https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263717
(抜粋)
――台風19号は記録的な大雨を降らせましたが、八ツ場ダムがギリギリまで貯水した画像がネットで拡散され、おかげで利根川の氾濫を防げたという意見もあります。これは事実なのでしょうか。
誤解です。八ツ場ダムがなくても、利根川の河道で流せる程度の降雨量でした。治水というと、ダムを連想する人が多いと思いますが、基本は堤防や河道掘削などの河道整備です。雨がどこにどれだけ降っても、一定量を流せる河道整備が進められてきたことにより、利根川では氾濫が起きませんでした。これに対し、ダムの効果は不確実で、限定的です。降雨が「想定した場所」「想定した規模・降り方」で発生し、かつ、放流のタイミングを誤らないという場合に河川への流入量を減らせるにすぎないのです。
――八ツ場ダムが本格稼働していなかったことも背景にありましたね。
今回ラッキーだったのは、八ツ場ダムが試験湛水中だったため貯水量が少なく、本来より多くの水を貯めることができたことです。
――もし八ツ場ダムが本格稼働していて今回のような雨量になったらどうなっていたのでしょうか。
危なかったと思います。ダムは無限に水を貯めることができるわけではありません。ダムが貯められる以上の降水が発生した場合、ダムはダム自体の決壊を防ぐために緊急放流を行うことがあります。それで失敗したのが昨年の西日本豪雨で大規模な浸水被害を引き起こした愛媛県の野村ダムです。緊急放流をしたため肱川が氾濫し死者を出しました。今回もいくつか緊急放流をしたり、準備をしていたダムがあります。ダムの限界には注意する必要があります。
「ダム優先」「人命軽視」の国策で堤防整備は後回し
■自治体が国のお金で再開発できるのがスーパー堤防
――堤防の斜面をなだらかにして堤防の上に住宅を建てる江戸川スーパー堤防の差し止め訴訟もされていましたね。
スーパー堤防は、時間とコストがべらぼうにかかり、実現可能性のないものです。完成時期は「不明」、コストは江戸川の22キロだけで1兆円とも試算されています。治水計画としては破綻していますが、自治体が国のお金で再開発できるという「メリット」があります。江戸川区の場合は100%国負担でした。ちなみに、通常の堤防より高いと誤解されていますが、高さは同じですから、水が乗り越えてくる状況は変わらずスーパーでもない。千葉県市川市妙典のスーパー堤防は川と堤防の間に線路が走っていて、会計検査院からは完成していないと国交省は怒られています。
――デタラメですね。
盛り土をともなう再開発で立ち退きが必要になりますから、計画が進まないのです。北小岩では強引に進めて「まちこわし」になりました。
――ところで国交省の堤防は土を盛ることしかしないのですか。
今回の長野県・千曲川も洪水が土の堤防を越水し破壊したことによる決壊だといわれています。堤防を越えると水が反対側に落ちて、滝つぼができるように土の堤防を削って決壊させるのです。ですので、国交省がかつて研究してきたアーマー・レビー工法のような堤防強化が必要なのですが、今の国交省は河川管理施設等構造令の土堤原則だからと土を積むだけです。
――堤防に矢板(鋼板)を入れるのもダメですか。
矢板やセメントなど異物を入れてはいけないそうです。土堤原則には例外もあり、場所によっては堤防強化されている例もあるのですが、決壊を防ぐには原則と例外を逆にすべきです。理解に苦しみます。

> 今回の台風による降雨で試験不十分のまま満水となったという、イレギュラーな事態なのである。 > まかり間違えば八ッ場ダム自体が災害の主要因となる可能性もあり、奇跡などと手放しで喜べる話ではない。 台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ gendai.ismedia.jp/articles/-/680…
2019-10-29 18:13:59
> 田中正造は死ぬまで渡良瀬遊水地に反対をしていた 台風19号で感じた「先人に感謝」という言葉の耐えられない軽さ(赤木 智弘) - 現代ビジネス - 講談社(4/5) gendai.ismedia.jp/articles/-/680…
2019-10-29 18:11:46