- suzumeninja
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バンブーエルフ1ヶ月記念とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘】 (実況感想ハッシュタグは #エルフ三人娘 だと後で拾えるので嬉しい)
2020-07-14 21:35:29太陽は真上に昇り、もうすぐお昼時という穏やかな草原。ガサガサと草むらを跳ねるのは1匹のウサギだ。そして、それを竹の弓矢で狙うエルフが一人。「……シッ!」エルフの放った矢は風に乗り草をかき分けウサギを一撃で仕留めた。「いよっしゃ!」
2020-07-14 21:37:56木の高さほどある竹馬がシュルシュルと縮み、射手が降りてくる。胸にサラシを巻き竹の軽鎧に身を包む、長身の女エルフはギザギザの歯をむき出しにして笑いながらウサギを回収する。彼女はバンブーエルフ、竹林に住み、竹とともに生きるエルフだ。「これでハムができるな」
2020-07-14 21:41:03バンブーエルフは仲間の待つ焚火に戻る。仲間と言っても、待っているのはずんぐりとした低身長のエルフ一人だけだが。「おーいポテチ!ウサギとったぞ!」ポテチと呼ばれたエルフはエルフ特有の長い耳をピクリと動かしてバンブーエルフの方を振り返る。「ウサギ!久しぶりにハムが作れゆ!」
2020-07-14 21:43:01ずんぐりとしたエルフはミスリル銀の背負い保管箱から使い込んだ包丁を取り出すと、テキパキとウサギをさばき始めた。焚火には鍋がかけてあり、ポテトがグツグツと煮えている。「きょうはハムポテサラゆ」この舌っ足らずなエルフはポテサラエルフ。顎の力が弱くポテトサラダを主食とするエルフだ。
2020-07-14 21:45:18二人のエルフに近づく人影が一人。「ふがふが」びしょ濡れの貫頭衣に身を包み、両手で魚を持ち口に魚を咥えてやってきたのは、もうひとりの仲間だ。「ハカセの方も大漁だな」「ふがふが」ハカセと呼ばれたエルフは魚を加えたまま無邪気に笑う。
2020-07-14 21:47:36元々、バンブーエルフはポテチとふたり旅だった。だが、いつの間にか流浪のエルフであるクソバカエルフが一緒について来ていた。……クソバカエルフなんて名前だが、無邪気でいいやつである。なにより、外の世界に慣れていないバンブーエルフたちにとって放浪者というのは心強いのだ。
2020-07-14 21:49:33「魚は後でハムにすゆからよこすゆ」ポテチが両手を出すとハカセが無造作に魚を放おる。ポテチは造作もなく受け取ると、ミスリル銀の背負い保管箱にポイポイ投げ入れる。この保管箱は魔法がかかっており、見た目以上に大量の物が入る。食材を多く運ぶポテサラエルフの旅の必需品だ。
2020-07-14 21:52:38「メンマ、ハムの用意を頼むゆ」「あいよ」バンブーエルフのメンマは竹の燻製器を組み立てる。ポテチと旅をしながら、竹でいろいろな持ち運びできる調理道具を作るようになったのだ。魚を離したハカセは周囲の放浪……もとい警戒にでる。
2020-07-14 21:55:38……しばらくしてポテトが茹で上がり即席のハムが出来上がると、ポテチは何やらムニャムニャ言いながらポテトサラダを作り、それを3人で食べた。いつもの食事風景だ。食事が終わると諸々の荷物を片付けて今後の相談をする。「それでハカセ、本当にこっちの方角で良いんだよな?」
2020-07-14 21:57:38「あってるあってる!でっかいハムの予感がする」ハカセは笑って答える。「予感……ねえ……」メンマは少し不安になるが、しかしこれまでハカセの”予感”が外れたことはない。クソバカエルフ、別名”森の賢者”。バンブーエルフにその高度にぶっ飛んだ思考は理解できないが、しかし、確かなのだ。
2020-07-14 22:00:05「まあ、行くだけ行ってみるゆ。ポテトはまだいっぱいあゆから心配ないゆ」「それもそうだな」のんきなポテチの雰囲気に飲まれるようにメンマも納得し、ウサギの骨をクッキーのようにバリバリと噛み砕く。「よーし!行くか!」「「おー!」」三人は街道を外れた獣道をずんずんと進んでいいった。
2020-07-14 22:02:26