セイバーとして召喚されたいぞさんの話(思いついたので) その前にだいぶ前の館のいぞさんの感想(勝手な解釈です) 別に見たいなど思わなかった。 少しだけ自分達のでた劇でも見てみないかと誘われたが、最初こそどうでもいいと断りをいれ立ち去ろうとした足を止められ仕方なく映像を二人で見
2020-04-09 20:56:25ていた。 どうせ、自分などと思いながら、それを見ていた。 テーブルに肩肘をつき終わるまで黙って静かに見ていた。 最後のそれぞれの結末を見て、 「幼馴染というものはいいものだな」 そう一言感想を述べられる。 「お前を大事に想ってくれているではないか」
2020-04-09 20:56:26茶を一口啜りそう言われるが、 「人から見りゃあそう見えるがか」 その声は心底くだらなく。 「は、人様から見りゃあ、えいもんじゃと思われるんはえいことじゃの」 くっと喉の奥で一つ嘲るように、いや心底嘲け嗤う。 「あいたあの中のわしはおぼこい娘のようじゃ」 「?」
2020-04-09 20:56:26自分を誘って上映を見ていた柳生に呆れた声で笑いを含んだ声で言う。 「武士っちゅうは、刀は命じゃろ」 いきなり刀の話になり以蔵に視線を向ける。 「わしはな、刀なんぞ銘も柄もいらん、斬れればなんでもええ思うちょる、実際、わしが握って使うた刀はそこらへんにある二束三文の刀じゃ、折
2020-04-09 20:56:26れりゃあ捨て、次を買う、そいでもわしは斬ってきた人を、誰もが使えんようなどうでもえい刀でもじゃ、そいで腕さえありゃあ人なぞ斬れる、唯一の価値のある刀はあいたあからもろうた刀、肥前忠弘じゃ、それをどうした思う」 以蔵の過去はいくらでも調べる事はできる。
2020-04-09 20:56:26聖杯からの知識を読めばいくらでもわかる。 テーブルから肘を離し立ち上がり。 「わしは、金がのうなって、その刀ば売り払った男じゃ」 鼻で笑い。 「おまん、剣士が本物の武士が刀を売るか?」 以蔵は呆れるもなく、ただ淡々とした顔で声で、
2020-04-09 20:56:27「売らんじゃろ、武士なら、何が記憶を失うても剣を振るじゃ、まっことあいたあはわしん事なぞどうでもえいじゃな、一つとしてわしん事わかっとらんぜよ」 革靴の底を鳴らしながら歩き出す。 「ほんに、あいつはわしことを一つとしてわかろうとせん男じゃ、見るだけ
2020-04-09 20:56:27聞くだけ無駄じゃったわ、くだらんわ」 柳生一人を置いて以蔵は立ち去ってしまった。 数日後、新たなるサーヴァントが召喚された。 マスターがいつどのクラスのサーヴァントを召喚するのはわからない。 別に気にもしない、だが、その日だけは何かを察したのは前触
2020-04-09 20:56:28れがあったのか、扉が開いた瞬間、マスターとそしてそのサーヴァントが目に入った。 自分ともう一人を見て懐かしそうに笑ってくれた。 「龍馬、おまん、来とったがか」 遠い昔に見た、あの懐かしい顔で自分にむかって笑ってくれる。 「以蔵、さん?」
2020-04-09 20:56:28「はい!紹介します!クラスはセイバー、岡田以蔵さんです!」 『以蔵』がその手を伸ばし龍馬に抱き着く。 「久しいのう、ようやっとおまんに会えた!!」 『以蔵』が龍馬に抱き着く。それをもう一人のアサシンとして召喚されている以蔵の目に入った。
2020-04-09 20:56:28無邪気な顔で懐かしむ顔で、そして、再び会えた喜びで。 「おまんの言う事は正しかった、わしの最後はおまんの言う通りにしとったらきっと違とった、今度こそ、おまんの言う通りに動くきに、にゃあ、昔のようにわしん事側に置いてくれ、わしを今度こそ見捨てんで、おまんの為
2020-04-09 20:56:28になんでもするきに、大好きな龍馬」 マスターが真っ赤になって顔を手で覆ってしまうほどに『以蔵』は龍馬に抱き着き熱烈な告白をする。 それを以蔵が後ろから静かに見ている。 何も言わず静かに。 「あ…」 以蔵と目が合う。 吠えるかと思った泣くかと思った、だが、その琥珀の瞳は揺らがず
