虚淵さんのラストオリジン二次創作がいつの間にかTwitterで始まってた。【第一話】

これだからTwitterはやめられねぇぜ… 第二話→:https://togetter.com/li/1542180
12
虚淵玄 @Butch_Gen

もう駄目だ。 しばらく仕事に専念するためツイッター封印しようと思ってたけれど、これ以上「ラストオリジン」を座視できぬ。

2020-06-13 04:59:24
虚淵玄 @Butch_Gen

レプリカント題材のSFに目がない虚淵がずっと邦訳を楽しみにしてたコンテンツなのです。なのに公式アカウントのフォロー数が伸び悩んでいるのです。このままじゃいつになったらペロちゃん配られるか知れたものではない。

2020-06-13 05:00:43
虚淵玄 @Butch_Gen

iOS版はどうなってるのか。DMM版はいつになるのか。もうじっとしていられない! かくなる上は土曜早朝のテンションで二次創作だ! というわけで暫しのお目汚し、ご容赦を。

2020-06-13 05:02:38
虚淵玄 @Butch_Gen

旋風に靡く菫色の髪。憂いを秘めた翡翠の瞳。凄惨なる死闘の果て、疲弊の極みにあるはずなのに、彼女は毅然と胸を張り、万雷の喝采を受け止める。その美しさ、神々しさに、私はただ見惚れるしかなかった。その瞬間――間違いなく彼女は神話そのものだった。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:04:25
虚淵玄 @Butch_Gen

「この勝利は女神アルテミスに捧ぐもの。卑劣なる林檎の計略のない限り、我が俊足を凌ぐものなし!」高らかなる鬨に、客席の声援がより一層のボルテージを増す。不敗と唄われたコロシアムクイーンを打ち破り、この日、DENSETSUトーナメントに新たな覇者が現れた。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:06:03
虚淵玄 @Butch_Gen

その名は疾走するアタランテ。チーム「アルカディアの乙女たち」の筆頭戦士。我が敬愛する女王であり――そして私と同じく、「伝説興行社」のバイオロイド。即ち人間たちの愛玩人形。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:07:28
虚淵玄 @Butch_Gen

「今日の猪はひときわ手強かった。いよいよ私も冥界の川を渡る羽目になるかと観念するところだった」控え室に戻り流水洗浄を受けながら、アタランテは誰にともなくそう漏らした。淡々とした口調に興奮の色はない。記録的視聴数を獲得した大勝利の後だというのに。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:09:54
虚淵玄 @Butch_Gen

「あなたはチャンピオンを倒したのです。今日の戦いは、かつてない偉業だったですよ?」そう私が注進しても、アタランテは涼しく笑うばかりだ。「チャンピオン?異な事を。猪に覇者も何もない。獣は獣。女神が我らの武勇を試すために遣わした試練であろうに」 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:11:17
虚淵玄 @Butch_Gen

「でもコロシアムクイーンは――」言いさして、私は口を噤む。アタランテは常に対戦相手を猪と呼ぶ。それはあくまで表現上のものなのかもしれないし、或いは彼女の視覚において、すべての敵が猪の姿に認識変換されているのかもしれない。私には確かめようがない。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:12:40
虚淵玄 @Butch_Gen

「ああ、君の言いたいことは分かる。ここはグリスのアルカディアとは違う土地、違う時代。先程の戦場もジュゴス山ではない。だが私はアルカディアの栄光を再び世に知らしめるべくして蘇った。まさにオイネウスの召喚に応じた時と同じく」 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:14:00
虚淵玄 @Butch_Gen

「だからね、狩人よ。余人がこの戦いを何と呼ぼうとも、ここは私のカリュドーン。武勇を示し、女神を讃える試練の場なんだよ」涼しげに微笑むアタランテの目を直視できず、私は顔を伏せるしかなかった。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:15:15
虚淵玄 @Butch_Gen

彼女は理解していない。理解できる筈もない。そのように設計され、精神構造を初期化されている彼女には。ここが人間たちの娯楽のためにバイオロイド同士を殺し合わせる“興行”のステージであるという現実は、決してアタランテの心には届かない。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:16:33
虚淵玄 @Butch_Gen

