連作小話「幸子と悦子」
#twnovel 幸子と悦子。二人は女子大以来の親友。幸子は要領よく大手商社に入社、更には社内恋愛寿退社。悦子は就職に苦労したけど卒業間際になんとか小さな特許事務所に入った。境遇が異なってきた二人だが今日は銀座のパーラーで待ち合わせ。ひとしきりお喋りの後で幸子が切り出した。
2011-06-24 16:55:03#twnovel ねえ、私、このままだと体の良い女中さんになってしまうような気がするの。亭主は仕事仕事セブンイレブンの毎日、週末も一日は付き合いゴルフ、もう一日はぐたーっとごろ寝。会話もほとんどなくて家に居る時はテレビと新聞。結婚ってこんなことだったのかなあ。
2011-06-25 14:11:06#twnovel 何言ってるのよ、いい旦那さんじゃない。仕事熱心で上司にも受けが良くて出世間違いないわよ。そのためには多少の我慢はしなくっちゃ。あーあ、悔しいなあ。私にはどうしてそんな男が現れないのかしら。現れたら即キャッチして懸命に仕えるのになあ。
2011-06-26 08:39:45#twnovel 私も結婚前はそう思ってた。でも、結婚してみると、釣った魚に餌はやらないというか全然かまってくれなくなったのよ。なんだよ、あいつ。結局、タダ乗りセックスと女中が欲しかっただけじゃないの。そんな風に考えたら腹が立ってくるのよ。悦子みたいに独身の時が一番よかったわ。
2011-06-27 07:40:13#twnovel 三食昼寝付き主婦が贅沢言わないの。正直言って私、幸子が羨ましいのよ。震災以来、独身が心細くなったしね。思うんだけど、男は犬、女は猫ね。男は忠犬であることに誇りを持ってるのよ。幸子の旦那のように学校秀才だった男程そうね。仕事セブンイレブンの夫は幸子が選んだ宿命よ。
2011-06-28 12:30:29#twnovel 男は犬、女は猫かあ。女は忠義を尽くすより環境に順応して楽しむ方を選ぶもんね。これ、いい。頂き。亭主に言ってやろう、この忠犬ハチ公め、いつかは会社から捨てられるのに、それに気づかない馬鹿野郎。でも、鼻でせせら笑うだけだろうなあ。つまんない。浮気しちゃおうかな。
2011-06-29 08:14:32#twnovel はは、出来るもんならやってみな。幸子はさあ、保守派なのよ。だから、旦那も安全牌を選んだ。こうなることを分かっていて結婚したのよ。社内結婚なのだから結婚後にどんな生活が待っているか見えてた筈よ。今頃になってどうのこうのいうのは愚痴ではなくてのろけでしょ。
2011-06-30 07:39:36#twnovel キツイなあ。のろけでも自慢でもなくてほんとに悩んでいるのよ。退屈で息が詰まりそうなの。どうしたらいい?子供でもと思うけど亭主が嫌がるの。こんな時代に子供を作ったらかえって可哀想だとかなんとかいうのよ。それより自分たちのリッチな生活を楽しもうなんてね。
2011-07-01 08:01:57#twnovel そんなの無視して作っちゃえ作っちゃえ。男なんて何にもわからないんだから生む生まないは女の勝手でいいのよ。子供ができたら旦那も変わるかもしれないよ。子煩悩になって幸子のこともかまってくれたりして。子は親のかすがい。世の中の夫婦の大半はこどもでつながっているでしょ。
2011-07-02 07:08:05#twnovel そうだよねえ、経済的に苦しい訳でもないから生めばいいんだよねえ。そうと決めたら、早くしないといけないなあ。近頃ご無沙汰になりつつあるのよ。いい子を作るためにも早い方がいいね。よし、今夜の料理にはたっぷりにんにくと肉だ。ありがとう、悦子。持つべきものは親友だわ。
2011-07-03 15:14:09#twnovel 幸子と別れて携帯を開いた悦子、妻子持ちの彼からの「今夜逢える」メール。「こいつ、犬ではない男なのはいいけどズルイんだよ。出口のない関係を三年、もういい加減にしたいのだけどそれが出来ない私。幸せな幸子が羨ましい」そう思いながらも逢い引き場所に急ぐ悦子だった。 了
2011-07-04 07:40:46