夏なんでちょっとした怪談的な体験談を。

kt-21@第二副砲 @kt_21a2

今日は怪談の日らしいので一つ。 横浜のとある有名な重工ビルに入ってるオフィスの引越前準備作業って雑用めいたもんをPG/SEなのにやるはめになったと思いねえ。 内容はPCとモニターのシリアル番号をメモして管理表をこさえるとかそういう「PG/SE」の仕事じゃあねえってアレ。

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そのお仕事の一環で、別フロアのサーバー室に行って、そこにある端末のリスト化およびオフィスから廃棄端末の移動ってのをやってたんだが。 なんとこのサーバー室のロッカーにひらがなで「おまもり」って書いた白い紙包みが貼ってある。セロテープで。

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いたずらめいてたのと、雇われには関係ないってんで触らずにほっといたんだけど、誰も居ないひんやりしたサーバー室だもん、なんか気になるわな。 で、雇ってる人に聞いてみた。 「ありゃあなんですかい？」と。 その人も良く知らないらしいが、前に居た人が貼ったものらしい。

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「実はこのビルそういうの多いらしいんだよ。そのお札持ってきた人が言うには『霊道になってる』とかで」 そういう「私霊感あるんです」なのかと思いきや、実際にオフィスフロアで不可解な現象だのなんだのに遭遇する人が度々いたらしく。 「特にサーバー室に厄介なのがいるらしい」と来た。

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「で、サーバー室のそれは危険度が高いとかであのおまもりが貼られたらしい」 「本当ですかソレ」 「いや僕も分からないんだよ。知ってる人が居ないんだわ」 「でも実際本当にそういうのだったら、あんな子供のいたずらみたいにロッカーにセロテープで留めますかねえ？」 「そうなんだよねえ」

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「どうせ引っ越すんだし、その日にでも剥してみようか。貼ってあるロッカーも運び出すし」 「その時は呼んでくださいね。どうなるか見たいんで」 「え、君が剥してよ」 「えーｗ あ、でも引越当日じゃ剥しても何か起こるか分かりませんね」 「じゃ前日にでもよろしくｗ」 「えーｗ」

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で、オカルト半信半疑な僕はある日。そのロッカー内の資材チェックをやってて、ふと……やっちゃったわけだ。 白い和紙？に鉛筆のひらがなで「おまもり」って書いて何かを包んでセロハンテープで四隅をロッカーに留めてあるソレを、「てや」っと剥してみた。

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「さて中身は……」と開けてみると。 『おまもり』なんて小学生のイタズラめいた包みとは裏腹に、ちゃぁんとしたお札が入ってまして。ええ、如何にも神社とかお寺でもらえそうなやつ。 安産祈願とかそういう系のもんじゃなかったと思う。ざっと見たけどそういう交通安全とかの用途じゃない系の中身。

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「オウフ……」 丁重に戻して包んでもっかいロッカーに貼り付けて。 お仕事片付けてからオフィスフロアに戻って。 「イタズラじゃなくて本物っぽかったです」と報告。 で、大騒ぎでやれ神主だ祈祷師だ陰陽師だ。 ……が呼ばれる事もなく。 「そっかー。なんかあった？」 「何も」 「そっか」

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実際何にも起こらなかった。 ただ、その後も『サーバー室に一人で長時間な作業』が何度もあって、背中がうすら寒かったり、なんか人の気配がするような気がしたり、無人なのに変な所で物音がしたり、と。 『気のせい』で片付けられるようなものならあった。

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が、「そういうのは後ろめたさからくる疑心暗鬼で説明ついちゃうから、オカルトにしちゃよわいよなあ」って済んでた。 その後、オフィス引越当日になって。 搬出される機材と什器を見送ったのち。がらーんとしたオフィスの原状復帰に移った。

