掌小説語り~自作つぃのべる集~59

自作つぃのべるのまとめです。 2018年3月分。
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リュカ @ryuka511

君が、居るから、この世界を守ろうと思えた。理不尽だらけの、どうしようもない世界だけど、君がいるから希望が見えた。僕の力は君の為だけにある。だから、君が理不尽に奪われた今、僕は戦う理由を失った。いや、戦う相手が変わったのだ。君を奪った理不尽な世界を、破壊する。 #twnovel

2018-03-01 00:31:59
リュカ @ryuka511

子供は私を興味深げに見つめていた。「私を見ても脅えない子供は初めてだ」嬉しくなって背に乗るよう促す。「寂しかったの?」子供に問われ頷いた。「誰も私の話を聞こうとせず勝手に子供を置き去りにしていく。今じゃ皆で楽しく暮らしているよ」「良かった。あの村にはいたくなかったんだ」 #twnovel

2018-03-02 00:38:10
リュカ @ryuka511

もしも、あの日に戻れたら、俺が全力で君を守り世界も救って英雄になっていただろう。だが過去は変えられない。君は失われ、世界を救ったのは他の奴だった。君のいない世界が平穏でも、俺には何の価値もない。世界を救える程のこの力にも #twnovel 壊す価値もない世界だが、持て余した力を虚しく振るう

2018-03-03 01:11:18
リュカ @ryuka511

今日も派手な鎧と、装飾過多で非実用的な剣で戦う。罪人や孤児などを集め戦わせるコロシアム。鎧の中に蠢く絶望を抱え剣を振るう。いっそ負けて死ねれば楽だろうに、皮肉にも自分は強かった。死ねないのなら、観覧席に飛び込んで、自分達の殺し合いに金を賭ける連中こそを、殺してやろうか #twnovel

2018-03-04 00:02:32
リュカ @ryuka511

竜の緑色の瞳を見つめる。美しく澄んだ瞳だった。あんな暗黒の目的の為に、竜の力を利用してはならない。少女は竜を戒めている鎖に剣を突き立て断ち切った。「私と逃げましょう」少女の真摯な瞳に竜は静かに頷いた。逃げる竜と少女を兵士が追う。少女は竜を、竜は少女を守ると誓い大空へ舞う #twnovel

2018-03-05 00:16:33
リュカ @ryuka511

君の髪をビーズと花冠で飾って、これは君がお姫様だっていう証拠だよって言ったら、君は嬉しそうに「ならあなたは王子様ね」って笑ってくれた。何にもないスラムで、精一杯用意した君への贈り物。姫にも王子にもなれない僕らは、プラスチックのビーズとしおれかけた花で、せめてもの夢を見る #twnovel

2018-03-06 00:33:22
リュカ @ryuka511

このままでは世界は腐りきってしまう。深海の都で見えた未来を変えるべく、愛用の槍を手に各地を旅して、神託を聞く。人々の生活を知る。そうして導き出した結論、世界を腐敗から救うには、やはりこれしかないのだろう。この槍を選んだのは間違いじゃなかった。破滅の槍よ、世界を無にせよ #twnovel

2018-03-07 00:43:31
リュカ @ryuka511

夜の水温が火照った肌に心地よい。人魚の少女は、揺蕩う海面に身体を浮かせ夜空を見つめていた。初めての経験に気持ちが昂ぶっている。どうしてあんな行動に出たのか、自分で自分が分からなかった。ただ、愛ゆえにやった事であるのは間違いない #twnovel 凶器のナイフは彼女の手を離れ夜の海に沈んだ。

2018-03-08 00:00:11
リュカ @ryuka511

拾った子供に吸血鬼は言い放つ。「お前をここに置いている事に理由もなければ愛もない」衝撃を受けた子供の顔から目を逸らし更に続けた。「いつでも出て行っていいぞ」異種族の子に情を寄せるのは互いにとって良くない、そう決意して言ったのに。「追い出す理由もないなら、ここにいる」 #twnovel

2018-03-09 00:53:57
リュカ @ryuka511

私は貴方が生まれた時に、貴方の世話係としてこの家に来ました。ずっと貴方の成長を見守ってきました。貴方が大人になっていく事は、私にとって喜びであり、寂しさもありました。いずれ貴方は私の下を離れていく。私がもし『ヒト』だったなら、貴方は私を生涯の伴侶に選んでくれたでしょうか #twnovel

2018-03-10 00:02:50
リュカ @ryuka511

あなたの最期の言葉を実行するのは、とても辛く苦しい事だった。私を想うゆえの言葉だというのは、痛い程に分かっている。だが私には耐えられない。もう無理だ、やめよう、そう思う度にあなたのあの時の顔と声が脳裏に鮮明に蘇って、私を苦しめる。どうしてあなたは、私に「生きて」だなんて #twnovel

2018-03-11 01:22:20
リュカ @ryuka511

街の灯が燈る夜に安堵の息を漏らす。大惨事に見舞われた日の暗く寒い夜は、思い出したくもない恐怖として刻まれている。この灯を燈し続けなければ。まだ完全ではないから。もっと大きな灯を、もっと多くの地へ人へ。思い出したくもない、だが、忘れるわけにはいかないから。 #twnovel

