3割死傷で全滅が軍事の常識って本当なのか?

軍隊は、損害にどこまで耐えて戦闘を続けられるのでしょうか。部隊の3割(2割)の損害で全滅判定が常識だとも聞くのですけれど、これ、実はそんなに単純に使える基準でもないかもしれませんとな。一連の議論ではないのですが、関連するツイートをまとめてみました。
軍事
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なつき @Hikasuke333
「第一線大隊中には約80%の損害にたえて攻撃を遂行した例もあったが、一般的には10~30%の損害で攻撃は頓挫しており、中には敵火猛烈でないのにもかかわらず、又は10%以下の損害でも頓挫した例さえ認められた」 小沼治夫「戦闘の実相」(日露戦争での話です)
なつき @Hikasuke333
「損害と退却との関係については、退却した部隊(歩兵連隊)のその日の死傷率は平均約50%弱のようである。ただし、得利寺戦闘における第3師団(一部)のように突発的事象に遭遇した場合は1%程度の損傷でも退却していることを知らねばならない」
kk @kkosl
『第二次大戦の米軍資料では人員損耗率が攻撃において、師団20%、歩兵連隊30%、歩兵中隊40%に達したときが戦闘力の限界であったといわれる。 同じく防御では師団30%、歩兵連隊40%、歩兵中隊50%が限界であったといわれる。
kk @kkosl
(中略) 米軍資料の数字は、第二次大戦間の数多くの戦闘の調査結果から導き出されたもので、戦闘力の限界を見積もる目安としては貴重なものである。
kk @kkosl
しかしこの数字を戦術研究に利用するにあたっては、第一線部隊の戦闘力の限界が単に人員損耗率だけで決定できるものではなく、特に小部隊においては、指揮官の損耗がその戦闘力の限界に大きな影響を及ぼすものであることを理解した上で使用することが望ましい』武岡淳彦「湖桂作戦体験記」
名無し整備兵 @seibihei
日露戦争のちょっとした話。大正初めに、陣中日誌等を資料とした「日露戦争の戦役統計」というデータ集がまとめられている。
名無し整備兵 @seibihei
これによると、突撃時に正面戦力の8%が損耗すると攻撃衝力が減衰し、12%が損耗すると突撃は頓挫している。
山猫男爵 @baron_yamaneko
@seibihei おお、こういう統計があったのですね! 「3割消耗で全滅」説の出所が気になってて、日露戦争についての研究にそれらしいものがあるとは聞いてたんですが。
山瀬広 @taisennshatiku
軍事で言う『2割で全滅』というのはデタラメかもしれません。
山瀬広 @taisennshatiku
2割、3割という数字は、恐らく図戦の際の勝敗判定に用いられる限界損耗率の数値がその数字だけ一人歩きした結果ではないかと考えられます。
山瀬広 @taisennshatiku
限界損耗率とは『それ以上の損耗が発生すると、じ後組織的な戦闘が困難になる損耗』<※参考文献1>のことです。なお、この損耗は人員の損耗であり、戦車などの装備品の損耗ではありません。
山瀬広 @taisennshatiku
その値は攻撃側か防御側か、また部隊規模によって異なります。例えば「師団:攻撃20%、防御30% 連隊:攻撃30%、防御40% 中隊:攻撃40%、防御50%」<米軍審判基準、陸自援用>だったり、「連隊:攻撃15%、防御30%」<※参考文献2>だったり、 (続く)
山瀬広 @taisennshatiku
「師団:攻撃10~20%、防御30~40% 大隊級以下:攻撃50~60%、防御70%」<※参考文献3>だったりします。
山瀬広 @taisennshatiku
これらの損耗率は戦史より導き出されているとのことですが、それらはどうもWW2までのデータで計算されたものらしく、新たに第4次中東戦争までの戦例を加えて計算したデータ(※参考文献2)を示しますと、
山瀬広 @taisennshatiku
「師団は攻撃時4.5%、防御時8%」という限界損耗率が算出され、これから陸自連隊級に概算すると「攻撃時約10%、防御時約20%の損耗で限界を迎える」となりました。
山瀬広 @taisennshatiku
ちなみに陸戦研究内では、以上の限界損耗率以外に「防御側の限界損耗は30%」としているのを良く見かけますが、規模についてまでは明記されていない物が多いです。
山瀬広 @taisennshatiku
それでこの限界損耗率が何のためにあるのかというと、演習の際の勝敗判定に用います
