いま北朝鮮で起こっていること #ネタ

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中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

「ゆ、許せない……! 大好きなお兄ちゃんを悪く言う南朝鮮傀儡逆賊一味、絶対に許さないんだから……っ!」 金与正は激しい怒りに打ち震えた。 「爆破よ!」 彼女の兄・金正恩であれば、その紙切れを見ても「やれやれ、またか」と苦笑して済ませたことだろう。しかし、あいにく彼は療養中であった。

2020-06-17 20:15:12
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

居合わせた幹部一同は、あまりに過激な指示に驚愕し、揃って反対した。 だが、こう言われては沈黙せざるをえなかった。 「お兄ちゃんに全権を委任されている私の命令が聞けないの? 忠誠心が足りないのね」 金正恩同志ならば、このような命令はなさらない。誰もがそう思ったが、みな命が惜しかった。

2020-06-18 06:36:27
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

療養中の金正恩は、一報を聞いて目を丸くした。 「ば、爆破……? 南北共同連絡事務所を?」 困ったことをしてくれた。 「して、与正は?」 「今からお見舞いに来られるそうです」 きっと、得意げに「お兄ちゃん、誉めて!」などと言いながら甘えてくるに違いない。 どんな顔をして迎えればよいのだ。

2020-06-18 06:50:27
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

「お兄ちゃんを困らせちゃった……」 やりすぎだと窘められてしまった。褒めてくれると思っていたのに。寝所を退出した与正の目には、じんわりと涙が浮かんでいた。 そこに、一人の男がやってきた。 「泣いているのかい、与正」 「あ……お兄様……」 声の主は、正恩と与正の同母兄・金正哲であった。

2020-06-18 12:23:18
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

「正恩に叱られたのかい」 正哲はそう言うと、与正の肩を抱き寄せた。 「ああ、なんて可哀想な与正……今夜慰めの曲を弾いてあげようね」 「……っ! いやっ、離してください、お兄様!」 与正が突き飛ばすと、正哲は激高した。 「……なぜだ、なぜ僕のことは『お兄ちゃん』と呼んでくれないんだ!」

2020-06-18 12:27:53
中原 鼎(皇室・王室ライター) @NAKAHARA_Kanae

「失礼します、お兄様……」 与正は逃げるようにその場を後にした。 「あっ、与正! 待つんだ!」 しかし、与正は歩みを止めない。 「……正恩の奴め、僕が欲しいものを全て奪っていく。弟のくせに……」 正哲は、わなわなと肩を震わせながら、遠ざかっていく妹の背中を見つめていた。 【第一部 完】

2020-06-18 12:30:44