近世剣術・剣道の突き技と胴技について

江戸時代後期~幕末の資料をみていると、 「胴打ちや突き技は実戦では使えない」 とする記述が散見されます。 そのあたりの話について。
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神道無念に突き技と胴技が無かった話(神道無念流剣術免許弁解より 久喜市史資料編(近世2)p176〜217)

みんみんぜみ @inuchochin

(神道無念流に突きと胴技が無い理由)突きと胴は決して真剣では無い技である。証拠として沼津小野順造という人(戸賀崎先生免許の人)が他流の人に「神道無念流はなぜ突きと胴が無いのだ?」と聞かれて「突きと胴は簡単で小手面は甚だ難しいので、小手と面を修行するのだ」と答えた。(続く

2016-05-16 12:38:56
みんみんぜみ @inuchochin

戸賀崎先生(神道無念流家元)がこれを聞き及び、小野氏を呼びだして言うには「突と胴技は真剣では出来ない。胴と突は学んでも無駄であるので当流では学ばないと答えるべきであったぞ。その証拠に徳川の世になり赤穂義士四十七士が吉良邸に押し入った際、敵は皆素肌であったが

2020-09-15 21:22:37
みんみんぜみ @inuchochin

敵はみな、唯一人も突かれたものもなく、胴を切られたものもいない。 また浪士が桜田門で井伊候を討った際の話だ。井伊家の日下部某というもの千葉周作の高弟で突胴を得意とし十八・九歳ですでに有名な人だった。浪士も敵ながらあっぱれな腕だ、と言って討ち取ったほどの抜群の働きをした。(続く

2020-09-15 21:31:18
みんみんぜみ @inuchochin

浪士もこの日下部某に討ちとられた人、切られた人がいるが一人も突かれた者はなく、胴を切られた者もいない。 これは最近の話で知っているものも多いであろう。つまり突きと胴は真剣勝負ではありえない証拠である。」 と叱った。小野氏は失言を悔いて心得違を謝罪したそうだ。(続く

2016-05-16 12:44:02
みんみんぜみ @inuchochin

また別の話であるが、私の先生が語るに桜田門の際の浪士一人が肥後候に預けられている時に語った襲撃の話によると「私もいよいよ助からない。ここは胴を切り討ち死にしてやる」と思い、敵が上段に構えて打ち込んで来た際に「ここだ!」と思い胴を切るつもりで打ったところ、(続く

2016-05-16 12:44:38
みんみんぜみ @inuchochin

(胴ではなく)敵の小手を切り落とし、頭に切りつけ勝った。実戦ではどれだけ必死に斬り込んでも胴など切れるものではない、また刀の柄を長くすると柄で自分の胸を突いて息が苦しくなることがあるので柄は長くしてはいけない、と語ったそうだ。(終わり

2016-05-16 12:45:30
みんみんぜみ @inuchochin

神道無念流で突や胴を使わない、という話で、突きや胴を稽古しない理由として、戸賀崎先生が 「赤穂浪士や桜田門で胴や突で負傷した者はいない」 と言ってるけど、秘伝8月号の神風連の乱の記事でも胴が無く、突も全体の9%というのを見ると、実際そうだったんだろうな。 twitter.com/inuchochin/sta…

2020-09-12 10:19:21
みんみんぜみ @inuchochin

秘伝の記事はこちらです。 twitter.com/syutoyoshikaze…

2020-09-12 10:19:59
酒徒吉風 @syutoyoshikaze

というわけで買ってきました。『月刊秘伝』8月号、拙稿「ラストサムライたちの太刀筋」どうぞよろしくお願いいたします。少しおどろおどろしい刀創(かたなきず)の図ですが、大変貴重な資料の紹介となっています。 #月刊秘伝 #神風連 #剣術 #明治維新 pic.twitter.com/8CeVRecR3M

2020-07-14 22:04:07
NicholasP(@NP氏) @NicholasP_NPC

@inuchochin ウチの流派の言い伝えでも、幕末の道場稽古時代は胴打ちを得意としていた人が、西南戦争の抜刀隊として従軍したとき、実戦で胴がどうしても狙えず、維新後は剣風を改めたという言い伝えがあります。 幕末~明治頃の試合稽古を行う流派でも、胴を狙わないとする流派は実際いくつかあったようですね。

2020-09-12 13:17:34
みんみんぜみ @inuchochin

こちらの記事に大石神影流の剣士の写真が載ってました。たしかにこれくらい柄が長いと桜田門を襲撃した浪士が語るように乱戦の中、自分の胸を柄で突いてもおかしくなさそう。 「道標」高鍋藩大石神影流師範 石井寿吉について 1 kanoukan.blog78.fc2.com/blog-entry-491… pic.twitter.com/JyZhbAbJQX

2020-09-14 23:22:41
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剣道における柄の話

橙。 @orange_kinoko

羽賀純一が左手で竹刀の柄頭を握る理由として、竹刀の柄の長さでは自分の胸腹を突いて危険だからだ、と説いてるけど、その教えの源流はこの辺りにあるのかもしれない。胴垂付けた稽古では、柄で胸を突いて危険、という教えはピンと来ない所がありますからね。 twitter.com/inuchochin/sta…

2020-09-15 00:14:54
橙。 @orange_kinoko

ついでに、羽賀先生は中山博道先生の弟子筋なので、柄頭で腹を突かないようにという教えは、神道無念流から由来するというは流れとしてはとても納得がいきます(他流にもあるかもしれないでしょうが)

2020-09-15 00:18:26

胴技と他の技の関係について

神変自源流・一ノ割道場 @URIwyMPRKcAignq

胴が実戦で使いにくいというのはよく分かりますが、突きはちょっと別の話な気がします。 もともと突きって一対一では大変有効な技術なんですが、一方で繊細すぎて多人数相手であったり乱戦向きではないんですよね。 逆にじっくり一騎打ちするならこれほど有効な手はないくらいです。

2020-09-12 19:36:37
神変自源流・一ノ割道場 @URIwyMPRKcAignq

だから色々な流派で突きの技法って基礎だけ教えて、ちゃんと学ぶのはかなり奥だったりするのかなとか。 なので戦では突きってあまりないのは自然で、それ以外はそれなりに使ってたのでは。江戸以前、実戦派の突きの名手の逸話は多いですしね。 ちなみに胴打ちはもともと腕狙いだったんじゃないかしら。

2020-09-12 19:36:38
みんみんぜみ @inuchochin

「胴打ちが元々は腕狙い」というのは非常に非常に同意です。 これに関しては、ニ流派の同流他派の実技や伝書を比較してみてそういう結論を得た事があり、他にも同じような変化をしてる流派は多そうです。 あとは脇下の切払いも胴打ちになりそうです。 twitter.com/URIwyMPRKcAign…

2020-09-12 20:41:58
神変自源流・一ノ割道場 @URIwyMPRKcAignq

@inuchochin ありがとうございます! 脇下の切り払いはありそうですね。 うちは組太刀のなかに、入り身ですれ違いざまに膝のあたりを切り払うものがあり、次の段階では同じ動作で脇下を狙う形になります。 初級と中級、間を取れば胴になり、また防具で守られたところを安全に打つようにしても胴になりますね。

2020-09-12 21:02:00
みんみんぜみ @inuchochin

@URIwyMPRKcAignq 変な言い方ですが、太刀の軌道や体捌きはだいたい同じで、間合いやタイミングを変えると変わったりしますよね。空手や中国武術の形が、同じ動きで打撃や投げ技や関節技に変化するみたいな。

2020-09-13 21:58:34
神変自源流・一ノ割道場 @URIwyMPRKcAignq

@inuchochin そうそう、そんな感じで。そのあたりの変化を最大公約数的にまとめたのが所謂「胴打ち」なのかなあと。 本来の用法、ないしは形稽古では〇〇を狙うけど、竹刀稽古では防具もあって怪我もないし深く入り込む練習になるから、あえて胴打てよ、という教えが元々なのかもしれません。

2020-09-13 22:16:57

突きと胴技を工夫した大石進

みんみんぜみ @inuchochin

近世剣術の突き技と胴技、色々な流派で実戦では使えないとされていたり、試合で禁止されたりするのが史料にあります。 江戸に衝撃をあたえた、長竹刀で有名な大石進は「刀の切先は突くもの、胴は切るべきもの、なのに剣術では突かず切らない。これはおかしい」と言ってます kanoukan.web.fc2.com/oishi/kata/ind…

2020-09-15 01:27:47
みんみんぜみ @inuchochin

はるばる土佐から大石進に入門して、土佐に大石神影流を伝えた樋口真吉も、元々修行していた無外流に突きが無いことを不満に思っていたので、実際に突きを使う流派は多くなかったのではないかと思います。(どうも小野派一刀流は突いていたようですが) jstage.jst.go.jp/article/budo/4…

2020-09-15 01:32:48

突き技に関する個人的見解