時の支配者と妖精の軍勢(#えるどれ)

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前回の話

まとめ 至福の地の異変と妖精族の動揺(#えるどれ) シリーズ全体のまとめWiki https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 5367 pv 4

以下本編

帽子男 @alkali_acid

この物語はエルフの女奴隷が騎士となり失ったものを取り戻すファンタジー #えるどれ 過去のエピソード一覧は見やすいWikiからどうぞ wikiwiki.jp/elf-dr/

2020-10-10 17:32:00
帽子男 @alkali_acid

ちなみにあまりに血縁関係が入り組んでるので家系図も作りました。 wikiwiki.jp/elf-dr/%E5%AE%… そういう話だからね。

2020-10-10 17:33:27
帽子男 @alkali_acid

さてさて。 エルフが楽しく暮らす至福の地。 そこへ突然湧き出した輝く湖。 水なき面(おもて)から光の触手が伸び、平和な日々を送っていた丈夫(ますらお)や乙女、童児を容赦なくさらってゆくではありませんか。 湖の向こうは、かつてエルフが捨て去った狭(はざま)の大地に通じているとか。

2020-10-10 17:35:57
帽子男 @alkali_acid

エルフ、妖精といえばすなわち暴力。息をするように弓を引き、あくびまじりに魔法を炸裂させて殺戮を繰り広げる、生まれついての戦闘民族であります。 どこの誰が舐めたまねしてくれとんじゃおう。 とまあ民の安寧を守るべき諸侯はいきりたつのですが、ひとつ問題が。

2020-10-10 17:38:11
帽子男 @alkali_acid

妖精は光の軍勢に属し、かつて闇の軍勢と狭の大地の覇権をかけて争ったうえ、和平を結び、どちらも兵を退かせ、かたや至福の地、かたや冥府へ引き上げて二度と立ち入らないという約定を交わしていたのであります。 であるからして、いきなり大挙して狭の大地に攻め込むようなまねはできません。

2020-10-10 17:40:07
帽子男 @alkali_acid

そこで諸侯が集って話し合いを持ちます。 妖精会議といって至福の地の諸国から集まった王や公、酋長などが円卓を囲み、一つの主題についてそれぞれの考えを述べる。最後は全会一致で方針を決めます。 今回は「狭の大地への再進攻、あり?なし?皆で決めよう!」といったところ。

2020-10-10 17:42:46
帽子男 @alkali_acid

再進攻の賛成派は、炎の神殿と呼ばれる新興宗教。なんで新興宗教がでかい顔しとんじゃい、と思うかもしれませんが、教祖かつ本尊が元妖精の偉い王様です。 死後、至福の地を統べる光の諸王という神々の間に席を与えられた英雄神であります。

2020-10-10 17:45:57
帽子男 @alkali_acid

さらに森の妖精族の代表として選ばれたブナノエダなる長老も、賛成派につきました。この人はもともと穏健な考えの持ち主で、諸族連合の大戦などには慎重とみられていただけに、驚きをもって迎えられました。 森の民の間では尊敬されているので発言には重みがあります。

2020-10-10 17:47:59
帽子男 @alkali_acid

さらにブナノエダの長子で、森と山の王であるヤマオロシも賛成派につきました。博学の妃等から厳しい批判を受け、知恵深い友人からも忠告を受けましたが、しかし言葉少なに、頑固に父に従う姿勢を変えませんでした。

2020-10-10 17:51:39
帽子男 @alkali_acid

地の妖精と呼ばれる黒髪の氏族も、再進攻に賛成派です。先に述べた炎の神殿の本尊が地の妖精出身であることと、 「何事も暴力で解決するのが一番」 という文化があるためです。戦に倦み疲れた世代の多くは忘却の館という施設に行ってしまって、血気盛んなものだけが残っているという事情もあります。

2020-10-10 17:55:05
帽子男 @alkali_acid

湖や野、丘に暮らす妖精族は様子見です。ただし山と森の王と縁戚関係でもあり、また過去に幾度も戦で力を合わせているので、そうと決まれば兵を出すのにためらいはないでしょう。 特に湖の妖精の戦の長で、白鳥の騎士と呼ばれるシラバネは武勇に優れ、恐れを知らぬ女傑です。

