戦車小話~パンターはどうしてあんなに大きく重くなったのか?

中戦車なのになんだか重戦車みたいに大きくて重いパンター。どうしてそうなったんでしょう?というおはなし。結局よくわかりません。
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えすだぶ @FHSWman

パンターがどうしてああまで大きく重い戦車になってしまったのか、私もよくわからないので是非知りたいです。ただあれは一度に起きた事ではなく、幾つかの段階を踏んでそうなってしまったように思えます #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/b98f2…

2020-06-27 13:49:18
えすだぶ @FHSWman

パンターがああなるまでの経緯をちょっと整理してみましょうか。まず1938年頃のドイツはIII号戦車が無茶苦茶うまく行っておらず弄り回してたのですが、その改善の試みと平行して「いっそ置き換えようの全く新しいIII号戦車を作っては?」という話が持ち上がります。これがVK20の類 pic.twitter.com/mO72S66gK9

2020-06-27 13:58:49
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えすだぶ @FHSWman

VK20系は名前の通り20t級戦車計画で、色々なメーカーの案があったり新III号戦車のほか新IV号戦車計画でもあったりとか細かく見れば色々ありますが、ざっくり言えば3.7cm対戦車砲防御クラスとして最初から作り直したIII号ないしIV号戦車みたいなもんです。車格も両者の中間くらいで特段大きくはない pic.twitter.com/qwaQrvGEob

2020-06-27 14:05:20
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えすだぶ @FHSWman

今更3.7cm砲防御?と思うなかれ。そも大戦前に対砲防御を達成した戦車はそこまで多くありません。III号、IV号戦車も当初は対小銃徹甲弾クラスの装甲しかありませんでしたし、38年時点ではようやく対20~25mm砲限定防御に引き上げらるかという頃なので、対3.7cm砲防御はそれなりに画期的ではあります

2020-06-27 14:10:15
えすだぶ @FHSWman

しかしVK20の試作車が出来るかできないかのうちに独ソが始まってしまい、そこで彼らはT-34やKVと遭遇することになります。これらに比べれば現有のIII号やIV号戦車どころか開発中の次世代中戦車VK20系でさえ陳腐化している事は明らかで、ドイツは戦車開発計画を抜本的に見直すことを強いられたのです

2020-06-27 14:18:43
えすだぶ @FHSWman

ソ連戦車に対する反応として、まず出てきたのが、進行中のVK2002計画を傾斜装甲に改めること。これが1941年11月のVK2002MAN社案なのですが、イマイチ詳細がわかりません。車格はあまり変わっていないらしいものの、装甲配置は既に後のパンター(というよりレオパルト)に通じる形になってます pic.twitter.com/CNeevwz8oJ

2020-06-27 14:22:54
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えすだぶ @FHSWman

VK2002(M)の傾斜装甲型は装甲厚こそ従来案と同様で前面50mmの側背面40mmですが、傾斜装甲になったので防御力(そして重量も)たぶん増してるでしょう。VK2401とかいう詳細不明の名前も飛び出すので、24t級くらいが見込まれていたのかも知れません。さあパンターに至る重量増加が始まりました

2020-06-27 14:26:28
えすだぶ @FHSWman

しかしひと月そこら後の1941年12月には、次の戦車は30t級が必要だという話が出てきます。VK2002(M)は防御面ではたぶんT-34に匹敵しますが、武装は据え置きの5cm60口径砲なので力不足です。折しも夏頃から60口径7.5cm砲が開発されていたので、多分これを積む兼ね合いで30t級が求められたのかも

2020-06-27 14:31:50
えすだぶ @FHSWman

しかし次世代戦車の重量が急に30t級になると問題が発生します。ドイツが持ってた突撃橋等の障害突破手段は通過重量が28tまでだったので、30t戦車は渡れないのです。それなら機材を一新するか……いや、代わりに戦車に潜水渡渉機能を持たせれば、その制限は無視できるものになる筈です pic.twitter.com/SC4pvlHzRo

2020-06-27 14:38:41
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えすだぶ @FHSWman

しかし潜水渡渉機能によって障害突破手段の重量制限を無視できるようになったことは、ある意味ではこれまでドイツ戦車の重量を縛っていた箍を外しました。翌42年1月までに次世代中戦車計画の重量は32.5トン、そして36トン以内と、どんどん天井が高くなっていきます

2020-06-27 14:42:17
えすだぶ @FHSWman

この時期に次世代中戦車計画の重量が30トンから36トンにまで増していった理由はよくわかりませんが、しかし2月には次世代7.5cm戦車砲計画の砲身長が60口径から70口径にまで伸びていたりするので、攻撃力増大の要求や、それに伴う砲塔の拡大見込みがあったのかも知れません。このへんサッパリ謎なのです

2020-06-27 14:44:26
えすだぶ @FHSWman

そんなこんなで1942年5月にはVK3002の形が大体纏まってきます。MAN社案のほうは後のパンターにごく近い形まで来ましたが、実はまだ1割くらい短かったり若干小さい。この時点で36tで収まる予定だったのかどうかはよくわかりませんが、ちょっと怪しい気もする pic.twitter.com/gItMFIENBu

2020-06-27 14:53:19
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えすだぶ @FHSWman

計画36tだったものが量産型で急に44.8tまで予想外に重くなったとは考えにくいので、たぶん5月の図面の時点で既に幾らか超えていた筈。そこから42年秋の試作車(写真)に至るまでにたぶん車体が伸び、その後さらに砲塔が少し大きくなったり前面装甲が60mmから80mmになったりと、ちまちま増していきます pic.twitter.com/K0BDRJhDJt

2020-06-27 14:59:58
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えすだぶ @FHSWman

