アンジェラ・サイニー『科学の人種主義とたたかう』読書メモ集

アンジェラ・サイニー『科学の人種主義とたたかう――人種概念の起源から最新のゲノム科学まで』(東郷えりか訳、作品社、2020)の読書メモをまとめました。
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荒木優太 @arishima_takeo

サイニー『科学の人種主義とたたかう』84p。優生学の父・ゴルトン。ゴルトンと親しかったカール・ピアソンは、イギリスで最初の優生学教授であると同時に、統計学という学問を創設した数学者だった。優生学と統計学。重要な論点。

2020-08-03 16:23:55
荒木優太 @arishima_takeo

「アドルフ・ヒトラーの『わが闘争』はインドの書店ではベストセラーになっている」(サイニー『科学の人種主義とたたかう』91p)。へぇー。

2020-08-03 16:39:44
荒木優太 @arishima_takeo

優生学的発想の再興と「カースト」語のカジュアル化――「スクールカースト」から日本もカーストを導入せよ論(落合陽一)まで――はなんか関係してそうな気がするけど、まだうまく言葉にできない。ネオリベの一言ではあまり片付けたくない。

2020-08-03 16:45:41
荒木優太 @arishima_takeo

「グラントは話上手な人として知られていた(ニューヨークのブロンクス動物園の共同創設者の一人として、彼は一九〇六年にコンゴ人のオタ・ベンガをサル園で大型類人猿と一緒に展示するよう運動をしていた)が、彼は科学者ではなかった」(『科学の人種主義とたたかう』96p)。やばい奴きた。

2020-08-03 16:54:59
荒木優太 @arishima_takeo

『科学の人種主義とたたかう』。戦後、人種研究が爪弾きにされ査読をパスできなくなっていった結果、異端の科学者らが自分の研究を続行させるために『マンカインド・クォータリー』という雑誌を自分たちで立ち上げたそうだ。この経緯自体には正直心をくすぐるものがある。

2020-08-03 19:27:23
荒木優太 @arishima_takeo

ところで、このことに関して本を書いてるらしい心理学者のウィリアム・タッカーって、リバタリアンのベンジャミン・タッカーとなんか関係ある?

2020-08-03 19:31:05
荒木優太 @arishima_takeo

サイニー『科学の人種主義とたたかう』。半分くらい読んだ。好著だと思うが、人種科学の政治性を暴こうとするあまり「科学そのもの」への信憑がやや強くないかと感じなくもない。政治と無縁な科学などいままであり得ただろうか? 或いは、私のポストモダンが過ぎるのかもしれない。

2020-08-04 14:45:15
荒木優太 @arishima_takeo

最近の人文書はサブタイトルつけるのは当然で、しかも内容を丁寧に要約するタイプのものが増えたなと思う。好みはあろうが私個人はもっと潔く名詞二つか三つくらいのメインタイトルのみで勝負して欲しかったりする。私が柄谷行人を好むのもあのタイトルの素っ気なさに惹かれるからかも。

2020-08-04 15:16:25
荒木優太 @arishima_takeo

サリー『科学の人種主義とたたかう』p185。よい本であることを前提にした上で、著者の人種【的】科学全般を差別問題へ結ばせる筆致には説得力を感じないなと思った。(的、というのは「人種」概念を斥けているのに人々のグループ化を促している、くらいの意味合い)。

2020-08-04 22:32:17
荒木優太 @arishima_takeo

あ、サイニーさんでしたね。アンジェラ・サイニー。失礼。

2020-08-04 23:05:24
荒木優太 @arishima_takeo

「そもそも人間をグループ分けする必要があるところに問題があるのだ」。いや、必要はあるのでは。たとえば、日本では飲酒は20歳になってからだが、欧州では16歳から飲める。その背後には、アルコールを分解する酵素の有無があって、それは遺伝的な要素が強い。

2020-08-04 22:40:24
荒木優太 @arishima_takeo

勿論、日本人にだって酒豪はいるし、フランス人にだって下戸はいるだろう。ただある一群のタイプの人々が、傾向的にアルコールに強かったり(弱かったりする)という情報は、医学においてまた法整備においてしばしば重要なものになるのでは。

2020-08-04 22:43:57
荒木優太 @arishima_takeo

分けることが悪いんじゃなくて、悪い分け方をすること、または、分け方を悪く使うことが悪いのだ。私からみると、サイニーさんは社会構築主義が過ぎると思うが、どうか?

