韓国の第3次武侠小説ブームとウェブ武侠漫画

日本語で読める韓国のウェブ漫画のうち、一大ジャンルをなしているのが武侠モノである。代表的なものに『天涯峡路(てんがいかいじ)』や『華山転生(かざんてんせい)』がある。どちらも韓国の「新武侠小説」をコミカライズしたものである。 武侠小説は中華圏がその発祥地だが、それが韓国ではどのように受容されていったのか。韓国の小説家、批評家のソン・ジサン氏が語ってくださいました。【2020年9月7日】 (ソン・ジサン氏の著書内の武侠小説年表について、日本語で概略を説明しています。これについては事前にソン・ジサン氏にOKをもらっています) (武侠の「侠」は本来「俠」ですが、このまとめでは基本的に「侠」で代用しました)
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ジョー猫 @korenkan

@Colorless_Ideas 未知のジャンルには入門書がほしいですよね。最近、全然ハングル分からないのに韓国ウェブトゥーンについて調べていたのですが、機械翻訳では限界があり、効率も良くないなと。ちゃんと調べるなら、現地の言葉が分からないと厳しいなと痛感しています。

2020-09-05 21:55:32
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@korenkan 韓国のウェブトゥーンについては日本語も堪能な韓国の漫画評論家(『シグルイ』論で評論賞受賞)、小説家翻訳家ソン・ジサンさんが語りたがっていたような。こちらのまとめ togetter.com/li/1554543 でマサルさんについて日本語で語っている方です。

2020-09-05 22:08:23
ジョー猫 @korenkan

@Colorless_Ideas なるほど、ありがとうございます! ちなみにいま知りたいのは、韓国の武侠モノがどういう変化と発展を遂げ、中国本国とはどういった違いが出ているのか、だったりします。問題意識がだいぶぼんやりしているので、人には聞きにくいですね……。

2020-09-05 22:12:39
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@korenkan まさにそれを論じた評論書を、ソンさんが今年初めに刊行してます! > 韓国の武侠モノがどういう変化と発展を遂げ、中国本国とはどういった違いが出ているのか ただ私も入手したんですがハングルはすらすら読めるわけでもなくて……。 twitter.com/colorless_idea… twitter.com/Colorless_Idea…

2020-09-05 22:19:45
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

韓国の批評家、ソン・ジサン(손지상)氏のサブカルチャー文学論『サブカルチャー系を旅するヒッチハイカーのためのガイド』(2020年1月) 日本の伝奇小説の流れ(講談速記本から新伝綺、TYPE-MOONまで)や新本格ミステリ、武侠小説などについて広汎に語られている。 pic.twitter.com/K8AQqkpNKz

2020-07-21 12:57:57
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

韓国の批評家、ソン・ジサン(손지상)氏のサブカルチャー文学論『サブカルチャー系を旅するヒッチハイカーのためのガイド』(2020年1月) 日本の伝奇小説の流れ(講談速記本から新伝綺、TYPE-MOONまで)や新本格ミステリ、武侠小説などについて広汎に語られている。 pic.twitter.com/K8AQqkpNKz

2020-07-21 12:57:57
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@korenkan @Colorless_Ideas いきなり失礼します、ソンジサンと申します。恐縮です!お役に立てるかどうか心配ですけど、何か気になる所がおありでしたら、気楽に聞いてください。

2020-09-06 13:21:28
リンク sfwuk.org ソン・ジサン (손지상) : 韓国SF作家連帯会員リスト 父が軍人のため、16歳まで全国を引っ越しながら過ごした。本が好きだったが、頻繁な引っ越しのため、着実に交流する友達も、蔵書も少なかった。数少ない蔵書も皆ノンフィクションや人文書だけだった。初めて読んだSFは児童小説用の縮約版のエドガー・ライス・バロウズの「火星のプリンセス」、アイザック・アシモフの「鋼鉄都市」、ロバート・ハインラインの「超人部隊(Gulf)」であった。 2005年心理学で大学に入ったとき、ある先輩に「考えに論理の骨組みだけあって、感情の肉がない」という忠告を聞いて小説を読み始め、

ソン・ジサン氏による「日韓武侠小説ブーム年表」

ソン・ジサン氏の文芸批評書『サブカルチャー系を旅するヒッチハイカーのためのガイド』(2020年1月/未邦訳)より

손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan はい、確かにそうです。その中の小説の年表ですが、韓国と日本の比較をしています。 内容は、韓国の場合: 1次ブーム:香港と台湾の翻訳モノ 2次ブーム:その影響の創作武侠モノと金庸の大大ヒット(旧武侠) 3次ブーム:武侠映画の再ヒットとPC通信を普及による新武侠 に分けられます pic.twitter.com/L7RWNL8e7L

2020-09-06 14:00:23
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出典:ソン・ジサン,<サブカルチャー系を旅するヒッチハイカーのためのガイド>
韓日武侠小説ブーム年表(ワークライフ、2020年)

韓国ネット書店アラジン リンク

【年表の見方】

  • 1行目、左側「韓国」、右側「日本」

  • 2行目、「ブーム時期」「内容」「年度」//「内容」「ブーム時期」

  • 左端列(韓国での武侠小説ブーム時期)には上から順に「1次ブーム」「2次ブーム」「3次ブーム」と書かれている

  • 右端列(日本でのブーム時期)には「なし」と書かれている

下記の「年表の概要」では、本まとめ作成者が作品の中国語原題など必要な情報を補いました。要約の仕方を含め、誤りがあれば本まとめ作成者の責任です。

【年表の概要・韓国側】
1次ブーム(1960年代半ば~)