なお意外に思われるかも知れませんが、パンターで前面装甲を60mmから80mmに増したことは重量増加のほんの一部でしかありません。各装甲板の面積と厚さから重量を出してみれば分かるのですが(これはざっくり形状なので雑な計算ではありますが)、前面装甲はもともと大した重量を占めてはいないのです pic.twitter.com/lWnv1pcgJI

2020-06-27 15:15:36
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えすだぶ @FHSWman

図のようにパンターの前面上部80mm装甲は推定1.9tくらい。60mmの場合は1.4tそこらですから500kgも増えていません。いっぽう当初計画より70cm車体を伸ばしたことはより致命的で、薄いとは言え側面・上面・底面装甲すべての面積が増すため1t近く増えてたと考えられます。戦車は大きくなるとマズいのです

2020-06-27 15:23:06
えすだぶ @FHSWman

先の図は砲塔リング穴や砲眼孔なんかの本来穴があいてる部分まで埋めちゃってるので多分実際より重めの見積もりになってる筈ですが、それで装甲総重量は17.3tと見積もられます。いっぽう実際のパンターの装甲車体+砲塔の重量は21.1tとされるので精度はお察し。まあ実際は板以外の物もありますものね

2020-06-27 15:31:26
えすだぶ @FHSWman

そんで実際作った彼らはこんな怪しげな見積もりよりも遥かにきちんとしていたでしょうから、パンター36tではなく45t級の戦車になってしまう事は作る前から当然分かっていた事だとは思います。突然やりすぎた事に気づいたのではなく、ゆっくりと胃が痛くなっていたはず……

2020-06-27 15:35:47
えすだぶ @FHSWman

パンターの重さの話が出たので、ついでに部分ごとの総重量の占める割合も見てみると…… 装甲47% 武装6% 機関7% 変速機7% 走行装置26% 弾薬3% その他装備品3% 乗員1% と、意外に足回りが重かったりします。大きいことの害は装甲重量以外にも響いてくるのです

2020-06-27 15:48:14
えすだぶ @FHSWman

なんとなく戦車は鉄の塊めいた印象がを持ってたりすると、装甲の重量が半分しか占めていないというのは少なく感じるかもしれません。でも装甲が47%を占めるパンターはむしろ高い部類で、戦間期の戦車では15~25%程度でしかありませんでした。各装置が小さく軽くなり装甲に回せる重さが増えたのです

2020-06-27 15:53:41
えすだぶ @FHSWman

と思ったけどパンターと同時代の戦車は装甲重量がだいたい45~60%を占めてますか。重戦車とか歩兵戦車の類は高め、中戦車や巡行戦車の類は低め。パンターは同自体の中戦車として効率は特段良くも悪くも無く、ただ単に規模が45トン級であるのだと言えるのかしらん

2020-06-27 16:03:55
えすだぶ @FHSWman

ええと、何が言いたかったのかよく分からなくなってきました。ともあれパンターは作ってみたらなんか思ったより重くなってしまったとかではなく、何かしらの要求のために少しずつ大きく重くなることを繰り返して段階的にああなって行ったんじゃないかしらというおはなしでした

2020-06-27 16:06:59
えすだぶ @FHSWman

しかしパンターを指して「野放図な要求の増大を許した開発方針の芯の無さ」みたいなことを言いたくはありません。40年代前半というのはまさに戦車の規模が爆発したタイミングです。前人未踏の領域に踏み込むのに、どこまでが妥当でどこからは諦めるか一発で正解を引けというのは無理というもんです

2020-06-27 16:13:25
えすだぶ @FHSWman

ところでこうやって戦車の断面図から装甲面積出して各部の装甲重量を求めるの、楽しいしなんかやった気分になれるのでオススメです。前面装甲強化は実は意外にそこまで辛くないというか、それよりとにかく大きく、とくに長くなることの害がすごいとか実感できます twitter.com/FHSWman/status…

2020-06-27 16:18:19
えすだぶ @FHSWman

断面図じゃねえや展開図です。みんなも軽率に戦車をUV展開しような

2020-06-27 16:23:11
えすだぶ @FHSWman

またぞろふんわりした話をしたのでパンターマンに刺されそう

2020-06-27 16:33:43
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コメント

もするさ§( •̀ᴗ•́) @mosurusa_0806 2020年6月27日
なぜ、シャールBやシャーマン戦車の方向に行かなかったのか
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やし○ @kkr8612 2020年6月27日
総統がリアル系よりスーパー系のほうが好きなおじさんだったからね、しょうがないね(適当)
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ヘイローキャット @Halo_nyanko 2020年6月28日
パンターはとってもいっぱい弾薬載せられるのよね。でかいから。なかなかこまめに弾薬補給できないドイツ軍にとっては弾薬搭載量って結構大事な気がする。
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BIRD @BIRD_448 2020年6月28日
枢軸国筆頭のドイツも資源不足には悩んでいて、兵士のヘルメットから戦車装甲までニッケルを抜くという節約をしているし、後期ほど装甲鋼板が柔らかくなっている。
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mikumiku_aloha @mikumiku_aloha 2020年6月28日
身長190cmに迫るような体格も珍しくないドイツと、戦車兵には背の高く無い兵を選べばいいじゃんのソ連の違いとかないのかなと
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ドラゴンチキン @dragonchicken19 2020年6月28日
タイガー的なモノをT34ショックでひし形に潰そうとしたが、高さも確保しなければならずこうなった説。
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ドラゴンチキン @dragonchicken19 2020年6月28日
dragonchicken19 宮崎御大が「ドイツ人はなんでも箱に入れて運ぶから兵器は四角くなければならぬ」と言ってた。(泥豚だったか?)
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儀狄_2nd @2ndGiteki 2020年6月28日
重量の47%が装甲か。同じ40tクラスの自衛隊10式戦車ではどうなのか気になる
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