2020-06-28のまとめ
[PDF] ESRI Research Note No.54 最低賃金引上げの中小企業の従業員数・付加価値額・労働生産性への影響に関する分析 務川慧、川畑良樹、上野有子(経済社会総合研究所) / esri.go.jp/jp/archive/e_r…
2020-06-28 22:43:37推計の結果、雇用については、全体として明確な負の影響はみられず、最低賃金近傍で働く労働者の割合が多い業種や地方では正の影響もみられた。付加価値額および労働生産性への影響については、業種別・地域別で明確に異質性が確認された。
2020-06-28 22:43:38業種別では、製品・サービスの価格転嫁がしやすい業種において相対的に大きな正の影響がみられた。一方で、消費者向けサービス業など価格決定力の弱い業種において相対的に小さな正の影響または、負の影響がみられた。地域別(中央最低賃金審議会が定める地域ランク別)では、
2020-06-28 22:43:39産業集積の度合いが相対的に低く、ローカルな市場を相手にしているDランク地域において正の効果がみられた。近年の日本の中長期的データを踏まえれば、最低賃金引上げは、必ずしも雇用削減や企業収益減につながるわけではなく、業種や地域の生産物市場や労働市場の状況によって影響は様々である。
2020-06-28 22:43:402016年から2019年にかけては、全国加重平均で年率3%程度の最低賃金引上げが実施されるなど、90年代後半から2000年代中頃の傾向と比較して、近年の最低賃金は大幅に上昇する
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2020-06-28 22:44:42既存研究での指摘と同様、推計方法により最低賃金引上げの弾性値にかなりのばらつきがあり、その値については幅を持ってみる必要がある。しかしながら、少なくとも負の弾性値が顕著にみられるといったことはなく、寧ろ正の値を示す推計結果が多い。
2020-06-28 22:44:43式(1)による推計結果(付加価値額を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/r3l8fcSfGl
2020-06-28 22:44:44推計方法により最低賃金引上げの弾性値にばらつきがあり、その値については幅を持ってみる必要があるものの、1年前の最低賃金引上げは概ね負または有意な値でない弾性値を示し、3年前の引き上げは正の弾性値を示した推計結果が多い。
2020-06-28 22:44:45最低賃金引上げは、短期的には付加価値額へ影響を与えないまたは負の影響を示すが、中長期的には付加価値額を増加させる効果がある。
2020-06-28 22:44:46式(1)による推計結果(経常利益を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/8t84ZvpdMe
2020-06-28 22:45:44式(1)による推計結果(総人件費を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/hWyikh2dZs
2020-06-28 22:45:451-2年前の最低賃金引上げは、経常利益に対して、概ね負の弾性値を示しており、企業の利潤減に結びついているとみられる22。一方で、3年前の引き上げは正の弾性値を示しており、中長期的には利潤減を軽減ないし、取り戻しているものとみられる。
2020-06-28 22:45:46この要因として、Harasztosi and Lindner (2019)やLink(2019)が示している通り、企業が最低賃金引上げの負担増を製品・サービス価格へと転嫁することなどが考えられる23。最低賃金引上げの総人件費に対する弾性値は、引き上げ年によらず概ね正である。
2020-06-28 22:45:47よって、最低賃金引上げは、短期的は利潤減の圧力となり、付加価値額を押し下げる要因となりうるものの、その後価格転嫁等の経路を通じて利潤減の度合いが軽減または取り戻され、人件費増とあいまって、中長期的には付加価値額増に結びつくと考えられる。
2020-06-28 22:45:48式(1)による推計結果(労働生産性を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/YJlxCrlpSI
2020-06-28 22:46:461年前の最低賃金引上げの弾性値は負または有意でない(影響がみられない)結果となった。この結果は森川(2019)と一致する。前述した通り、最低賃金引上げは従業員数へ影響がない(またはわずかに従業員数増をもたらす)一方、短期的には付加価値額に対して負の弾性値を有するため、
2020-06-28 22:46:47労働生産性に対しても弾性値が負となる。他方で、3年前の引き上げの弾性値は正に有意となる結果が多くみられる。これも前述の通り、中長期的には最低賃金引上げの付加価値額への弾性値が正となるため、労働生産性への弾性値も正となる。
2020-06-28 22:46:47式(2)による推計結果(従業員数を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/3EOKbM2NfE
2020-06-28 22:46:48多くの業種において、最低賃金引上げの弾性値は有意に認められなかったものの、正を示した。加えて、製造業では1年前の最低賃金引上げが、医療・福祉では2年前の引上げが、宿泊業・飲食サービス業では3年前の引き上げが、それぞれ1%有意水準の正の弾性値が示された。
2020-06-28 22:46:49このことは、近年の日本において、程度の差はあれ、どの業種も労働市場が買い手独占的である可能性を示しており、特に製造業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業においてその傾向が顕著であることが考えられる。
2020-06-28 22:46:49式(2)による推計結果(付加価値額を被説明変数としたパネル) pic.twitter.com/TmoyBWoHVC
2020-06-28 22:47:39宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉において、1年前の最低賃金の引上げが(有意でないものの)負の弾性値を示していることがわかる(2年前、3年前の引き上げの弾性値は正であり、
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