- poli_pro_info
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「作家は経験したことしか書けない」にはちょっと複雑な思いが。人間の想像力を舐めるな、は前提なんだけど、想像力も有限なので、経験の蓄積はスタート地点としては悪くない。一方、「経験してなんぼ」みたいな価値観へのバックラッシュとして、安楽椅子偏重や経験拒否が発生するのももったいなくて。
2020-08-14 03:50:55そして問題をややこしくするのは、想像やシミュレーションの積み重ねは、実はこれもまた紛れもない「経験」であって、その意味においては、実際に経験したことしか書けなくて、少なくとも経験と想像は深層において繋がってて、だからややこしいと思うんだ。
2020-08-14 03:54:18しばしば旅に出る理由として、「視野を狭めるため」と答えることが多くてそれは事実でもあるんだけど、この複雑さを説明するのが面倒というのも。もっと言うと経験には想像力を広げるやつと狭めるやつとがあって、前者は選択肢が増え、後者は悪いようでいて相対化の罠から逃れる鍵にもなる。
2020-08-14 04:10:53「作家は経験したことしか書けないか」という議論には、「当事者性」の問題も関わっている気がする。たとえば実在の事件や災害を創作の中で扱ったとして、「リアリティがない」「この扱い方は不謹慎ではないか」という意見が「でも作った人は当事者ですよ」という一言で萎むのを何度も目にしてきた。
2020-08-14 13:39:34当事者が切実な思いで届けた生の声だからセーフ、という考え方にずっと引っかかっている。それは当事者ではない人の思考を否定する要素を孕んでいるからだ。そして一創作者としては「当事者ならセーフ」「経験者が作ったものならアリ」と言われたとき、それは創作の敗北であると感じている。
2020-08-14 13:40:19『貘の耳たぶ』で子どもの取り違えの話を書いたとき、私が二児の母であるという現実にフォーカスして作品を語られることが多く、その悔しさを胸に『カインは言わなかった』で表現者の当事者性の問題を書いた。だけど、このツイートも「悔しさを覚えた経験者だ」という主張に繋がってしまうのが歯痒い。
2020-08-14 13:41:51もちろん当事者が声を上げること、どこまでが経験なのかと想像する読み方を否定する意図はまったくない。むしろそれを想定して『火のないところに煙は』というホラーも書いている。なのでこのツイートは、あくまでも創作者としての矜恃の話です。経験の有無などを吹き飛ばす力を持った作品が書きたい。
2020-08-14 14:00:06「経験」についての宮内悠介さんの考え方、めちゃくちゃ腑に落ちる! 経験が想像力を狭めうるということはかなり強く感じていて、この遮断性について以前から考え続けてきたのだけど、なるほど「相対化の罠から逃れる鍵」か……もっと考え続けていきたいと思います。 twitter.com/chocolatechnic…
2020-08-14 14:10:33「作家は経験したことしか書けない」と言われても「じゃあ経験って何だろう」という話になるわけです。例えば私が人を殴り殺したとして、それで殺人のすべてを書けるのか。毒殺は書ける? 殺してないけど思いきり殴る行為は? 「経験した」「だから書ける」と言えるのはどこまで?
2020-08-14 15:06:08自分が誰かを撲殺するより毒殺犯の手記とか読み漁った方がよっぽど「毒殺の経験」をしているのでは? 毒殺もののミステリを山ほど読んだらこれも「経験」では? 「実体験」は極めて限定された範囲に絞られ、ちょっと条件が違うとまるで違う「経験」になるので、実体験だけでは何も書けないことになる。
2020-08-14 15:15:31しかも同じ「実体験」をしても、残るのはその「記憶」なので、体験者の感じかた覚え方、脳内での再現の仕方によって、同じ事象でも全く違う「実体験」が生まれてしまう。つまり究極の話、我々の「経験」というのは脳内で変換処理済の妄想なのである。記憶だって常に自分に都合よく改竄されている。
2020-08-14 15:19:28となると「自分が経験したこと」=「実体験」とその他の「経験」=「疑似体験」を区別して前者にだけ特権を与えるような考え方が間違いだということは当然の結論になる。われわれの「実体験」は、本質的にはすべて「疑似体験」なのだ。
2020-08-14 15:28:39だが経験の種類によって「疑似体験」の資料の多寡には大きな差がある。他の経験から想像しやすいかどうかの差もある。出産や入院は難しいかも。殺人も難しいだろうが読み手側にも経験者が少ないのでハッタリがきく。読み手側も関係してくるとなると今度は「書ける/書けない」とは? の話にもなる。
2020-08-14 15:39:29「作家は経験したことしか書けない」というのは「命のやりとりをしたことがあるやつは顔つきが違う」だの「母になった女は強い」だのと同じ、特定の経験に神秘的な効能を求める「経験信仰」の派生形なのでは、という気がする。(※画像は『喧嘩稼業』9巻/木多康昭) pic.twitter.com/UtkxgAqp5I
2020-08-14 16:05:53作家は経験したことしか書けないか、って……そうそう、作家も大変なのですよ(笑)。「館」シリーズもAnotherも。「殺人鬼」も、2作とも大変でした、経験。
2020-08-14 17:52:37冗談はさておき、経験しておあたほうが書きやすいこと、というのはもちろん、ありますよね。でも逆に、経験してしまったから書けなくなること、というのもたくさんあって、当然ながらこれ、一概にはまったく答えられない問題です。
2020-08-14 17:57:10「作家は経験したことしか書けない」論、確実なのはそういうこと言える人は作家の言うことなんか聞かないだろうし金出して本買って読んでくれることもないだろうから無視してよい。
2020-08-13 20:59:32ひょっとして本を読まない人(意外と多い)って、他人は自分が知らないことを知ってるし想像もしないことを想像できるって考えられないのかしら。だから人は本を読むし映画を観るのに。想像できなきゃ知らないとすら考えられない?……(こわい考えになった)
2020-08-13 21:46:09ちょっと席離れて戻ってきたら「作家は体験したことしか書けない」TLになってた。 もとの文脈がわかんないんだが、字面だけ読めば「あ、そのとおりっス」だよね。 たいていの音楽が12音だけを使って書かれているように、たいていの小説は作者のみすぼらしい経験の裡にとどまる。俺のもそうだよ。
2020-08-13 22:21:14そういう絶望と諦めでえんえん原稿用紙を埋めていって千枚とか二千枚に一か所くらいの割合で砂金の小さい粒が見つかるかもしれん。自分も他人もいまだかつて観たことも聴いたこともないものが。
2020-08-13 22:37:31どれだけ取材しどれだけ妄想を羽ばたかせても(むしろそれゆえに)「自分というお釈迦様の手」から逃れられない存在。
2020-08-13 22:43:58