2020-08-04 22:45:17
荒木優太 @arishima_takeo

こんな本にこそ北田暁大『社会制作の方法』をぶつけるべきなのかもしれん。「属性の反本質主義は、属性を表現する術語が適用される対象についての反実在論を含意しない」。togetter.com/li/1455307

2020-08-04 22:49:55
荒木優太 @arishima_takeo

いまの英米系正義論(俗っぽくいうとPC派?)は「種の論理」(田辺元)を馬鹿にしておけば、それを乗り越えられると思っている。しかし、そう簡単に行かないだろうと私は直観する。

2020-08-04 22:56:37
荒木優太 @arishima_takeo

もう少し人種主義批判に関して。人類を複数の(または無数の)タイプに分けることそれ自体を忌避するとき、動物を種で分けることには疑問を感じないのだろうか。(挑発ではない単純な疑問である)。

2020-08-04 23:18:16
荒木優太 @arishima_takeo

動物を種で分けることには生物学的な理由があって、人類に対してはそういったものが存在しないからだろうか。この応答は私には筋が悪いように思える。なぜならば、「人種」でなくても、人類を分割する生物学的根拠が発見されれば、その扱い方の差別化をむしろ追認してしまうからだ。

2020-08-04 23:19:05
荒木優太 @arishima_takeo

そうではなく、仮に生物学的な根拠があって【も】(ここがポイント)扱いを変えてはならない、と言うべきなのではないか。

2020-08-04 23:20:21
荒木優太 @arishima_takeo

おそらく人種主義批判者は、この【も】を「生物学的根拠を前提にしている」と採るために反人種主義の弱体化を懸念するのだろうが、私から見ると【も】は防波堤なのであって、「あるかないか知らんが、守らなきゃいけないものがあるのは変わらない」という最終ラインを守っている。

2020-08-04 23:23:55
荒木優太 @arishima_takeo

備考。動物すらも種で分けることがナンセンスというラディカルな立場があるかもしれない。なぜそのような立論をしようと思ったのか、動機は不明だが、動物愛護の観点からは否定的に評価されるのでは。動物らの様々な餌や環境は、その種に適合したものであることを要求するから。

2020-08-04 23:31:01
荒木優太 @arishima_takeo

動物倫理の人間中心主義批判は、動物らを人間と同格に見る視角を拓くと同時に、人間もまた所詮は動物であるという事実にも改めて目を向けさせる。人種主義の再興や生権力の全面化などの現象はこれと裏表で読むべきなのかもしれない。

2020-08-04 23:40:03
荒木優太 @arishima_takeo

「生物学の哲学」(だっけ?)を勉強すべきなのかもしれんな。

2020-08-04 23:40:57
荒木優太 @arishima_takeo

「この道をさまよい歩くことに科学的な価値はあるのかもしれないが、それは危険をはらむことが私にはわかるし、それは血で覆われた道だ」(サイニー『科学の人種主義とたたかう』262p)。でも同じことは人種科学以外の知的営為にもいえることだからねえ。

2020-08-05 17:53:53
荒木優太 @arishima_takeo

サイニー『科学の人種主義とたたかう』読了。面白かった。渡辺靖『白人ナショナリズム』と対で読むべき作品。渡辺本が現代アメリカのアクチュアルなレポートだとしたら、サイニー本は現状に至るまでの過程を多角的な視点から要約している。

2020-08-05 19:21:04