  • 中国・河南省出身の小説家、臥龍生(がりょうせい、1930~1997)が台湾の新聞に連載した武侠小説『玉釵盟(ぎょくさいめい)』(1960-63)が『群侠誌(ぐんきょうし)』のタイトルで韓国語訳される。
  • 以来、翻訳武侠小説が大量に出版される。

2次ブーム(1970年代末~)

  • 1979年、韓国の乙齊上人(筆名。本名は諸説あり)が〈台湾の武侠小説の翻訳〉という体裁で、武侠小説『八萬四千剣法』を刊行。以来、韓国作家による武侠小説が盛んに。
  • 1986年には香港の小説家、金庸(きん よう、1924~2018)の武侠小説『射鵰英雄伝(しゃちょうえいゆうでん)』(1957-59)が『小説英雄門』のタイトルで韓国語訳される。以来、金庸作品の翻訳出版が続く。

3次ブーム(1990年代初頭~2005年?)

  • 1992年、香港の同年の武侠映画『東方不敗』(邦題『スウォーズマン 女神伝説の章』/中国語原題『笑傲江湖II 東方不敗』)が韓国で公開される。
  • 1994・1995年頃よりPC通信上で新武侠小説の創作発表が活性化。

【年表の概要・日本側】
1996年 金庸の武侠小説の初の日本語訳、『書剣恩仇録(しょけんおんきゅうろく)』(1955-56)刊行。
2004年 金庸武俠小説集(全55巻)完結

ジョー猫 @korenkan

@Colorless_Ideas @doskharaas ソンさん、ありがとうございます! いまスマホのGoogle翻訳で断片的に読んでいます。

2020-09-06 14:09:46
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@doskharaas @korenkan これはすごい……。ありがとうございます。この年表はそういえば前に見ました。日本は確かに目立つ動きが金庸ぐらいしかないんですよね(古龍も少しは訳されていますが)。韓国オリジナルの創作武侠小説と新武侠小説が気になります。

2020-09-06 14:06:46
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan 因みに中華圏では大陸の1910ー1930年代の武侠を旧派もしくは旧武侠と云います。 例えば、還珠楼主の『蜀山劍俠傳』、後に ユン・ピョウの映画「蜀山奇傅 天空の剣(蜀山 新蜀山劍俠)(1983)、とかです。1960年代に始まった韓国には影響が無かった状況から、そして韓国では三国志の人気が異常(続き)

2020-09-06 14:11:21
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan だった土台から、日本で言うと戦国武将伝記+超人の伝奇極道浪人成り上がり+オリエンタルファンタジーの感じで大量生産されました。それは、旧派とはだいぶ違うモノでした。当時独裁政権の社会状況で自由なピカレスクロマンとして受け入れましたね。そして金庸古龍が完全支配します(続き)

2020-09-06 14:16:02
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan それで中華圏では新派の筈の金庸が韓国ではクラシックでカノンの旧武侠と云われてます。そしてそれのアンチテーゼとして、まさに1970年代の日本の劇画ムーブメントや健さん極道映画に対する仁義なき戦い似た変化が出ました。それがPC通信とインターネットを基盤としたx世代の新武侠となりました。

2020-09-06 14:18:58
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@doskharaas @korenkan 韓国の武侠小説が年表で「1次ブーム」「2次ブーム」「3次ブーム」に分かれている一方、日本での武侠小説ブームの欄が「なし」なのが悲しい(苦笑

2020-09-06 14:09:59
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan 韓国ではそれが全く知られておらず、武侠はアジア共通だと勝手に思い込んでます

2020-09-06 14:20:05
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@doskharaas @korenkan そうなんですね。日本の私からすると、韓国のネット書店でジャンル小説情報を探していたときにミステリー恋愛小説と並んで「武侠」があって、そんなに大きなジャンルなのかと驚きました。

2020-09-06 14:22:22
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@Colorless_Ideas @korenkan ミステリーより何倍も大きいかもしれません。

2020-09-06 14:23:30
Dokuta 松川良宏 @Colorless_Ideas

@doskharaas @korenkan 韓国での武侠小説の歴史について、とても詳しい説明をありがとうございます! 古龍については今ちょうど質問しようと思っていたところでした。日本では武侠小説といえば金庸古龍ですが、年表の韓国のほうにも古龍の名前がないのでなぜなのかなと。でも普通に韓国でも金庸と並ぶ人気作家なんですね。

2020-09-06 14:25:05
ジョー猫 @korenkan

韓国の出版界ではミステリよりも武侠のほうが市場規模が大きいという話、なかなか衝撃的だ……。

2020-09-06 14:25:31
ジョー猫 @korenkan

韓国の武侠作品事情、すごく面白い。

2020-09-06 14:30:00

韓国「新武侠小説」とは?(基本の基本のみ)

bookroad @bookroad1

@doskharaas @korenkan それは『中国拳法』を登場人物が使うのですか。テコンドーの方ですか

2020-09-06 14:50:13
손지상(孫 志尚, Son Ji-Sang) @doskharaas

@bookroad1 @korenkan 当然中国拳法で主人公を含む登場人物殆どが中国人です。

2020-09-06 15:14:57
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