「宇宙」という言葉の起源についての考察(近現代編)

金木犀さんの「宇宙」という言葉の起源についての考察( http://togetter.com/li/90338)の続き。古代中国で生まれた「宇宙」という言葉が、近代になって「space」「universe」「cosmos」の訳語として使われるようになったのがいつ頃なのか、古い英和・和英辞典を元に考察してみました。
10
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

英和で初めて「宇宙」と訳されたのは、universeが1967、cosmos、cosmicが1889か? spaceが英和において単独で「宇宙」と訳されたのは戦後、しかも宇宙開発が始まってからの可能性が高い。雑誌・新聞要調査。

2011-07-04 20:48:11
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

【予告】深夜の文学講座、近日開講予定。今回のネタは、「宇宙」の語源考察(近現代編)です。明治時代以降の英和辞典を使ってuniverse、space、cosmosが「宇宙」と訳出された時期を考察します。

2011-07-04 21:28:06
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

「宇宙」という言葉の起源についての考察(近代編)始めます。

2011-07-04 23:27:06
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

予習用:熟語としての「宇宙」の起源についてのまとめ>金木犀さんの「宇宙」という言葉の起源についての考察(http://bit.ly/eZ8zEX

2011-07-04 23:27:19
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

半年ほど前に「宇宙」という言葉が古代中国の『荘子』か『淮南子』起源であることと、その意味が「世界・この世」でありtime & spaceの概念を含むことをつらつら述べた。予習用に上げたtogetterは(http://bit.ly/eZ8zEX)それをまとめて下さったものだ。

2011-07-04 23:27:39
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

今回は、その時残った、「宇宙」が現代的な意味で使われるようになったのはいつごろかという疑問に一つの答えを与えていきたい。

2011-07-04 23:27:47
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

使うのは主に明治時代以降の英和・和英字典。字書類においてuniverse・space・cosmosに「宇宙」の訳語が宛てられるのがいつなのかを調べることによって、現代的な意味での「宇宙」が定着していったのがいつ頃なのかを考えていく。

2011-07-04 23:27:56
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

まず、調査結果をまとめた資料を示す。(twitpicです) http://twitpic.com/5l4607

2011-07-04 23:28:26
拡大
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

上から順番に解説していく。まずはUniverseだ。これは、1869年(明治2)出版の『英華字彙』で既に宇宙の語が宛てられている。

2011-07-04 23:28:38
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

『英華字彙』は英中辞典であるWilliamsの『英華韻府歴階』(1844年)の翻訳なので、Universe=宇宙というのは、中国から輸入された語彙であると考えてほぼ間違いないだろう。

2011-07-04 23:28:53
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

今回調べた中で『英華字彙』よりも古いモノは1814年(文化11)の『諳厄利亜語林大成(あんげりあごたいせい)』のみだが、これにuniverseは掲載されていない。

2011-07-04 23:29:13
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

ただし、『英華字彙』における「宇宙」は、現代的な意味での宇宙ではないようだ。「十方」と合わせて掲載されているので、今で言う「世界・この世」と近い。これは『荘子』『淮南子』から変化していない。

2011-07-04 23:29:20
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

他書でも「あらゆるもの・天地万物」などとされており、こちらも現在の「宇宙」からはやや隔たった意味だ。ただし、universeの本来の意味を考えると、『英華字彙』他は非常に適切な翻訳であるといえよう。

2011-07-04 23:29:26
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

次に、Spaceだ。結論から言うと、これは第二次世界大戦後まで「celestial space」という成語にしか「宇宙」の訳が与えられていないようである。

2011-07-04 23:29:58
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

宇宙=spaceという図式が成り立っている昨今だが、結果を見ると元々「celestial space」だったものが省略されて「space」となったと考えられなくもない。

2011-07-04 23:30:01
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

最後にCosmosだ。これは明治初年の辞書には収録されていない言葉で、管見の限り1886年(明治19)の『和英語林集成(3版丸善版)』が初出のようだ。ここでは「世界」の語が宛てられている。その3年後、1889年の『明治英和辞典』では既に「宇宙」が宛てられている。

2011-07-04 23:30:08
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

調べた限り、Universe>Cosmos>Spaceの順で「宇宙」の語が宛てられていったと思われる。現在「宇宙」といえば大抵"space"と訳されるが、この例は戦前の辞書では見つからず、"celestial space"に「宇宙」が宛てられる。

2011-07-04 23:31:00
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

つまり、現在最も一般的である「宇宙=space」の構図が出来上がったのは、第二次世界大戦後という、かなり最近の出来事ではないかと思われる。

2011-07-04 23:31:03
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

おまけ:英和辞典で「宇宙」を調べると、1872年の『和英語林集成』(2版)で初めて「universe」の訳語が与えられている。

2011-07-04 23:33:03
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

以上、現代的な意味の「宇宙」という言葉が誕生したのはいつかという考察、おわり。質問を待ちます。

2011-07-04 23:33:47
A(C) @a_kakko_c

space=空白だからなー。空は広いけど、ものすごいがらんどうだとは、イメージが結びつかないってことかな QT @kin_mokusei: つまり、現在最も一般的である「宇宙=space」の構図が出来上がったのは、第二次世界大戦後という、かなり最近の出来事ではないかと思われる。

2011-07-04 23:37:07
金木犀@火箭迷 @kin_mokusei

@a_kakko_c そうですね。空白・空間から意味が広げられていったのだと思います。

2011-07-04 23:41:33
ギネスP @Guinness_P

@kin_mokusei 大変興味深く読みました、ありがとうございました。表の中では「cosmos→堪與○宇宙ノ理」という表現に目が止まりました。そこに「理」がある、というとらえ方に。

2011-07-05 00:12:55
原宣一 @nharajaxa

@kin_mokusei  「宇宙」の文字は千字文の最初の8文字に出てきます。

2011-07-05 01:36:35