ですか」 「いえ見てください、ほら!右上の、この船体のとこ!」 「ん?んん~?、ん!? これは! まさか錦の御旗? こっちは北畠の家紋!?」 「教授がおっしゃるなら間違いないでしょう。これを」

2020-05-26 13:30:35
@ぷりめ @prime46502218

「続神皇正統記……!?」 「宮内庁が代々保管してきた文書です。護良親王は死んでいない、なぞの光る舟に乗って月に行ったのだと書いてある」 「まさかそんな……では、この艦隊は南朝の末裔だというのですか!」 「すでに全自衛隊は臨戦態勢に入っています。神器も地下ブンカーにお移りいただき」

2020-05-26 13:35:36
@ぷりめ @prime46502218

そのとき響き渡る警報。 「何事だ!」 「帰属不明物体より通信です! スピーカーにつなぎます!」 「○○○○」 「何といっているのだ?古い日本語か?」 「何ということだ……」 「教授?」 「彼らは全地球上で新建武の新政をしくことを要求しています。事実上の宣戦布告だ」

2020-05-26 13:40:37
@ぷりめ @prime46502218

こうして地球南北朝戦が始まったのである。

2020-05-26 13:41:41
@ぷりめ @prime46502218

後南朝軍は悠々と地球に近づいた。地球側で宇宙軍艦を保有している国家は存在せず、したがってこれを迎撃する兵器も開発されていないので当然だった。 母船から、揚陸艇らしき小さな物体が切り離され、ばらばらと散らばって世界各国の都市めがけて大気圏に突入した。各国空軍は決死の思いで迎撃した。

2020-05-26 15:00:27
@ぷりめ @prime46502218

迎撃が効果的すぎて、地球側がむしろ驚いた。南朝側の降下艇は、イーグルに、ホーネットに、ラプターに、ラファールに、タイフーンに、フランカーに、ミグに、グリペンに撃墜された。練習機にすら撃墜された。防空ミサイルに落とされ、機関砲に落とされ、地上に降り立ったのは当初の3割だった。

2020-05-26 15:09:01
@ぷりめ @prime46502218

地球の軍幹部たちは、一切の電子妨害がないことに怪訝な顔だった。生き残った降下艇から赤糸威鎧に金覆輪太刀を佩き、錦旗を掲げた騎馬武者が現れ、徒歩武者と共に突撃を開始すると、もっと怪訝な顔になった。 武者たちは降下地点に待機していた各国陸軍の機関銃であっさりハチの巣にされた。

2020-05-26 15:15:19
@ぷりめ @prime46502218

生き残った武者たちを、唯一言葉が通じる教授が尋問した所、その理由が明らかになった。 どうやら、彼ら南朝方は、宇宙とはなにか、どころか電気とは何かもよく理解しないまま、宇宙船をあやつっていたのである。 はるか昔、彼らの祖先、護良親王が「虎人(とらひと)」とだけ伝わる宇宙人を見つけた。

2020-05-26 15:18:42
@ぷりめ @prime46502218

虎人は、そう呼ばれている所からすると肉食獣から進化した知的生命体だったらしいが、にもかかわらず、あるいはそれゆえ、非常に温厚で、戦争という概念もほとんどない種族だったらしい。そのため、恒星間宇宙船をつくる技術を持ちながら、弓になぎなたの鎌倉武者にあっさりやられてしまったのである。

2020-05-26 15:22:35
@ぷりめ @prime46502218

護良親王が報告を受けたときは、彼の郎党が虎人をもう殺してしまった後だった。そのあと舟が見つかった。妙な鏡に表示されている言葉や数値や図表の意味は一切分からなかったが、動かし方は直感的にわかった。どうやら虎人はインターフェースのデザインも非常にすぐれていたらしい。

2020-05-26 15:27:26
@ぷりめ @prime46502218

剛の者が名乗り出、舟に乗り込んで行く先を確かめた。どうやら月の裏に基地があるらしい。護良親王は、足利尊氏に対抗できる何かがあるのではと考え、自らか、息子の一人かは昔のことで諸説あるのだが、しかるべき者を乗り込ませて月に人をやった。その子孫は今日まで北朝を憎んで生きてきたのである。

2020-05-26 15:32:28
@ぷりめ @prime46502218

これらのことを、教授は担当者に伝え、担当者は首相に伝え、首相は各国外交筋に伝えた。政府が発表し、教授が国会に証人喚問され、一般人も知るところとなった。 各国の軍関係者は困った。防御はたやすい。だがこちらから攻める手立てはない。 こうして今回の南北朝戦争も千日手となったのである。

2020-05-26 15:38:42
@ぷりめ @prime46502218

第二次世界大戦のまやかし戦争にも喩えられる、この奇妙な宇宙戦争は次第に日常の一部となった。人々は宇宙艦隊を望遠鏡で眺め、便乗グッズを買った。 皇族の減少や憲法改正運動と相まって皇室典範が改正され、両統迭立となすことで決着がついたのは、最初の降着から実に60年後のことである。(了

2020-05-26 15:44:44
@ぷりめ @prime46502218

わりといい話じゃん(感覚が麻痺

2020-05-26 15:45:07
@ぷりめ @prime46502218

@hiromotoyuuou ありがとうございます。なんで今になって攻めてきたんでしょうね。意外と向こう側にも事情があるのかもしれません。南朝ナショナリズムに凝り固まった人物が朝廷の偉い人になったとか。

2020-05-26 18:10:55
@ぷりめ @prime46502218

@ZTbWr2Eg9PF5fSh 仰る通りかもしれません。「一当てしてにらみ合ってたら、相手が先に折れた」わけですから、結果的には勝利ですよね。にらみ合いが60年続いただけで。米ソ冷戦かな?

2020-05-26 20:41:40