欧米における社会統合とその排除の原理

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マンドリル @mandrill_terror

マンドリルに生まれ変わった元人間。テロリズムについて勉強している。絵も描く。現在Vの沼にはまっている。

マンドリル @mandrill_terror

「このサブシディアリティ原則は、一方で家族や教会、結社といった下位の社会集団の問題解決能力を重視し、当該集団の自治と自律を尊重する。そして他方で、国会の役割を、当該社会集団において解決できない問題が生じた場合にのみ援助を与えることに限定する。この社会集団を基本に置く発想が、

2020-03-18 22:14:21
マンドリル @mandrill_terror

個人を重視する自由主義とも、また国家の役割を重視する社会主義のあり方とも異なるのは明らかだろう。」 (水島治郎「反転する福祉国家 オランダモデルの光と影」岩波現代文庫p18) オランダの社会構造の説明。

2020-03-18 22:14:21
マンドリル @mandrill_terror

キリスト教民主主義が強い大陸型福祉国家であるオランダは、家父長制的家族制度に基づいた、ある一面において「寛容な」社会保障制度が充実している。 また、上記の原則により、社会の各集団による自治がなされ、多くの人を包摂する。 ケペルがこれを「天蓋型」と呼んだのを思い出す。

2020-03-18 22:14:21
マンドリル @mandrill_terror

「就労することが家庭や個人の妨げとなるのではなく、むしろーたとえば就労と育児・介護や勉学との両立といった形でー各人の希望の実現を支援する方向に働くのであれば、すなわち、就労が人々のライフチャンスの拡大を支えるのであれば、「働くこと」は魅力を持って多くの人をひきつけるだろう。

2020-03-18 23:05:26
マンドリル @mandrill_terror

より多くの人が参加することで、福祉国家を「持続可能」にするための仕掛けをさまざまな段階に備えていこうというのが、オランダの雇用・福祉改革の特徴なのである。」 (同p49) 非常に魅力的なものに思える 各人の事情や志向に合わせて、さまざまな働き方、労働時間を選べるようにして欲しいものだ

2020-03-18 23:05:26
マンドリル @mandrill_terror

「そして非典型労働者の「正規化」を進めたオランダの状況は、日本のような、正規労働者/非正規労働者間の分断と後者の増大、ワーキング・プアの出現、「派遣切り」など、非正規労働者をめぐる問題が「格差社会」と結びついて深刻化している状況とは、かなり対照的である。オランダでは、

2020-03-19 00:11:46
マンドリル @mandrill_terror

非典型労働者を含む就業者の多数に幅広く雇用の安定を保障して網をかけることで、労働者間の分断やワーキング・プアの増大を抑止し、格差の拡大を防ぐことに一定程度成功しているといえる。」 (同p85) オランダは非典型労働者が多いにも関わらず、OECD加盟国の中では格差の少ない国となっている。

2020-03-19 00:11:46
マンドリル @mandrill_terror

その背景として、正規、非正規労働者間の待遇差別を規制し、労働者のライフスタイルやその時々の都合に応じて労働時間を伸縮できる制度が確立していることがある。 日本の労働環境とは本当に対照的に思える。 もちろん、日本の労働文化的な背景があることは確かだが、問題は現にそこにある…。

2020-03-19 00:11:47
マンドリル @mandrill_terror

「オランダでは、フルタイムからパートタイムへの移行はもはや「片道切符」ではなく乗り降り自由の「往復切符」のようなものであって、フルタイムへの復帰も権利として認められる。この仕組みのもとでは、「仕事か家庭か」の二者択一を迫られる必要はない。」 (同p93) やはり魅力的に思える。

2020-03-19 00:25:02
マンドリル @mandrill_terror

「このことを踏まえると、近年の労働時間の自由な選択を認める改革は、公的な育児支援が不足している状況で、労働者の自己責任のもとでこそだを行うことを奨励している、とみる解釈も可能である。特に女性労働者が子育てと就労の両立を図るためには、「自分の選択」として労働時間を短縮し、

2020-03-19 00:44:38
マンドリル @mandrill_terror

子育てに時間を割くことが必要となるわけである。大陸ヨーロッパ諸国の持つ一種の「保守性」が、現在の改革の背景にあることは否定できない。その意味では、保守主義の色を引き摺った「ポスト保守主義型福祉国家」が出現しつつある、といえるかもしれない。」 (同p102)