2020-10-10 17:57:56
帽子男 @alkali_acid

反対派もいます。光と闇の約定を結んだ立役者であり、かつて妖精の狭の大地からの撤退を指揮した上王、ミドリイシです。 不死の種族としては年若い方に属し、また人間の血も入った半妖精ですが、その手腕は高い評価を受けています。

2020-10-10 18:00:06
帽子男 @alkali_acid

ちなみに上王(かみのきみ)というのは、さまざまな氏族がまとまって行動しなければいけない場合に、まとめ役として選ばれる王の中の王のことです。 地位は終身だったり退位したり、情勢によってさまざまです。ミドリイシはすでに一度自ら望んで退位していますので、以前のような大権はありません。

2020-10-10 18:01:53
帽子男 @alkali_acid

海に暮らす妖精族は、優れた船大工ワタノハラを代表として選びました。海の妖精は色々複雑なのですが、とにかく落ち着きのある大工さんを会議に送り込みました。 ワタノハラは、再進攻には反対派。ミドリイシの側についています。

2020-10-10 18:05:35
帽子男 @alkali_acid

それから妖精のあいだでも謎めいた極の氏族がいます。 極?極って何?もともとは極地の氷海のあたりに住んでいた氏族で、あまりほかの氏族とかかわりを持たずに暮らしていました。光の諸王を崇めておらず、独自の信仰を持っていたり、色々風変りですが、一応会議には参加します。

2020-10-10 18:07:16
帽子男 @alkali_acid

極の妖精の特徴は、海獺(らっこ)に変身できること。何でかは解りません。代表は黄金海獺ハルノモ。 極妖精のビッグマムで、住処である海藻の森では、まあ言うたら女王みたいなもんですね。 海獺ですけど。 円卓の用意された席にはつかず、ミドリイシの膝にぴっとりくっついています。

2020-10-10 18:09:20
帽子男 @alkali_acid

この金色をした毛むくじゃらも、再進攻には反対派です。特にこれといった理由はないのですが、ミドリイシと仲良しだからです。 それからもう一人、どの氏族にも属しませんが、賢者として貴ばれている風の司アキハヤテもいます。

2020-10-10 18:10:59
帽子男 @alkali_acid

再進攻賛成派である山と森の王ヤマオロシの親友ですが、今回は意見を異にし、反対派に回りました。 まとめると森と山と地と炎が戦に賛成し、海と風が戦に反対していて、ほかは様子見。 主な論争は森の代表ブナノエダと、海と風の後押しを得た先の上王ミドリイシの間で交わされることに。

2020-10-10 18:14:42
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ ブナノエダことギリアイアは、木の枝を模した白銀の冠をつけて円卓にあらわれた。額のあたりには、砕けた宝玉が三つ、黄金で継いであった。 あまりのまばゆさに、思わず列席したものは目をくらませたほどだった。

2020-10-10 18:16:25
帽子男 @alkali_acid

息子であるヤマオロシことスラールもまた、冠と宝玉の輝きに心打たれたが、かすかに怪訝の思いも抱いた。 父は金銀の冠をあまり好まず、王の位にあった頃も木の実と枝でできたものを身に着けるだけであったのを知っていたからだ。

2020-10-10 18:18:58
帽子男 @alkali_acid

一方、政敵となったミドリイシことアルウェーヌは強い光を浴びても瞬きもせず、厳しい眼差しで砕珠の冠に向けた。そこに凶兆を見て取ったかのように。 ただ同じ表情は一瞬、相対するギリアイアも浮かべたのだった。アルウェーヌの襟元に目立たぬように差された、灰色をした烏羽の飾りを認めて。

2020-10-10 18:22:37
帽子男 @alkali_acid

それぞれが席に就くと、風の司アキハヤテことロンドーは静かに切り出す。 「この会議は、至福の地を脅かす輝く湖の禍にいかにして当たるか話し合うもの。下妖精の七王国、および上妖精のうち地の王国の総意を得んがため、我等は集った」

2020-10-10 18:31:21
帽子男 @alkali_acid

諸侯の承認を得ると、ロンドーは先を続けた。 輝く湖が、炎の神殿が水鏡の術を試みたのと機を一にしてあらわれ、初め一か所だったものが次々に数を増し、妖精を攫っていること、下妖精の七王国では炎の神殿およびそれに協力する魔法使いが、対抗する陶盾の術を編み出し封印を施しているが、

2020-10-10 18:35:28
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