反社会的行動をしてしまう少年と自傷行為

非行から重大な犯罪まで、反社会的な行動をしてしまう少年の「他者」へ向かう暴力と、自傷行為という形で「自己」へ向かう暴力の間にあるものとは。松本俊彦先生のツイートをまとめました。
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@DSHtoshilancia

思春期は、非行・犯罪といった反社会的行動を考えるうえでも、自傷や自殺といった自己破壊的行動を考えるうえでも重要な時期である。

2011-06-28 01:45:37
@DSHtoshilancia

実際、非行少年の多くが、13歳前後を境に、不良交遊を開始し、養育者や教師に対する反発をあらわにしはじめる。また、リストカットのような自傷行為が最初に行われる年齢として最も多いのも13歳である。

2011-06-28 01:45:46
@DSHtoshilancia

不思議なことである。反社会的行動が前景化すれば司法的対応が優先され、一方、自己破壊的行動が前景化すれば精神保健的対応が優先される

2011-06-28 01:46:01
@DSHtoshilancia

いずれも攻撃性という点で共通するものの、一方の矛先は「他者」に向かい、もう一方は「自己」へと向いている。

2011-06-28 01:46:21
@DSHtoshilancia

しかし、意外に見落とされているのが、いわゆる非行少年は、自殺リスクが非常に高い一群である、という事実である。その意味では、一見、正反対のこれらの行動は全く無関係とはいえない。

2011-06-28 01:46:34
@DSHtoshilancia

この10年近く、筆者は、定期的に少年鑑別所や少年院に入所する少年たちの診察に従事してきた。

2011-06-28 01:47:08
@DSHtoshilancia

そのなかで驚いたのは、実に多くの少年たちが様々な心的外傷を体験しており、それによって基本的信頼感と援助希求能力を破壊されてしまっている、ということであった。

2011-06-28 01:47:25
@DSHtoshilancia

そして、そうした過酷な環境に適応するために、少なくない者が「解離」という生き残り術を体得しており、なかには、アルコールや薬物を乱用して「化学的に」解離している者もいた。

2011-06-28 01:47:40
@DSHtoshilancia

ある少年は筆者にこう語った。「小学校2年生のとき、腫れ上がった顔で学校に行ったら、不審に感じた担任の先生から、『絶対に内緒にするから正直にいってほしい』と懇願された。だから、先生を信用して、父親から毎日殴られていることを話した。

2011-06-28 01:48:22
@DSHtoshilancia

すると、すぐに先生は自宅を訪れ、親に注意をした。その夜、父親から、『余計なこというな』とめちゃくちゃに殴られた。そのとき、『絶対に話してはいけない。話すと裏切られる。かえって悪い結果になる』と思った。

2011-06-28 01:48:40
@DSHtoshilancia

以来、誰も信じないようにしてきたし、正直な気持ちは話さないようにしてきた。気持ちがつらくなったときには、とにかく覚せい剤とマリファナで頭を麻痺させていた」

2011-06-28 01:48:53
@DSHtoshilancia

自分が受けた被害体験を否認し、さらには、いつしか加害者と同じ信念を抱くようになっている者もいた。

2011-06-28 01:49:10
@DSHtoshilancia

たとえば、傷害事件の加害者である男子少年は、両親からの理不尽な体罰や暴言を受けながら生育した過去を持っていたが、本人はそれを虐待とは認めなかった

2011-06-28 01:49:46
@DSHtoshilancia

そけどころか、「あれはしつけですよ。自分が言うこと聞かなかったから殴るのは当然です。つらくなかったです。それがふつうですから。俺だって、地元の後輩がなめた態度をとったときには、ヤキ入れますもん」と主張した。

2011-06-28 01:49:59
@DSHtoshilancia

そんな彼のこぶしの指の付け根付近は、腫れ上がり、皮膚が硬くなっており、おそらくはある時期、つらい感情を緩和する目的で、こぶしで壁を殴りつけるという自傷行為を繰り返していたことが推測された。

2011-06-28 01:50:11
@DSHtoshilancia

別の男子少年は、小学校時代の出来事をあまり記憶していなかったが、「とにかく家にいると殴られた。それが嫌で何度も家出を試みたことだけは覚えている」と述べていた。

2011-06-28 01:50:29
@DSHtoshilancia

そんな彼は、小学校高学年の頃より、いやな出来事に遭遇すると、「生きている感じがしない」という離人症を思わせる内的体験するようになった。

2011-06-28 01:50:56
@DSHtoshilancia

彼によれば、この感覚を打ち消すには、コンパスで手甲を突いたり、カッターで前腕を切ったりという自傷行為が役立ち、自傷におよんでいる最中は、全く痛みを感じなかったという。

2011-06-28 01:51:13
@DSHtoshilancia

ところで、その彼は、中学生になると不登校となり、毎日長時間部屋にこもって「戦闘物」のコンピューターゲームに没頭するようになった。

2011-06-28 01:51:31
@DSHtoshilancia

親はそうした生活を口やかましく非難した。そのたびに、彼はどこかから野良猫を探し出してきて、ビルの屋上から落下させ、憂さを晴らした。

2011-06-28 01:51:48
@DSHtoshilancia

そしてある日のこと、彼は近所に住む、さほど親しくない同級生を殺害した。これといった理由はなかった。彼は筆者にこう語った。「相手には何の憎しみもなかった。なんとなく、ナイフで刺したらどうなるかなと思った。ゲームの延長みたいな感じだった」。

2011-06-28 01:52:16
@DSHtoshilancia

彼の話を聞いていると、つらい現実から退却しているうちに、とうとう自分の外側に広がる世界の現実感まで失ってしまった、孤独な少年の姿が浮かび上がってくる。

2011-06-28 01:52:33
@DSHtoshilancia

別のいい方をすれば、無感覚の世界に逃げ込んでいるうちに、自分の痛みだけでなく、他人の痛みまで感じられなくなってしまったように思えてならない。

2011-06-28 01:53:03
@DSHtoshilancia

DBD (破壊的行動障害) マーチと呼ばれる、有名な反社会的行動の発達論的仮説がある。これは、ある種の非行少年を理解するにはきわめて都合のよい仮説である。

2011-06-28 01:54:08
@DSHtoshilancia

注意欠陥・多動性障害の子どもは虐待の被害に遭遇しやすいが、同時に、虐待被害を受けている子どもは、幼少期には過覚醒と知覚過敏のために一見すると多動のように見えることにも注意する必要がある。

2011-06-28 01:54:37