@kawano_hirokiさんが語る産業翻訳の未来

河野弘毅さんという翻訳家の方が産業翻訳について連続ツイートしていたのでまとめてみました
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かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来1 産業翻訳においてツールに象徴される技術革新の影響は大きい。そのことは機械翻訳の台頭を考えればすぐわかる。現時点ですでに、機械翻訳される文書の量は人間翻訳される文書の量をはるかに凌駕していると指摘されている。人間翻訳はどこまで機械翻訳にとって代わるのだろうか?

2011-07-02 12:04:51
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来2 このテーマを考える場合、翻訳をインバウンドとアウトバウンドの二種類に分けて考えることが有効だと経験的にわかっている。

2011-07-02 12:07:37
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来3 インバウンドは自分が読むために訳す翻訳(外部から自分への方向なのでインバウンド)、アウトバウンドは他者に読ませるための翻訳(自分から外部への方向なのでアウトバウンド)。顧客から支払いをうけて翻訳会社や翻訳者が行う翻訳は、通常はすべてアウトバウンドの翻訳になる。

2011-07-02 12:08:33
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来4 インバウンド翻訳の場合、機械翻訳のユーザーは自己責任でサービスを利用する。大意がわかればよいという意味で翻訳品質への要求もそれなりの水準であり、機械翻訳の出力がポストエディットなしに利用される自動翻訳が開発目標となる。従来の機械翻訳開発はここを目指してきた。

2011-07-02 12:26:37
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来5 一方、アウトバウンド翻訳の場合は外国に自社製品を販売するために相手の言語に説明書を翻訳するケースを考えれば分かるように、おカネがからむので翻訳にミスがないことが求められる。

2011-07-02 12:33:09
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来6 チョムスキーが言うように言語は無限の組み合わせで原文を作り出せる。その無限の組み合わせをすべて正確に自動翻訳できる機械翻訳の手法は現在誰も思いついていないし、そんな完璧な機械翻訳技術は実現不可能だというのが専門家を含めた世界の共通了解になっている。

2011-07-02 12:36:05
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来7 少なくとも現状で優秀な人間翻訳に匹敵する品質の自動翻訳が存在しない状況でアウトバウンド翻訳に求められる品質要求をクリアする方法は、機械翻訳を翻訳支援ツールとして翻訳者が利用することであるだろう。

2011-07-02 12:37:41
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来8 すぐに思いつくのは機械翻訳の翻訳出力を人間の翻訳者がポストエディットして高い品質要求をクリアするという組み合わせ方法である。この考え方が短絡的間違いであることは後ほど説明するが、機械翻訳と人間翻訳を組み合わせて翻訳品質を上げるという意味ではわかりやすい例である。

2011-07-02 12:40:05
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来9 アウトバウンド翻訳の特徴は品質保証を要求されるということ、そこからすぐ導かれることは現在の機械翻訳では人間の支援なしにはアウトバウンド翻訳の品質要求を満たせないということ、したがって人間翻訳者の仕事がここにあること、である。

2011-07-02 17:55:19
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来10 ここで市場原理を導入する。アウトバウンド翻訳は産業として提供されるため、市場原理が機能する。要求品質(かならずしも高品質とは限らないが必ず一定の基準が存在する)の条件を満たすことを前提条件としたうえで、価格と納期の点で競争が発生する。

2011-07-02 17:57:13
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来11 そして価格・納期・品質すべての点でツールを有効に活用できる翻訳者はツールを使えない翻訳者に対して格段に有利である。これはローカリゼーション翻訳でこの十年間におきた現実であり、他の分野の翻訳にも形を変えて波及すると考えるのが自然である。

2011-07-02 19:00:43
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来12 この場合、翻訳支援ツール=機械翻訳ではないのがこれまで一般的だったが、すでにいくつも先行する製品がでてきるように今後は機械翻訳を組み込んだ翻訳支援ツールが主流になると思われる。理由は、そちらのほうが品質・納期・価格で有意にたてるから。

2011-07-02 19:02:47
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来13 しかし、そこで従来からある自動翻訳の出力をそのまま人間にポストエディットさせようとするのは、前述したとおり短絡的発想である。現在利用できる機械翻訳はすべて前述したインバウンド翻訳の目的のために開発された自動翻訳を目指すものであり、翻訳支援は目的が異なる。

2011-07-02 19:04:21
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来14 ここで最初の重要な知見に到達する。すなわち、機械翻訳で培われた技術や技法を翻訳者を支援する目的にそって配置した、いわば次世代の翻訳支援ツールはまだ登場していないということ。これからそれが登場するだろう、そこで行なわれる作業はもはや「ポストエディット」ではない。

2011-07-02 19:06:37
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来15 そこで行なわれる作業は今後はシンプルに「翻訳」と呼ばれる。そして、産業翻訳用途に限っては翻訳支援ツールを利用できない翻訳者は翻訳支援ツールを活用する翻訳者と市場で競争にならないほど劣位にあるので、多くの分野でほとんどいなくなるだろう。

2011-07-02 19:08:44
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来16 それはローカリゼーション翻訳でこの10年間に起きたことである。2011年現在、ローカリゼーション翻訳においてTradosなどの翻訳支援ツールを利用しない翻訳者にはほとんど仕事がいかない。同じことが今後の10年間で近隣する多くの産業翻訳分野で起きるだろう。

2011-07-02 19:10:17
かわの_ひろき @kawano_hiroki

産業翻訳の未来17 まとめると、アウトバウンド翻訳では機械翻訳技術を利用した次世代翻訳支援ツールを活用する翻訳者が主流となり、そこで展開されるのは一定以上の翻訳品質を前提条件としたうえで、可能な限りの短納期と低価格を目指すような市場競争である。

2011-07-02 19:14:02