2020-04-09 20:56:28、ただ静かに見るだけ。 「い、ぞう、さ…」 一つ息を吐き出された。 「待って!!」 自分に抱き着いている『以蔵』を離す事もできないまま手を伸ばすが、 「行かないで!!」 先に召喚されているアサシンの以蔵がもう一人の自分を見て心底
2020-04-09 20:56:29くだらなような顔でゆっくりと体を後ろに向け行ってしまう。 「龍馬!!」 強く龍馬に抱き着いて離れない。 それを振りほどく事もできないまま、以蔵が龍馬から背を向けて行ってしまった。
2020-04-09 20:56:29「わし、龍馬とお竜と一緒におりたい」 岡田以蔵とはとても思えぬ言葉にマスターは驚く。 基本的に召喚されたサーヴァントはそのクラス別に居住区を決めている。 この『以蔵』はセイバーであるので、セイバークラスのところへ用意はしてあるのだが、
2020-04-10 21:37:36「わし、頭足らんから、やから龍馬の側から離れたらいかんのじゃ、わしは龍馬がおらんとまた間違うてしまう、ますたあの役に立てんかもしれん、頼む、龍馬やお竜の邪魔になるように事はせんから!!」 この『以蔵』は龍馬に依存しきっている。
2020-04-10 21:37:37龍馬がいないと上手くできないと一人では何もできないと言うのだ。 こんな『以蔵』を見たことがない。 「駄目です、以蔵さんはセイバーなので、セイバーの方へ行ってもらいます」 マスターはあえて心を鬼にしてそういう事にして言えば『以蔵』は泣きそうな顔になり龍馬の袖を強く掴む。
2020-04-10 21:37:37「どういても?」 その声はマスターにと言うよりも龍馬からマスターに頼んでくれと言っていた。 龍馬はどうするべきか悩む。 この『以蔵』はとても精神が幼く心が弱い。 龍馬が全てなのだ、龍馬が自分の世界なのだ。 「クソ雑魚ナメクジ、お前はセイバーなんだから、セイバーの方へ行け、お
2020-04-10 21:37:37竜さんとリョーマの邪魔をするな」 今まで静かに龍馬の中で見ていたお竜が姿を現し『以蔵』をきりすてる。 「あの以蔵が、リョーマの側にいないのにお前だけがリョーマとお竜さんの側にいられるはずがないだろう、お前はあっちへ行ってしまえ」
2020-04-10 21:37:38お竜の淡々とした、そして冷たい言葉に『以蔵』の琥珀の瞳からぽろりと涙だ零れる。 「お竜、わし、邪魔か」 ぼろぼろと涙を流し浮かんでいるお竜を見上げる。 「お竜、まだ怒っちゅうがか?ならあやまるきに、もう龍馬から離
2020-04-10 21:37:38れんから、龍馬のいう事ならなんでもきくきに、おまんと龍馬の側におらして」 泣く『以蔵』をなんとか説得し、いや泣かせたまま龍馬とお竜はいったん『以蔵』から離れた。 「お竜さんは悪いことなんて一つもしてないからな」 お竜はふよりと龍馬の頭上に浮き上がりながら言う。
2020-04-10 21:37:38龍馬はなんと言えばいいのかわからない。 カルデアで共にいる以蔵とはかけ離れた『以蔵』は、自分だけを頼りにしている。 自分の為ならなんでもすると言いながら自分達よりも年若いマスターの前で泣いた。 それをそのままにして結局その手を掴めず悩
2020-04-10 21:37:38んだままどうしたらいいのかわからぬままに離れた。 目深に帽子を被り歩く速さを上げる。 どうしたらいい?どうしたら…。 がつん!! 固い革靴が自分達の前で強く鳴った。 「維新の英雄様の欲しがる『岡田以蔵』やないですかあ」
2020-04-10 21:37:39くだらなそうな声で呆れた声でアサシンクラスにある以蔵の部屋の前で以蔵が自室の扉を開けたまま背中を寄り縋らせ腕を組み部屋に入る事を拒絶する。 「あ…」 以蔵の声に顔をあげる。 「誰が甘えにくること許した」 「あ、ち、…」
2020-04-10 21:37:39「違うとは言わさんぞ、おまんは何かにつけわしに甘えにくる、わしに吐き出しにくる、わしに何かを求めにくる」 「いや、そうじゃない、聞いてく…」 龍馬は首を横に振りアサシンである以蔵に言葉を返そうとする。 「ぞうくそ悪い」 その琥珀の瞳を見た瞬間、息ができなくなるかと思った。
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