ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ」#2

2011-06-30 16:15:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

少女はカウンター席に座ったまま、ザクロにはっきりと告げた。だが彼女は戦闘姿勢を取ろうとはしない。ザクロも同様だ。「疑ゃしないわ、ニンジャちゃん」ザクロはため息を吐いた。「ついでに、アータがザイバツやアマクダリの奴らとも思えない」「うん」少女は頷いた。

2011-06-30 16:22:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「で?どうしたいの、アータは?ん?……なんでいきなりそんな話を。アタシとやり合うってわけでも無いんでしょ」ザクロは自分が飲むサケ・ボムを作り、少女の隣に座った。彼女の名はヤモト・コキ……ザクロが彼女にこのバーの二階の空き部屋を提供したのは数日前のことだ。

2011-06-30 16:35:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人が出会ったその日の夜も、ザクロは「仕事」の帰りだった。ヤモトは酸素コフィンやシャワー付きのUNIX喫茶、カニ無しカラオケボックスといったマッポー施設をその日その日で使いながら暮らしていた。彼女がおよそ高校生にふさわしくない通貨素子を所持していたのもザクロには気がかりだった。

2011-06-30 16:43:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザクロは、この手の食い詰めたワケありの人間を放っておけない、およそネオサイタマ市民らしからぬ性分の持ち主だった。ニンジャとなってからの「仕事」も、結局のところそうした性分の延長だ。ザクロはニチョームを護る独りの自警団であり、ヨージンボーであり、相談役であり、騎士であった。

2011-06-30 16:48:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザクロが相手取るのは今夜のような突発的なフリークアウト者ばかりでは無い。半非合法なこの区域において、闇の勢力とギリギリの綱渡りを行い、侵害されることの無い自由を確立するために、ザクロのニンジャとしての力は今や不可欠な威力だった。

2011-06-30 17:03:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ザクロはソウカイヤを相手に協定を結び、うまく立ち回ってきた。数ヶ月前、いきなりそれが、キョートから進出してきたというザイバツなる組織に置き換わった。謎だらけの不気味な集団ではあったが、協定は問題なく引き継がれた。

2011-06-30 17:07:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがここ最近、頭痛の種が生じつつある。「アマクダリ・セクト」。ソウカイヤの残党組織が何時の間にか力をつけ、そんな名前の旗印を掲げるようになった。表社会の何者かの後ろ盾もあるに違いない。彼らがザイバツと睨み合いを効かせる場面もネオサイタマにおいて散見されるようになった。

2011-06-30 17:14:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アマクダリがこのニチョームに焦点を合わせれば、協定の行き場はどうなる?ニチョームを舞台にザイバツとアマクダリの抗争が起こるという最悪の事態すらあるのだ。ザクロはサケ・ボムをフジサンウォーターめいて一息に飲んだ。

2011-06-30 17:27:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その……」ヤモトは言葉を探した。「良くして貰いっぱなしっていうわけにはいかないから」「そりゃそうよ!決まってるでしょ!」ザクロは言った。「アータの食い扶持は探さなきゃいけないわ(でもダメよ夜のお仕事は)、働くにせよ勉強するにせよ……で?ニンジャの話でしょ、今は」

2011-06-30 17:45:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そう、ニンジャ」ヤモトは言った。「ザクロ=サンの仕事、手伝いたい!」「ハッ!」ザクロは笑い、手をひらひら振って拒否を示した。「子供に助けられるようなヌルい事はしてないのよ!なーに?そういう話?いいから寝なさい!アタシも寝るわ!」「強くなりたい!」ヤモトは身を乗り出した。

2011-06-30 17:58:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「強くなりたいッて……」ザクロはヤモトを見た。ヤモトは真っ直ぐに見返した。ザクロは肩を竦めた。「全く、そもそもアタシってばホントにウカツ。いつ見たの、アタシの『仕事』?尾行したの?」ヤモトは頷いた。「昨晩」「……」ザクロは椅子から立った。ヤモトから少し離れて立ち、促す。

2011-06-30 18:28:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

7フィートの距離を開け、二人は向かい合った。ザクロはレザージャケットに包まれた自分の胸を親指で叩いた。「打ってごらんなさい」ヤモトは要求を理解した。彼女は半身の姿勢を取ったと思うと、瞬時にイナズマめいたパンチを繰り出す!「イヤーッ!」

