ストレイトロード:ルート140(50周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2451~2500+おまけ。リクエスト回以外のテーマは「海」。なお各話の内容につながりはありません。 主人公は風を操る少女・藍(ラン)、語り手は彼女の従者をしているおじさんゼファールです。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

日課の140文字練習の内容に悩みすぎたところで他のこととか眠気とかに気を取られて投稿し損ねたまま朝になっていた、という夢を見た。 夢でよかった。

2020-07-19 07:52:52

今回の本編

Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

探していた船は港の近くで見つかった。暗礁に乗り上げたきり何週も放置されているらしい。「そんなに難しいの?」探し物も暗礁の上と知った藍の機嫌が悪い。「手間はかかります。当局の反応次第かと」慎重に説明した。本当は金を積めばある程度は前進するが、藍が聞けば電子の札束を持ち出しかねない。

2020-06-06 18:52:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2451。暗礁。

2020-06-06 18:52:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車の後部座席で着替えていた藍が、昨日積み込んだ箱の中を覗き見て呻いた。「何この気持ち悪い生き物」「貴女の指示で用意した活き餌です」交渉相手の趣味に付き合うべく海釣りの道具一式を集めたが、一番必要なのは本人の経験だ。「根城に行く前に扱い方を覚えましょう」複雑な不満の唸りが聞こえた。

2020-06-07 19:01:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2452。活き餌。

2020-06-07 19:01:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

沖合から不穏な音が風に乗って流れてくる。海鳴りを知る漁師達は仕事道具を片付けて悪天候に備えたが、藍は岸壁を離れようとしなかった。その目を風に預けて水平線の彼方を視ている。「みんなに山の向こうへ行くよう言って」酷い空模様を想像した直後、高台と言わない理由に気づいた。悪い何かが来る。

2020-06-08 19:17:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2453。海鳴り。 風に乗って届くのは、波の崩れる音だそうで。

2020-06-08 19:17:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

その日の朝に水揚げされたばかりという海老が浅い水槽に整列していた。調理してほしいものを一匹選ぶよう言われてから、藍は座り込んで動かない。「別にかわいそうとか良くないとか思ってるわけじゃないのよ」悩みの種は個体差か。「これ、本当にすぐそこの海にいたの?あの何もいない海底のどこに?」

2020-06-09 18:58:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2454。海老。 水揚げする場所と生息地は違うことも多い。

2020-06-09 18:58:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

目印と聞いた魚の看板は、私達の車よりも長い板で出来ていた。かつて住民が釣り上げた大物を模して作ったという。「あんなの本当にいるの?」「海の魚でしたら、環境と状況によっては」育つにも釣るにも強運が必要だが。「その魚はどうなったの」「皆さんで分けたそうです」大物には度量も求められる。

2020-06-10 18:50:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2455。大物。

2020-06-10 18:50:35
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

海岸から車に戻る道中、首の後ろがやたら重かった。抱えた荷物の数は多くない。藍は私の隣を歩いているが、遊び疲れているはずなのにその足取りは充分軽く、よく聞いているとそれだけではなかった。「まだ気づかないの?」駐車場に入ってから具体的に指摘された。私の襟を掴んで吊り下がる蟹の存在を。

2020-06-11 18:50:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2456。蟹。

2020-06-11 18:50:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

船は深い霧の海を静かに進んでいく。遠くで汽笛の音が聞こえた。「別の船がいるようですね」「今のでわかるの?」窓に張りついたまま尋ねる藍へ簡単に説明した。大型の船ほど音程が低いこと。音の長短に意味があること。視界不良の中では連絡を取り合うこと。「さっきの高い音も?」あれは人の悲鳴だ。

2020-06-12 19:46:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2457。汽笛。 その使い方には様々な規則があるという。すべては安全のために。

2020-06-12 19:46:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

釣った魚を自ら調理する。藍の意気はいいが、身の臭みを取る工程に手間取っていた。レシピ通りにしても見本と同じにならないとこぼす。「でも、ここを飛ばすとおいしくならないみたい」既に失敗を経験したから慎重だったらしい。別の方法を提案すると驚かれた。「先人が確立した知恵は利用しましょう」

2020-06-13 19:06:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2458。臭み。

2020-06-13 19:06:00
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

翡翠のように輝く海面に飛び込んでみたら、想像とは全く違う景色が見えたらしい。船に上がった藍の説明は興奮が強すぎて今一つ伝わらない。「深いほどきれいな青になるかと思ったけど、違うのね」海底が暗いのは水が可視光を減衰させるから。と説明したところで藍は理解どころか関心も示さないだろう。

2020-06-14 19:30:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2459。減衰。 虹の色で言えば赤から順に失われるから、浅い海は青く見える。

2020-06-14 19:30:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

群がった子供達は藍の上着やスカートを握り、しきりに沖合いを指差した。「さっきの船が消えた」「きっと滝に落ちたんだ」「魔女の力で助けてよ」影が水平線の下に沈むのは遠くへの航行だからと、私は知識から推察できる。藍は風に頼んで確かめられる。だが彼らにとっては肉眼で認識する世界が全てだ。

2020-06-15 19:09:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2460。航行。 テーマ単語決めてから書くのが基本ですが、時々最初のイメージを見失うこともあります。

2020-06-15 19:09:13
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

平穏が戻った村を再訪した私達は、海賊紛いをやめた少年達の新しい職場を見学した。海中散歩用の足漕ぎボートを造っていると聞き、藍が早速乗りたいと言い出した。「これ太った鮫?」「よく言われる」丸い船体の上部を浮かせ、海面下を見て進むという。陸からは赤い鮫が泳いでいるようにしか見えない。

2020-06-16 19:31:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2461。鮫。 空で遊べないなら海を目指す人はきっと多い。赤くしたのはもちろん本物との区別のため。

2020-06-16 19:31:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「紫外線の浴びすぎは体によくない、常識でしょ?」無防備な白いワンピースに普段と違う髪型。強い日が差す会食の場で、藍はドレスコードと涼しさの両立させるべく、私に日傘を持たせて歩くことにした。庭園から見渡せる砂浜は昨日彼女が走り回っていた場所だ。あの時は何か気にする発言などなかった。

2020-06-17 19:29:00
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