2020-08-10のまとめ
地方自治体における不祥事と職員給与の減額 ―公務員の労働インセンティブに着目して 米岡 秀眞(山口大学) 石田 三成(東洋大学) / jcer.or.jp/jcer_download_…
2020-08-10 00:28:37実証分析の結論として、公務員が懲戒処分の対象となる職務上の義務に反した行為を犯す際には、失職しない範囲で、その行為が発覚する確率を考慮しつつ、給与水準の変化にも反応することが示される。これにより、わが国の地方公務員に関して効率賃金仮説が一般的に成立することが明らかとなった。
2020-08-10 00:28:38民間所定内給与と一般市町村の平均給与月額の推移 pic.twitter.com/3z7hQzMusP
2020-08-10 00:28:3890年代半ばから官民格差は徐々に拡がり、2000年代には一般市町村の平均給与月額が民間所定内給与を上回る状況が続いていた。しかし、11年3月11日の東日本大震災を受け、当時の民主党政権は復興財源を捻出するため、国家公務員の給与を12年度から2年間で平均7.8%減額した4。
2020-08-10 00:28:39政府は、地方公務員に対しても同様の措置を各地方自治体に求めた5。さらに、12年12月の総選挙後に自民党政権が誕生すると、政府は、地方自治体が給与減額要請に応じなくても要請に応じたものとみなし、要請した分だけ地方交付税を削減することとしたため、各地方自治体は職員給与の減額を迫られた
2020-08-10 00:28:40給与減額の措置要請に対する地方自治体の対応状況(2013年10月1日現在) pic.twitter.com/zsNXChDcDP
2020-08-10 00:28:41一般市町村全体の1699団体のうち7割程度で国と同等の給与減額が実施された一方、残りの3割程度では給与減額が実施されなかった。
2020-08-10 00:28:41都道府県では全47団体中で44団体(93.6%)、政令指定都市では全20団体中で17団体(85.0%)が給与減額を実施した状況と比較すると、一般市町村の水準は低い。
2020-08-10 00:28:42競争倍率は最も高かった1999年度の14.9倍から、近年最も低かった2015年度の6.6倍まで、おおむね高い状態で推移した。
2020-08-10 00:29:37地方公務員の給与水準が民間所定内給与よりも相対的に高い状態が続き、公務員の終身雇用という強い身分保障と合わせて、労働条件に魅力を感じる求職者が競争倍率を高めていたと考えられる。
2020-08-10 00:29:37震災後の給与減額措置にかかわらず、地方公務員の採用に関しては、数多く集まった求職者の中から雇用者側が選抜できる環境は継続されていたと推察される
2020-08-10 00:29:3811年に震災が発生してから地方公務員の給与減額措置が問題となった13年度にかけて、全職員に占める退職者比率はわずかに上昇基調にあった。全職員に占める定年退職者比率に関してはわずかに減少、全職員に占める自発的離職者比率はわずかに上昇していた。
2020-08-10 00:29:39公務員が懲戒処分の対象となる職務上の義務に反した行為を犯す際には、失職しない範囲で、その行為が発覚する確率を考慮しつつ、給与水準の変化にも反応している
2020-08-10 00:31:05ラスパイレス指数 (参考値) のみならず、行政職の給料の実額を基に推定した場合も、公務員が懲戒処分の対象となる職務上の義務に反した行為を犯す際には、失職しない範囲で給与水準の変化に反応している、という分析結果の頑健性が確認される。
2020-08-10 00:31:07(。 ・ω・)フム 本稿では定量的な実証分析により、高い公共的倫理や規律が職務の性質上求められる公務員にも、労働者として賃金水準に対するインセンティブが形成されていることを明らかにした。一般的にわが国のような先進国における政府・地方自治体は、
2020-08-10 00:31:39世界各国と比較してもクリーンなイメージが持たれがちである。その傾向は、公共経営論の分野でも指摘されるように、政府・地方自治体を支える公務員の公共的な倫理観・使命感に大きく依拠すると長らく捉えられてきた。
2020-08-10 00:31:39しかし実際には、労働経済学が想定するような賃金水準に対する労働インセンティブが公務員にも形成されており、彼らは与えられた条件 (賃金水準の低下、不正行為が発覚する確率の上昇など) を考慮しつつ、合理的な行動選択を行っているといえる。
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