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横浜のナントカ重工ビルの九階まるまる全部を借りてるオフィスだったんで、まー広い広い。 パーティションだのロッカーだのもぜーんぶ搬出しされたぶち抜きの元オフィス。 で、そこ忘れ物が無いかチェック＆床の上だの下だのに残ってるLANケーブルの回収してまとめる作業となった。

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カーペット敷きの床板引っぺがして這いずりまわってLANケーブル回収する「これPG/SEがやるもんじゃないよね？」仕事をやってたわけなんだけど。 作業者は自分ともう一人の二人だったのね。 で、一方が時計回り、もう一方が逆時計回りでごそごそやってたわけだ。

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このオフィスフロアはドーナツ状になってて、ドーナツ部分がオフィス。真ん中の穴部分が廊下でエレベーターだのトイレだの非常階段だのになってる。 で、オフィスと廊下はドアで仕切られてる。 東から西へ移動なんかだと、その穴部分を突っ切った方が早いんで、ドア開けて移動すると開閉音が鳴る。

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つまりドアが鳴る＝誰かがフロアから出たor入った。 このオフィスはもう撤収済みで、工事業者も作業終わったから来ない。日中は見回り警備員も来ない。 俺ともう一人しか出入りしないんだけど……。 まあ、鳴るわけだね。ドアの開閉音が。

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「今の聞こえました？」 「聞こえた。誰か来たのかな？ ちょっと見てきて」 で、ぐるーっとオフィスを回って戻ってくる。 「誰か来ました？」 「いや。誰もいなかった？」 「居ませんでした」 「でもドアの音したよね？」 こんなことが、日中から日没上がり前までたびたび。

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疑心暗鬼で済ませるにゃあ二人で明確に聞いてるし、こりゃあ本物かねえ、なんて思うも実際に遭遇してないから確証取れず。 足音まで聴知したけど、姿は結局捕捉できなかったから、最終的に気のせいかなー、で終わってしまった。 ……と思われたのだが。

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この仕事が終了したあとで、体験談系の怖い話サイト見てたらさ、載ってるんだわ。このビルの話が。 ボカしてあるけど、所在地とオーナーの名前聞けば一発で「あそこじゃん」って分かるヤツが。

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そこに載ってた体験談も、まあ自分が遭遇したのに毛が生えたぐらいのもんで「子供を見た」とかそのぐらい。 それじゃ気のせいで全部済んじゃうんだが……ここでトラップカード来たね。 『開かずのブラインド』の話。

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なんでも、飛び降りだかなんだか知らないが自殺した女性社員が居て、それが化けて出るらしい。 なんで分かるのかっていうと、その化けて出るヤツが、オフィスの窓の外に血の手形をつけやがるんだそうだ。 で、拭いても拭いても出てくる（らしい）とか、とうとう本人を見ちまった奴が出たとかで。

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で、どうしようもないから、『ブラインドを下ろして閉めっきりにして見えないようにしよう』って対応が取られたって、その話は終わってた。 まあまあありがちな怖い話だよね。まとめ本とかに載ってそうなやつ。

kt-21@第二副砲 @kt_21a2

……俺が行ってたオフィスさ、一ヵ所だけずーーーーっとブラインド閉めっきりだったところがあったんだよね。 引越で什器全部運び出してパーティションなんかも全部撤去してるのに、そこだけブラインド、残ってたんだよね。 最終日までずっと閉めっきりだったんだよね。開いたの見てないんだわ。

kt-21@第二副砲 @kt_21a2

んー、あんまり怖くなかったかにゃー？ でも気づいたときは割とゾッとした。仕事してたときは「オイオイ、これはオバケ見られるんじゃねーの？」でわくわくしてたけど。 このブラインドの話を見た時は、ちょっと、ねえ。

kt-21@第二副砲 @kt_21a2

作り話がいきなりリアルになった瞬間って、あんな気がするんだろうなーって。気づかずに通り過ぎてたけど、もしかしての本物がすぐそばにいたのかもしれないって、そんなお話でした。