山瀬広 @taisennshatiku
『(節題 13.限界損耗率)A「大分長く話し込んでしまいましたが、終わりにもう一つ教えてください。MMなどの審判などでは、損耗率で勝敗を決定することがありますね。あれはどういう根拠にもとづいているのですか。」』<※参考文献4>
山瀬広 @taisennshatiku
『一般に、人員損耗見積等において一つの基準としてCPX、MM等で使用されている、iRの攻撃時85%勢力値、防御時70%勢力値と比較すれば、やや厳しい値となっている。』<※参考文献2>
山瀬広 @taisennshatiku
ですが、あくまで図演などの想定で便宜的に用いるものなので、実戦には適用できないようです。以下、該当部分。
山瀬広 @taisennshatiku
『残念ながらブレーク・ポイントは戦闘終了を決めるものではないことが分かっている。すなわち実戦ではどちらが勝つかを決めない。』<※参考文献5> (ブレーク・ポイント=限界損耗)
山瀬広 @taisennshatiku
で、本題ですが、それでよく『軍事的には2割で全滅判定』というのがありますが、もしかするとこの言葉は限界損耗率の数値だけが独り歩きした結果ではないかと思うのです。
山瀬広 @taisennshatiku
実際、2~3割という数字が良く用いられ、「演習で便宜的に用いる」事や「部隊規模」が併記されず、損耗率だけ記載されているものが陸戦研究内にも見受けられましたし。
山瀬広 @taisennshatiku
参考文献1 <寺村昌忠 「戦況推移の見積(予測)の審判基準への活用(2・完)」陸戦研究 昭和58年7月号 p63~p81>
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コメント

涼風紫音/圧縮 @sionsuzukaze 2011年6月26日
文字通り最後の一兵まで、というのもあったりするからなぁ、戦史上。組織的行動力という点ではやはり指揮権に近いところの損耗にもよるような。まぁ図演は図演だし、ということか。
hamp@横浜山中 @32hamp 2011年6月26日
こりゃ、「全滅」という言葉の定義から始めないと。 
Rick=TKN @RickTKN 2011年6月26日
3分の1が減ったら(3分の2になったら)撤退。と言うのは聞いたことある。ランチェスターの法則だと兵が3割減ると戦闘力は半減するんですね。なるほど。
猫鹿 @nekaneka7 2011年6月26日
攻撃側にしても防御側にしても、相手の損耗率によるんじゃないだろうか こっちが3割以上損耗、相手が1割未満損耗だったら作戦遂行不可能→戦い続けたら全滅→「全滅判定」を出す、みたいな でも相手の損耗率ってすぐに分かるのか?
須田正晴(埼玉・鳩ヶ谷) @sudahato 2011年6月26日
攻撃と防御で違うことからも判るように、指揮系統が繋がることをどう戦力評価するかですね。国民国家以前の軍隊は指揮官が倒れたら一気に雲散霧消ですが、八路や孤島の日本兵やベトコンは戦闘継続します。ただ、攻勢は組織的計画から外れたら意味あるものにはなりにくい。
nekosencho @Neko_Sencho 2011年8月21日
もともと「目安」なんだろうから大雑把でいいと思うんだけど、どの程度妥当な目安かがよくわからなかった
だよもん(狐耳 @V2ypPq9SqY 2012年3月25日
編成と編制のどちらに対しての3割なのか。まあ常識的には編成の3割か あと時代による差もかなり大きいでしょうな。
有村悠%1/22砲雷撃戦・に-10 @y_arim 2013年10月27日
ソビエトロシアでは、3割減損すると3割追加される!
蘭戸せる🎒 @Landsale_TL 2015年2月8日
攻撃側防御側という状況はもちろんのこと 組織の健全度によって全滅の定義も変わるんじゃないか 健全な組織ほど冗長性がなくなる1割~3割辺りで全滅と定義するだろうけど 某黄島とか不健全化すればするほどその定義が当てはまらなくなるのでほぼ信用に値しない値だと思う
鐘の音@C98落選 @kanenooto7248 2015年5月7日
前線で戦うのが3割で、他の仕事をする人たちが7割の部隊だと3割が全滅認定の数字になるけれど、時代差のあるところでは9割損耗しても戦い続けたというケースも有るみたいですね。ファンタジー系だと、最後の一人になるまで戦える(マテ
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