おそらくはコロシアムクイーンも、同様の精神拘束を施されていたのだろう。彼女たち一線級の花形選手たちには、ショーを盛り上げる演出としてそのような処置が施されるのが習いだ。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:18:04
虚淵玄 @Butch_Gen

私はアタランテと違って試合を賑わすための雑兵。つまりショーの脇役だ。だから手の込んだ精神拘束も施されていない。バイオロイドとして標準的な忠誠原則だけを刷り込まれ、ディレクターたちに命じられるがままステージでの戦いを受け入れている。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:19:30
虚淵玄 @Butch_Gen

「でも狩人よ。今日の君の動きは的確で非の打ち所がなかった。君が他の猪たちを上手く抑えてくれていたから、私は群のリーダーに専念することができた」「――勿体ないお言葉、恐縮です」 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:20:52
虚淵玄 @Butch_Gen

「これからも引き続き、私の背中を預けたい。共に女神アルテミスを仰ぐ同胞よ」流水洗浄を終えたアタランテは私に向き直り、労いの言葉をくれた。完璧な均整の裸身はまさに女神の彫像のように美しい。滴る水滴さえもが宝石の粒に見えるほどに。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:22:05
虚淵玄 @Butch_Gen

この裸身にわずかな薄布を巻き付けただけの姿で、彼女は槍と盾を手に再び戦場に立つ。息を呑むほどの麗しさは、伝説興行のボディデザイナーが計算し尽くした成果だ。どのような美女が血まみれになったとき観客を興奮させるのか、彼らは知り尽くしているのだから。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:23:18
虚淵玄 @Butch_Gen

その残酷な事実を理解していてもなお、私は彼女の裸体に目を奪われるしかなかった。なぜ私には「美」を理解する精神なぞ備わっているのだろうか。私は客席に座る側ではない。血を流し、あるいは返り血を浴びる側なのだ。彼女を美しいと感じる情動など余計なものなのに。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:25:00
虚淵玄 @Butch_Gen

「なぜ――」「ん?どうしたんだい?狩人よ」「なぜ私には…私たちには、心なんてものが必要なんでしょう?」それは戦うには余計なものだ。剣を振るい、刃に抉られ、同胞の断末魔を聞きながら生き長らえる日々には、いっそ心など無い方が良かった。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:26:26
虚淵玄 @Butch_Gen

「それは愚問というものだ。この胸の奥に心があるからこそ、私たちの戦いは意味を持つ」アタランテは優しく微笑みながら、教え諭すように私に言った。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:28:06
虚淵玄 @Butch_Gen

「私たちは戦い、仕留めた獲物をアルテミス神に奉納する。だが神はただ猪肉を欲しがっているわけじゃない。その獲物を仕留めるに至った勇猛さと不屈の闘志、それこそが本当の捧げ物なんだ。生と死の狭間を耐え忍ぶ私たちの精神こそが、神に喜びをもたらすんだよ」 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:29:34
虚淵玄 @Butch_Gen

「そう…ですね」私は反駁のしようもなかった。彼女の拘束された精神は…自らを神話上の英雄と信じ込まされ、疑う能力さえ奪われていながらも、それでも真理を言い当てていたのだから。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:30:55
虚淵玄 @Butch_Gen

そう――供物として意味を持つのは血ではない。私たちの痛みが。悲鳴が。そして美しく気高きモノに、もうこれ以上穢れてほしくないと…そんな祈りがいつか空しく砕け散る瞬間こそが。きっとあの客席に集う人間たちを興奮させ、歓喜させるのだろう。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:32:19
虚淵玄 @Butch_Gen

そのために造られ、そのために戦い続ける。私たちは伝説興行社のバイオロイド。オリジンダストの秘蹟がもたらした新しい娯楽の在り方なのだ。 #LO_DENSETSU

2020-06-13 05:33:49
虚淵玄 @Butch_Gen

補足:ここで書いたアタランテさんは公式漫画でヨハンナさんにバッサリやたれてたのとは別個体であります。あと決闘スタイルではなくチーム戦形式のリーグでの出来事、という設定でおります。

2020-06-13 05:42:49