限定公開でまとめを作れば、相互フォローやフォロワー限定でまとめを共有できます!

玉手箱 高田課長発案 水澤純単著

7月10日のラジオでいただいたお題を書いてみました。 そして、トゥギャりました^^v
小説
1529view 1コメント
このまとめをお気に入りにして応援しよう!
0
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p 単著 玉手箱 タイトル未定 高田課長発案 水澤純著 流します。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ta_pそれは一瞬のできごとだった。目の前を通り過ぎる看護師を避けようと、一歩後ろに下がったときワゴンに触れてしまった。カチャンと微かだが音がした。「誰だ!」途端に教授の叱責が飛ぶ。「すみません」「邪魔だ!出て行け!」言い訳する時間も与えられずに、堀野は手術室から追い出された。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p堀野は二年目の研修医だ。中学生のときに亡くなった父の意志を継いで外科医になった。ストレートで国立大学の医学部に入学、主席で卒業。国家試験も当然のこと一度で合格した。臨床に出てからは、在学中から師事していた高田教授のもとで、拡張型心筋症のバチスタ術の指導を受けていた。 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p亡くなった父も特発性拡張型心筋症だった。手術を受けたが手の施しようがなく、そのまま帰らぬ人となった。その時の悔しさを忘れることができず、堀野は心臓外科を志した。今日の手術もその一例でどうしても見ておきたい手術だった。それを自分の落ち度で手術室から放り出されてしまった。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_pもともと高田教授は神経質で気難しいところがある。下手をすると二度と手術の見学に立ち会えなくなってしまうかもしれない。どんなことをしてでも許してもらわなければならない。焦る気持ちを必死に抑えて、堀野は高田が手術を終えて出てくるのを、自動ドアの前でひたすら待っていた。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p三時間ほど過ぎたころ、ようやく手術室のランプが消えた。自動ドアの向こうに高田の姿を探す。これから病理検査室で家族に手術の成果と、切り取った心筋について説明するはずだが、その前にどうしても一言謝りたい。堀野は待っている間、何度もシミュレーションした言葉をもう一度呟いた。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_「高田教授!」ドアの隙間から姿が見えた瞬間に、堀野は呼びかけていた。「教授、先ほどはすみませんでした!」深々と頭を下げて謝る堀野に一瞥もくれずに、高田は通り過ぎていく。「待ってください! お願いします!」必死に呼びかけるの堀野を振り向きもせず、高田は冷たく言い放った。 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「君には失望したよ。私の教室から出て行ってくれたまえ」まさかここまで言われるとは思っていなかった堀野は愕然とした。ほんの小さな音だった。それも悪気があってしたわけではない。不可抗力だったのだ。それなのに……。「……申し訳ありません……どうか……」謝罪する声が震える。 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_pしかし、高田は無言のまま、その場を立ち去ろうとした。堀野は、足元が崩れていくような絶望感に襲われた。教室を追い出されたら、今までの努力が全て泡と消える。父の意志を継ぐことも、父と同じ病気で苦しむ人を助けることもできなくなってしまう。どうすればいいのか?  
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
去っていく高田の後ろ姿を呆然と見つめていたが、ハッと我に返ると、後を追って駆け出した。「高田教授!」叫びながら駆けよる。高田は全く無視してそのままエレベーターへと向かっている。乗ってしまったら終わりだと、必死に腕を伸ばして高田の白衣を掴んだ。「失礼だな、君は」
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p眉間にしわを寄せて睨みつける高田を、縋るように見つめて堀野は哀願した。「お願いです。どうか……」「なんだね?」「どうか、許してください! 僕は、どうしても心臓外科医になりたいんです!」「手術中に雑音を発するような無神経な君には、向いていないと思うがね」
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「でも、でも、なりたい……ならなければいけないんです! お願いです! 何でもします! ですから、どうか許してください」涙を浮かべ必死に謝る堀野を見つめて、高田はふっと、胸の奥に情欲の火が灯るのを感じた。背はあまり変わらないが、華奢な身体つきをしている。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p色は白く、細身の眉に茶色がかかった瞳。通った鼻筋の先に、男性とは思えない桜色の薄い唇とそこから覗く白い歯。よく見ると、何もかもが高田の好みだった。高田はごくりと唾を飲み込むと、堀野の顎に指をかけて訊いた。「何でもするというのは本当かね?」