2020-03-19 00:44:38
マンドリル @mandrill_terror

「子育ては女性がするもの」という根強い保守的な価値観は、女性の正規就労を妨げてきた。 そこから妥協的に生まれたのが、この非正規労働の正規化であり、保守的な価値観を引きずりつつの改革であるとも言える。 しかし、段階的にであれ、変化しないよりはマシであろう。 差別の再生産には注意だが。

2020-03-19 00:44:39
マンドリル @mandrill_terror

「労働時間の「自由な選択」を広げても、雇用をめぐる男女間の格差を解消する方向に向かうとは限らない。労働形態や労働時間をめぐる「多様性」を保障することが、実は現実の不平等を固定化することと紙一重であることは、オランダの改革をみるうえで忘れてはならない観点だろう。」 (同p107)

2020-03-19 00:58:40
マンドリル @mandrill_terror

上述の通り。 存在する不平等に最適化された制度ともなりかねない危険は常に存在する。 これは別に対策が必要だろう。

2020-03-19 00:58:41
マンドリル @mandrill_terror

「中村達也は、二〇〇七年におけるOECD主要国の労働時間や、労働時間あたりの生産性などを比較したうえで、就業者一人あたりの労働時間が短いほど労働生産性が高いこと、特に年間一三九二時間と平均労働時間が短いオランダにおいて、

2020-03-19 01:08:13
マンドリル @mandrill_terror

労働生産性(就業者の一労働時間あたりのGDP生産額)が五三・四ドルと最も高いことを指摘している。日本は前者が一七八五時間、後者が三七・二ドルであったことと比べれば、その差は一目瞭然であろう。労働時間を短縮し、しかも多様な就業形態を可能としてワーク・ライフ・バランスを保障することは、

2020-03-19 01:08:13
マンドリル @mandrill_terror

労働者のライフチャンスを拡大し、生活満足度を高めるばかりか、労働生産性の向上とも両立するのであって、経済的な効率性をむしろ高める効果をもたらすのである。」 (同p108) 日蘭の単純比較はできないが、それでも説得的な差のある数字である。 そして、直感的にも理解しやすい。 長時間労働は悪…

2020-03-19 01:08:13
マンドリル @mandrill_terror

「ここで注意すべきは、フォルタインは人種差別・民族差別的な主張に基づきイスラム移民を排撃するのではなく、あくまで西洋啓蒙こ伝統に由来する普遍的な価値観を援用して「遅れた」イスラムを批判する、という論法をとっていることである。」 (同p130)

2020-03-19 10:10:22
マンドリル @mandrill_terror

旧来の右派・左派政党の接近と、移民の統合の失敗が、元労働党でその党首と確執のあったフォルタインの極右政党の躍進を許した。 そのロジックはいわゆる「現代レイシズム」と呼ばれるものに近い。 当然、これらの主張にはイスラームの側からも多くの反論が出ているし、あまりに大雑把なものである。

2020-03-19 10:10:22
マンドリル @mandrill_terror

「既成政党や組織利益と関係が薄く、既成政治に対する批判が強い反面、生活環境の維持を重視して治安の強化や移民への一定の厳しい対応も求める、都市部の新中間層の志向を反映していたともいえる。実際、二〇〇一年中の有権者調査データによると、

2020-03-19 10:29:34
マンドリル @mandrill_terror

「すみよいオランダ」の支持者には中道なし左派と位置づける人が多かった反面、所得水準はむしろ高めであり、「重視する政策課題」のトップは犯罪・治安対策であった(略)。また特に男性、若年層に支持者が多かったことも特徴である。」 (同p142)

2020-03-19 10:29:34
マンドリル @mandrill_terror

極右と上述したが、伝統的なそれとは違い、新右翼的な側面が強く、また特定のイデオロギーというよりはポピュリズムに近い内実である、と。 男性若年層からの支持が強いのはうなずける話。 確かにオランダの治安問題はある程度顕著であったが、その対策として彼らの主張する施策は本当に有効か…?

2020-03-19 10:29:35
マンドリル @mandrill_terror

「しかしその変化は諸刃の剣でもある。従来の「常識」を破り、移民問題を堂々と語るフォルタイン人気に圧迫され、それ以後の選挙戦では既成政党の側も移民制限・治安強化などを訴えるのが当然のようになっている。オランダの新聞はリベラルな傾向が強く、

2020-03-19 12:46:14
マンドリル @mandrill_terror

フォルタイン暗殺前には彼に対する批判的論調が強かったが、暗殺後、フォルタイン批判を行ってきた既成政治家やマスコミにも彼の死に対する責任があるという主張が強まる。「弾丸は左回りから来た」というのである。」 (同p164ふ)

2020-03-19 12:46:14