2011-06-30 18:38:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドシッ!衝撃で窓ガラスがビリビリと震えた。ザクロはヤモトの拳を掴み、胸元で止めていた。鼻から一筋、鼻血が流れた。「ホントにニンジャなのね。疑ったわけじゃ無いけど」鼻血を拭いザクロは言った。「いいわ面倒見てやるわ、あの部屋も丁度、住み込みの子が出て行った所…」ザクロはヤモトを見た。

2011-06-30 18:54:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトの目から、みるみる涙が溢れ出したのだ。「あれ?……あれ?」ヤモトはうろたえ、涙を拭った。「あれ?……おかしいな……おかしいな……」涙は止まらず、やがて嗚咽が漏れ出した。「おかしい……おかしいな……」

2011-06-30 19:07:20
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「アタシ、こんな役ばっかりよ、ホントにね」ザクロは嗚咽するヤモトを抱きしめ、背中をさすってやった。「アタシには王子様はいないのかしら?」ヤモトはザクロの胸に顔を擦り付けるようにして号泣した。「ウウーッ!」「あのね、高いのよ、このジャケット……」

2011-06-30 19:16:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヤモトの背中を撫でながら、ザクロは考える。無理もない。この年でニンジャ憑依。日も浅い事だろう。宿無しの境遇。ニンジャとなった彼女がここへ至るまで何を経験してきたか、何に耐え続けてきたか、訊かずともわかる。「ホントに高いのよ、ジャケット……」

2011-06-30 19:26:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーのチョップを受け、ベロシティの左腕が複雑骨折!「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーのチョップを受け、ベロシティの右腕が複雑骨折!「バ……バカな、なぜお前が」ベロシティはメンポ内蔵インカムのスイッチを舌でONにしようともがく。

2011-06-30 23:01:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なぜお前がここアバッ!」わかりきったその行動を許すニンジャスレイヤーではない。両手でベロシティの頭を掴み、一息でその首の骨を捻じり折った。「新手だ、どんどん来るぞ」シルバーキーが雑居ビル群の屋上を指差す。「ザッケンナコラー!」アサルトライフルを手にしたクローンヤクザ達だ!

2011-06-30 23:09:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「覚悟はしていたが」ニンジャスレイヤーはシルバーキーを促し路地をぬって駆ける。銀色のニンジャ装束を来たニンジャ、シルバーキーが詫びた。「すまんな本当に!」「それは言わぬ約束だ」ニンジャスレイヤーは奥ゆかしく退ける。シルバーキーが笑う。「サラリマン風に言えばウィンウィン関係よな」

2011-06-30 23:16:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ニンジャスレイヤーは廃メトロ・エントランスへ走り込んだ。シルバーキーが追う。その足元で銃弾が跳ねる!「ザッケンナコラー!」「ザッケンナコラー!」クローンヤクザ達が複数の路地から飛び出してくる!

2011-06-30 23:19:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイツは殺したが、そろそろあんたがネオサイタマにいる事実が共有されているのを前提にしたほうがいいだろうな」「無論だ」ニンジャスレイヤーは頷いた。「ザッケンナコラー!」「ザッケンナコラー!」前方からもヤクザスラング!包囲されている!

2011-06-30 23:45:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウウ……」「待て」タツマキ・スリケンの予備動作を取ろうとしたニンジャスレイヤーの肩を叩き、シルバーキーがとどめる。「クローンヤクザ相手なら、おれのジツで一気にやれる。一網打尽だ」「本当か?」「……多分だ」シルバーキーは人差し指と中指を揃えて立てた両手でこめかみを押さえる。

2011-06-30 23:49:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クローンヤクザってのはその名の通りクローンだから、脳の構造も、思考回路……ニューロンの流れ方……も同じハズなんだ、だから」「ザッケンナコラー!」「スッゾコラー!」角を曲がってクローンヤクザの集団が現れる!ナムサン!「オットット!急ぐか!」シルバーキーは眉間にシワを寄せ集中した。

2011-06-30 23:56:16