2018-03-12 00:58:38
リュカ @ryuka511

君の無垢な笑顔は本当に美しかった。この笑顔を守るためなら、僕は何だってできると思った。君の笑顔を曇らせる輩を消していく。何も知らずに笑う君が見たいがために僕は今日も手を汚します。これを愛と呼んだら君は迷惑でしょう。だから密かに。この自己満足はいずれ断罪される。それまでは #twnovel

2018-03-13 00:52:59
リュカ @ryuka511

王国の学者達は長く続く戦を終わらせるべく研究を重ねていた。そしてついに、人間の力を遥かに超える戦闘用人造人間の開発した。力には更に圧倒的な力を。これにより諸国の均衡は崩れ、王国が大陸の覇権を握ったかに思えた。人造人間は誰にも制御できず、戦が終わっても破壊と殺戮を続けた #twnovel

2018-03-14 01:35:42
リュカ @ryuka511

「初恋は実らない」なんて誰が言い出したのだろう。その言葉に怖気づいて、告白しないまま卒業してしまった。数十年後に同窓会で再会して、「あの頃はあなたが好きだった」なんて言われても、あの恋はお互いに過去のもので。「初恋は実らない」なんて誰かの呪いなんだ、きっと。 #twnvday #twnovel

2018-03-15 01:15:12
リュカ @ryuka511

戦争も犯罪もなくなり、飢える事も寒さに震える事もなくなった。楽しく学校へ通い暖かな家の中で、優しい家族と美味しい食事を楽しむ日々。清潔なお風呂と温かな寝床に潜り込む。それは、世界の終わりの前に見る、長くて幸せな、夢。 #twnovel #世界もう滅ぼしたい協会

2018-03-16 00:39:33
リュカ @ryuka511

一人ぼっちの夏の夜。もう旅も歌うのもやめて街に定住し、安定した職を見つけようとも考えた。だが手放そうとした竪琴が「それでいいのか」と問いかけてくる。いや、それはただの未練だ。歌う事しかしてこなかった奴が今更何を。不安定な暮らしも孤独も、好きな事をして生きる代償なんだから #twnovel

2018-03-17 01:23:52
リュカ @ryuka511

魔女の呪いで言葉を亡くした歌姫は、声だけで歌い人々の賞賛を浴びた。怒り狂った魔女に声も奪われたが、今度は竪琴を奏で人々を惹きつける。次に魔女は歌姫の腕を狙う。歌姫は魔女を憐れんだ。嫉妬し自分から何かを奪っても、自ら何かを得ようとしない限り、魔女の心は満たされないのに #twnovel

2018-03-18 01:24:29
リュカ @ryuka511

珍しく不安げな旦那様に、厳かな声で告げる。「これは旦那様、不治の病の始まりです」「何だと?治らんのか!?」「治らないから不治の病なのです」内心げんなりしながら旦那様を宥める。横暴な旦那様、少しはいい薬になったのではないでしょうか。このまま本当の事は言わない方がよいでしょうね #twnovel

2018-03-19 01:11:59
リュカ @ryuka511

人魚の少女は岩場で夜明け前の海を眺めていた。わたしが泡になる、その時には、あなたはどこかで幸せにしていてね。ナイフを捨て海に飛び込もうとした時。「本当に君は消えてしまうの?」なぜあなたがここに?「礼を言いたくて」あなたの優しさは残酷ね。捨てたナイフを拾いたくなるじゃない #twnovel

2018-03-19 23:50:09
リュカ @ryuka511

「ご機嫌よう、自称学者諸君」迷路のような墳墓の最奥、朽ち果てた王の骸がゆらりと立ち上がった。「我が墓を荒らす諸君らの探究心に敬意を表し、特別に探索許可を与えよう」王は恐慌状態の学者を見据え、顎をカタカタ鳴らし笑う。「但し、諸君らの得たものが世界に知れ渡る事は無いだろう」 #twnovel

2018-03-21 01:50:24
リュカ @ryuka511

雨は嫌いだ。帰って来ない奴を待ち続けた日々を思い出すから。あいつを待ち続けた間、あの街の雨は止むことを知らないように降り続けた。思えばあの雨は、帰れなかったあいつの涙だったのだろう。人が生きているはずのない時が過ぎて、ようやく諦めがついた。あいつのいない世界を断つ覚悟も #twnovel

2018-03-22 01:04:32
リュカ @ryuka511

お前を伴侶に迎えた時、種族と寿命の境界がある事を理解し覚悟していたはずだった。だが、いざその時を迎えるとどうしようもなく苦しい。これから一人きりで、どうやって生きるのか。いずれ新しい伴侶を迎えるのだろうか。それでも構わない。お前が私の後を追わずに生きていてくれるなら #twnovel

2018-03-23 00:34:30
リュカ @ryuka511

カーテンの隙間から、ちらりと見えた君の横顔に安堵する。不治の病を患い君は一方的に別れを告げたけど、僕は受け入れていない。突然会いに行ったら迷惑だろうけど、僕が来た事だけでも伝えたい。ポストに手紙を入れてたら玄関から声がした。「あの子のお友達?良かったらお線香あげて行って」 #twnovel

2018-03-24 00:53:35
リュカ @ryuka511

ずっと欲しかったものを手に入れたのに、虚しい。手に入れようとがむしゃらに活動していた時の方が、明らかに充実していた。だがもう、これ以上のものを手に入れるのは不可能だ。世界は私の手で滅びた。僅かに残ったのは私を崇拝する配下だけ。退屈だ。魔王とは勇者ありきの存在なのだと知る #twnovel

2018-03-25 00:13:10