「戦争体験の継承」について考えるために。『「知覧」の誕生 特攻の記憶はいかに創られてきたのか』(柏書房)感想。

2015年に刊行された、「感情移入の聖地」鹿児島県知覧の成立を追った、福間良明・山口誠編『「知覧」の誕生 特攻の記憶はいかに創られてきたのか』(柏書房)。現在話題になっている「戦争体験の継承」の可能性・危険性両面を考えるための、極めて重要な論点が提示された本だと思いますので、当時の自分の感想ツイートをまとめてみました。
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座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

帰路また本屋をさまよい、気になっていた新刊を買ってしまう。目黒考二『昭和残影ー父のこと』(KADOKAWA)、福間良明他『「知覧」の誕生ー特攻の記憶はいかに創られてきたのか』(柏書房)、宇田智子『本屋になりたいーこの島の本を売る』(ちくまプリマー新書)。どれもサブタイが効いてる。

2015-06-28 00:20:18
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

積読だった福間良明・山口誠編『 「知覧」の誕生~特攻の記憶はいかに創られてき たのか』(柏書房)をやっと読む。大変面白い、というより考えさせられる本。他の戦跡と異なる「感情移入」の戦跡としての知覧。知覧の聖地化のプロセスと構造を浮かび上がらせる、多方面からの論考群。(続)

2015-08-13 00:23:28
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)福間良明・山口誠編「知覧の誕生」。俺は知覧については足立巻一を経由し高木俊朗「特攻基地知覧」(角川文庫)で多くを知ったのだが、知覧の聖地化の進行とともに、高木が知覧を巡るオーセンティックな語りの座から排除されていったことを、本書の福間や山本昭宏の論文で初めて知った。(続)

2015-08-13 00:43:56
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)「知覧の誕生」。「知覧」が自己啓発と結合する時代の背景を探る、井上義和「記憶の継承から遺志の継承へ~知覧巡礼の活入れ効果に注目して」は歴史認識の脱文脈化と内面の技術化を経て浮かび上がる「遺志の継承」へ焦点を当てるが「純粋贈与」概念迄持ち出す説明は面白いが些かやり過ぎ(続)

2015-08-13 01:18:56
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)「知覧の誕生」。佐藤彰宣『「戦闘機」への執着~ミリタリー・ファンの成立と戦記雑誌の変容』。雑誌『丸』が創刊当初の総合誌から戦記雑誌→軍事雑誌へと云う変容の中で、教養主義の没落を受け、純粋なメカニックファンが乖離し析出される過程を追っており、メディア史として面白い(続)

2015-08-13 01:27:42
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)「知覧の誕生」。編者の1人、山口誠は、あとがきで、戦争の記憶の「共有」「継承」の段階は過ぎ、今や「戦争の記憶の復元」の時代が到来している、それは独自の真正性や価値を生む可能性もある(大意)と。うーむ、そこまでポジティブに語れるのだろうか。しかし状況認識には完全に同意(続)

2015-08-13 01:50:57
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)・・その意味では、特攻隊員をホタルとみなす語りを受け作られた私設の「ホタル館」に、新たな再帰的・協働的アウラの発動を読み取る山口誠『「知覧」の真正性〜「ホタル」化する特攻と「わかりやすい戦跡』は、実は本書「知覧の誕生」中で最も鋭く、恐ろしさを秘めた論文なのかも知れない

2015-08-13 01:57:41
リンク www.kashiwashobo.co.jp 「知覧」の誕生―特攻の記憶はいかに創られてきたのか柏書房株式会社 「知覧」の誕生―特攻の記憶はいかに創られてきたのか(一般書/単行本/社会/)の書籍紹介。特攻=知覧が出来上がるプロセスすべて明らかに!年間数十万人が訪れる「特攻の聖地」 知覧。そのイメージの形成を、メディア・観光政策・ジェンダーなどの視点から考察した、まったく新しい戦後論。知覧を問うこと、それは戦後70年の“今”を考えることである。 19