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p高田の瞳の奥に、昏く揺らめく焔を見たような気がして、堀野は一瞬戦いたが、意を決したようにうなずいた。「私はこれから患者の家族にオペの説明をしなければならない。それが終わったら行くから、部屋で待っていなさい」堀野の顎から指を離すと、高田はエレベーターの中へと消えた。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p訊かれたことの意味はよくわからなかったが、何かの形で謝罪をすれば許してもらえそうだと思うと、堀野の気持ちはわずかだが軽くなった。堀野は階段を下りると病院を出て、研究棟にある高田教授の部屋へと向かった。三十分ほど待たされた頃、足音がドアの前で止まった。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p教授室の手前の秘書室で待っていた堀野は、緊張で肩が強張るのを感じた。「待たせたね」先ほどの仏頂面が嘘のように穏やかな表情で入ってきた高田を見て、堀野は少しホッとする。「先生、先ほどは……」「ここでは話なんてできないよ」話しかけた堀野の前を通り過ぎて、
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p高田は奥の教授室のドアを開けた。 「入りたまえ」「失礼、します……」扉を開けて待っている高田の前を通り過ぎて部屋の中へと入る。堀野の後ろで、カチリと鍵の閉まる音が聞こえた。振り返って高田を見る。「もう一度訊く。なんでもするという言葉に嘘はないね?」 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_pカーテンが閉まり、灯りのついていない薄暗い部屋の中で、教授の瞳だけが妖しげな光を放っている。ここにいてはいけないと心の中で警鐘が鳴るが、逆のところで逃げ出したらすべて終わりだと告げる声がする。行き場を失って、答える言葉を見つけだせないまま、堀野は高田を見つめていた。 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「なんでも言うことを訊くんだね?」一歩ずつ近づきながら、焦れたように高田が同じ質問を繰り返す。もう逃げ場はないと覚悟を決めて、堀野ははいと返事をした。「では、こちらに来なさい」少し離れたところに立ち、堀野を試すように命令する。不安に駆られながらも堀野は高田の前に立った。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_pすでに、私服に着替えている高田は、何も言わず射竦めるように堀野を見ると、その首元に絡まっているシルクのスカーフをゆっくりと解いた。それを手に取ると、堀野の両腕を、抱きしめるようにして後ろに回し、その両手首をスカーフで一つに戒めた。「……何を……するんですか……?」 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「質問は許さない。君は黙って私のするが、ままに、身を委ねていればいいんだ」深く重い声で反論の余地なく告げられて、堀野は体を震わせた。今から高田がしようとしていることは、決して楽しいものではないことはわかる。そしてそれは、きっと堀野を深く傷つけてしまうことなのだ。 
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p不安と恐れに心までが竦んでしまう。しかし、受け入れてしまったのは自分の意志だ。逃げ出すわけにはいかない。堀野は唇を噛んで、瞼を閉じた。高田の手が、堀野の細い顎を鷲掴みにして持ち上げる。反射的に体が逃げようとしたが、高田の反対の腕が、まだ背中に回されたままで叶わない。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「うっ!」顎を砕かれそうなほど強く掴まれて思わず呻き声が上がった。「目を開けなさい」言われたとおりに瞼を開く。すぐ目の前に、高田の顔がある。ギリシア彫刻のように彫りの深い顔立ち。心の奥底まで見透かされそうな緑がかった黒い瞳。視線が合った瞬間、堀野の心臓がトクンと跳ねた。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p「きょう……」教授と呼びかけて唇を開いたとたんに、噛みつくように高田のくちびるが被さってきた。「んっ!」驚いて目を瞠る。その目に高田の視線が絡みつく。衝撃に全身を強張らせて、為す術もなく口腔を蹂躙される。強引に押し込まれた高田の舌は、獰猛に堀野の舌を捕獲し思うさま弄る。
水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa
@ts_p自分が高田からキスされているのだとわかるまで、長い時間を要した。「やっ! いやだ!」夢中で高田を押しのけようとするが、がっしりと抱え込まれて身動きすら取れない。逃げるために逸らした首筋に、高田の唇が押し当てられた。軽く噛まれ、皮膚を吸い上げられてチリッと痛みが走る。 
残りを読む(24)

コメント

水澤純@BL/ノンフィクション同時進行中 @junmizusawa 2011-10-11 10:04:15
@ts_p べりおさん作【巨塔の翳り】の表紙絵をとぎゃりました!
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする