茂木健一郎さんの「言葉の置かれた文脈」

脳科学者・茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの7月9日の連続ツイート+α  自分たちを「立派」だと思っている人たちの誇らしげな自負ほど、今の時代の中でふるぼけてくすんで見えるのは、ぼくだけの感覚かな。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(1)言葉が置かれた文脈、のようなものがある。ある言葉が、どんなかたちで私たちのまわりに存在して、そして流通するか。小学生の時、ガリ版刷りで学級通信をつくり、何十枚も同じ言葉たちが生まれたとき、それまで経験したことのない「文脈」がそこにあるような気がした。

2011-07-09 14:03:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(2)初めて自分の本が出たとき、うれしくて、紙の本をなでまわした。自分が書いた言葉たちが、きれいに並んで、ぴかぴか光っている。本屋を回って、実際に置かれているのを確かめたりした。あの頃は、純粋に、そんなことがうれしく、そして心を動かされた。

2011-07-09 14:05:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(3)時代は移って、昨日パリの街を歩きながら、ふと、「ぼくは何でこの連続ツイートというものを始めてしまったのだろう」と考えた。それで、はっとわかった。連続ツイートの言葉たちが、ぼくが今知る言葉の文脈の中で、もっともいきいきとしているという事実に気付いたのだ。

2011-07-09 14:06:47
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(4)約1000字強の言葉たちが、9個のツイートに分かれてみなさんの間を流れていく。言葉の列たちが、あるいはRTされ、感想をいただき、さらに多くの言葉たちを生み出す。そんな流れに、私が生み出す言葉たちの中で、もっともいきいきした文脈を楽しんでいると気付いた。

2011-07-09 14:09:04
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(5)しばらく前から、ぼくは疑問に思っていた。なぜ、新聞や雑誌の人たちは、記事のテクストデータをウェブに載せないか。もはや、紙媒体は檜舞台とは感じられない。なぜなら、それはよどんでいるから。くすんでいるから。デジタルの海に投げ出されて、始めて活動する。

2011-07-09 14:10:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(6)一時期、自分が雑誌や新聞に書いた文章のテクストをウェブ上に載せることにヤッキになった。そうしないと、言葉たちが窒息するような気がしたからだ。今では急性期も過ぎ、こうして毎日みなさんに届ける連続ツイートの言葉たちが、もっとも風を受けてくれるように思う。

2011-07-09 14:12:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(7)友人たちと、カフェで過ごすその言葉たちは、その場で消えてしまうし、ぼくたちの記憶はあまりにも曖昧で、やがて頼りなくなってしまうけれども、それでも、言葉の置かれている文脈としては、あまりにも愛しく、そして生命の根幹に近くて。

2011-07-09 14:13:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(8)総合雑誌の論文だとか、大学の紀要だとか、学会誌とか、新聞の論壇だとか、従来立派だと思われていた言葉の文脈が、くすんで見える。自分たちを「立派」だと思っている人たちの誇らしげな自負ほど、今の時代の中でふるぼけてくすんで見えるのは、ぼくだけの感覚かな。

2011-07-09 14:15:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

言脈(9)言葉たちも、思い切り生きてみたいんじゃないかな。開く必要がある。つながる必要がある。クラウドの持ち主の下、保護された現場だとしても、ツイッターのような現場の方を、権威主義や商業主義の現場よりも、ぼくは信じてみたいように感じている。だから、ここにいる。

2011-07-09 14:16:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「言葉の置かれた文脈」についての連続ツイートでした。

2011-07-09 14:17:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

今日の連ツイに関係してなんだけどね、たとえば朝日新聞の「文芸時評」、「論壇時評」は、文化部の看板でそこに取り上げられることが権威のように思っているのかもしれないけど、だからこそネットに載せて、誰でも読めるようにすべきだと思う。今のままじゃくすむばかりだよ。

2011-07-09 14:33:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

あと、新聞の書評も、字数が決まった「枡目書き」の形式をいつまで続ける気なんだろう? 書評委員って、案外自分たちがどの本を取り上げるかを世間が気にしていると思っていろいろ議論するけど、作品としての書評を真剣に考えないと、市役所の広報誌みたいなものになっちゃうよ。

2011-07-09 14:34:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

一つ確信していることがあって、朝日新聞の文芸時評を始めたのは夏目漱石だったけれど、今彼がいたら、間違いなくネット上で自分の小説を連載する。東京帝大教授の虚名よりも、当時のベンチャー企業だった朝日新聞に入社して広く文章を問うことを選んだ彼だったら、絶対にそうする!

2011-07-09 14:36:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

だからさ、不思議なんだよね。権威だとか、意味があると自負している人たちに限って、ネットへの対応が遅いことが。時代はどんどん流れて、言葉を囲む文脈も変化するのにね。こうやって取り残されていくんだなあ。

2011-07-09 14:37:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

Turing testの論文もこうしてネット上にあることで http://t.co/3KTnTc4 誰でも読めるし、若い世代もインスパイアする。大学紀要なんか、ネットに載せないで何の意味があるんだろう? 同人誌?

2011-07-09 14:41:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

まさに! @Uske_S ということは、正岡子規もネットで句評しているかもしれませんね。

2011-07-09 14:42:31
茂木健一郎 @kenichiromogi

まさに! @sakitamax ジョン・レノンが「ベートーベンがいま生きてたら、きっとロックンロールをやっていただろう」って言ってました。時代に合った方法というのは常に変わるのでしょう。

2011-07-09 14:49:13