『終点のあねもね』

柚木麻子さん(@yuzukiasako)によるあねもね物語『終点のあの子』編です。制服姿の自分の頼りない足元を思い出す原作『終点のあの子』はこちら→http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163292106
文芸あねもね
maru_ayase 1540view 0コメント
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  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:01:31
    「文芸あねもね」宣伝特別小説・柚木麻子作「終点のあねもね」…私の名前は奥沢朱里(15)。都内のお嬢様女子校に通ってるの。パパは有名カメラマン、個性的でセンスの鋭い私は、クラスの注目の的。人の顔色ばっかりうかがっている同級生にはうんざり。早く自分を自由に表現できる場所にいきたいわ。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:04:48
    そんなある日だった。隣のクラスの優等生、彩瀬まるとかいう子がやってきたのは。「奥沢さんって作文得意よね? ねえ、よければ私達『文芸部あねもね』を助けてくれない」群れるのは苦手だけど文章には自信があるし、クラス以外の場所でちやほやされるのは悪くない。「いいわよ、手伝ってあげても」
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:10:06
    まるが案内したのは図書館の奥にある小部屋。ドアを開けた三年生を見て、私は嫌な気がした。「初めまして、私は部長の宮木あや子」 言われなくても知ってる。人とつるまず小説ばかり読んでいるくせに、彼女は学園のプリンセスだった。校内に多数の信者がいるという。 あまり近づきたくないタイプね。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:14:59
    部屋の中央にあるテーブルを、六人の女の子がずらりと取り囲んでいた。パソコンから流れているのは、クラスメイトが好むようなジャニーズの曲。ふん、宮木先輩も所詮はふつうの女の子と一緒の趣味じゃない、と私は少しだけ安心した。「あなたが奥沢さん?私は副部長の吉川トリコ」
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:21:09
    フレンドリーに笑いかけた上級生を見て、また不愉快になった。ダサい制服をこんな風にシックに着こなす子が自分以外にもいたなんて。「声をかけたのは他でもないわ。7月15日にこんなものを売り出すのよ…。http://t.co/TIMCeqw 書き手が一人足りなくて助けて欲しいの」
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:24:21
    チャリティと聞いて、私はすっかりやる気をなくした。そういうのって偽善的だし、好きじゃない。「ここにいる八名と顧問の山本文緒先生にも短編を書いてもらうの。でも、一年の柚木麻子っていう子が今、停学くらってるせいで参加できなくなったの?」停学? 問題児も自分一人で十分なのに。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:28:08
    「もう十名って発表しちゃったからさ〜。奥沢さんの書いた漫画、うちのクラスにも回ってきたよ〜。天才だよね。是非、その力を『あねもね』で生かして欲しいなあ。さすが奥沢エイジさんの娘」隣に座っていたちょっとギャルっぽい子に褒めそやされ、少しだけ気を取り直す。山内マリコとかいうんだっけ。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:31:46
    「ふうん。いいですよ。書いてあげても。面白そう」私が胸を張ると、小さな部室は歓声と拍手に包まれた。いい気分。自分の才能を見せつけるいいチャンスだと思った。それから一週間ーー。私は一行も書けないまま、ふてくされて部室の戸をたたいた。いざパソコンに向き合うと何の言葉も出て来なかった。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:37:38
    「はあ? 約束と違うじゃん」形のいい眉をひそめたのは、クールな一匹狼の南綾子先輩だ。「どうして書いてこないのよ」私は唇を噛み締め、女の子たちをにらみつけた。なによ、文系乙女を気取っているくせに、ここも教室と一緒だ。人と違うことを許せない。枠からはみ出す子をいっせいに糾弾する。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:41:05
    「仕方ないでしょ。書けない時は書けないって」やんわりと割って入ったのは、見知らぬ上級生だ。誰だっけ。「書けないなんて言ってません。書かなかっただけ」むっとして言い返すと、隣のクラスの三日月拓とかいう子が耳打ちしてきた。「伝説の豊島先輩にそんなこと言うのやめなよ」豊島先輩?
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:45:52
    思い出した。私は目の前のすらりとした女の子を呆然と見つめる。去年、さる文芸誌の新人賞を最年少で受賞した、本物の有名人。受験勉強優先ということでそれきり執筆をしていないのが、いっそうスター性を高めている。私はくやしくなった。こんなことなら、どんなに拙い作品でも提出すればよかった。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:49:39
    怖かったのだ。思ったより大したことないじゃん、お父さんほどの力はないんだよね、本当はフツーの子じゃない……。そんな風に笑われるのが。なにより何が何でも表現したいものが自分の中にないことに気付かされショックだった。すべてを見透かすように豊島先輩は優しく微笑んでいて悔し涙が滲んだ。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:52:20
    その時、ドアが音を立てて開き、二年の蛭田先輩が息をきらせて、駆け込んできた。「見つけました!代打をやってくれる十人目の執筆者です!」遠慮がちに入室した女の子を見て、私は息をのんだ。
  • @yuzukiasako 2011-07-12 21:56:25
    同じクラスの保田早智子! クラスで最もイケてないグループに所属するダサ女子ではないか。なんで彼女が…。「保田さんの仕上げた短編、面白いんですよ〜。そのまま載せられるレベルです。漫研もやってるから、絵も描けるし」「わあ、救世主ね!」「ようこそ、保田さん!」 「ビバ!あねもね」
  • @yuzukiasako 2011-07-12 22:07:07
    部員にわっと取り囲まれ、保田早智子は恥ずかしそうに笑っている。私は黙って席を立ち部室を後にした。もう二度と「文芸部あねもね」になぞ関わるものか。私が認められる場所は他にある。ドアを乱暴にしめても女の子達の歓声にかき消され、私が出て行ったことに誰も気付かないみたいだった。(了)
  • @yuzukiasako 2011-07-12 22:11:03
    以上、まいどおなじみの柚木麻子おはなしツイートでした。「文芸あねもね」発売まであと3日!よろしくお願いします!そして、プライドが高く傷つきやすい朱里がその後どうなったのかはこちらをどうぞ!http://t.co/kLj0Ufc

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