@yu_hirano の「鉛色の風に吹かれて」

Togetter - タグ「yu_hirano」のTwitterまとめ http://togetter.com/t/yuhirano ロフトプロジェクト(LOFT PROJECT, 新宿ロフト, 下北沢SHELTER, ロフトプラスワン, ネイキッドロフト, 阿佐ヶ谷Loft A, Rooftop) http://www.loft-prj.co.jp/ 続きを読む
1
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー1 「私、6月11日父と一緒に鎌倉の脱原発デモに参加したんですよ。お父さんさすがに照れていました。40年ぶりのデモだって」大学を卒業したばかりの23歳の、はち切れん若さを振りまきながら彼女は言った。「そうか?それは良かった」私は言葉少なめに答える。

2011-07-05 23:15:18
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー2「それを平野さんに報告したくって・・・」下北沢の老舗ジャズバー・レディジェーン。キャノンボールアダレイのアナログ盤から「マーシー・マーシー・マーシー」の軽く暑いリズムが流れ、彼女はブランディのお湯割りを頼んだ。

2011-07-05 23:17:29
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー3 2年ほど前愛嬌で世界一周航海船「ピースボート」に乗った。横浜からインド洋エジプトからスエズ運河を経て大西洋に、それから又パナマ運河を渡って太平洋に。私たちを乗せた船はイースター島に。私はいつもの席で刻々と変化する南太平洋の海と空を眺めていたんだ。

2011-07-05 23:20:04
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー4「平野さん、私に学生運動の事教えて下さい?」という声が聞こえ、ふっと上を見ると今まで会ったこともない若い女性がノートを持って私のテーブルの前に立っていた。「えっ何それ?」「昨夜の平野さんが開いた船内討論会「全共闘世代vs若者世代」に私参加したんです。

2011-07-05 23:21:48
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー5「実は私の父は平野さんと同じ年代で、安田講堂に籠城して逮捕されているんです」「それは凄いな。」 「私、父とはあまりうまくいっていません。でも父の青春時代の事聞きたいんですけど、あの頃の学生運動のこと知らなくって」「それはきっとお父さん喜ぶと思うな」

2011-07-05 23:26:18
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー6 「それで君は自分の父親と新しい関係を築きたいと・・」「父は今大学の先生をやっています」「そうか?」こんなやりとりがあって私は船内の図書館で見つけた「バリケードに賭けた青春」(橋本克彦著(大宅賞作家)~日大芸闘委の記録)を読むように彼女に勧めた。

2011-07-05 23:29:13
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー7 明日にも船はイースター島に着く。この島も不思議な運命に翻弄され続けた島だ。イースター島から押し寄せてくる魔か不思議な波動(オーラ?)を受けながら私は彼女に「何故、俺達は身体を張って運動をしたのか」を時間をかけて説明した。船上は充分な時間はある。

2011-07-05 23:31:41
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー8彼女の極めつけの質問は「何故、それほどまで高揚した運動が最後は無残な内ゲバ殺人を繰り返す羽目になったのか?」という質問だった。この辺から私の答えはしどろもどろになって行く。いつものことだ。「でもさ、私は自分の青春を愛している。悔いはない」と答える。

2011-07-05 23:37:20
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー9「僕らの世代の一つ上の世代はあの戦争で原爆を二つも落とされ日本を破滅に追いやった世代だ。僕らの親の世代だ。僕らの主張はあんたら世代は早くステージから去れ!って言う運動だったのかも知れない。俺達若者が主人公だ」って叫んでいた気がする。

2011-07-05 23:40:45
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー10」「旧体制が支配していて、社会は矛盾だらけだった。若者はそれに反逆し、結果多くの新しい文化が生まれた」「それが何故」「そうだな、自然発生的に生まれた運動に新左翼諸党派が入り込んで来た。マルクス主義をひっさげて。そして権力に追い詰められ自滅した」

2011-07-05 23:43:51
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー11「私、ちょっと前まで石巻にいたんです。そして明日から又行きます。これで3回目です。私、平野さんと会わなかったら多分この震災も他人事だっただろうし、親の若き日を知ろうとも思わなかったと思います。だから感謝しているんです」ブランディのお湯割りを飲む彼女

2011-07-05 23:45:43
平野悠 @yu_hirano

<鉛色の風に吹かれて>そのー12(終回)タバコの煙が薄暗い空間でスウイングしていた。マイルスストーンだ。レディジェーン店主の大木雄高がテーブルまでやって来た。「今さ、俺はこの子に俺の青春を伝えようと・・・」「お嬢さんこのインチキ男に騙されてはいけません」と大木は軽口を叩き笑った。

2011-07-05 23:54:18