終の戦1(#えるどれ)

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前回の話

まとめ 時の支配者と妖精の軍勢(#えるどれ) シリーズ全体のまとめWiki https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 6187 pv 1

以下本編

帽子男 @alkali_acid

この物語はエルフの女奴隷が騎士となり失ったものを取り戻すファンタジー 略して #えるどれ 過去のエピソード一覧は見やすいWikiからどうぞ wikiwiki.jp/elf-dr/

2020-10-12 20:27:43
帽子男 @alkali_acid

狭(はざま)の大地に誕生した新たな神、時の支配者は、まだ何も知らぬ赤子も同然だった。 過去と現在と未来と行き来する権能を持ちながら、使いこなす術を知らず、人間だった頃の記憶に引きずられ、右往左往を繰り返した。 しかし妖精の軍勢と対立したことで、強大な魔法による攻撃を受け、

2020-10-12 20:29:36
帽子男 @alkali_acid

卑しく小さきものであった頃の思い出のほとんどを失った。 妖精の軍勢は、忘却の呪文で時の支配者が害をなさぬようにしようと試みたのだが、結果は予期せぬものとなった。

2020-10-12 20:31:40
帽子男 @alkali_acid

鎖を解かれたように新たな神は急速に成長した。記憶を失てなお、病のごとき愛欲だけはうちに燃やし続けながらも、周囲の信徒から多くを学んだ。 時の支配者の気に入りは柔らかい褥のような肢体を持つ遺物鑑定士モックモウ。暇があれば膝にのせてまぐわいながら、唇を啄み、乳房や双臀を揉みしだき、

2020-10-12 20:36:19
帽子男 @alkali_acid

手触りの良い肉を敲き、抓り、甘噛みし、雌をどのように弄び狂わせるかの優れた教材として濫用した。 乙女の繊細で敏感な官能と、素直な心根は神にとってよき供物であった。 モックモウは寵愛を受けながら、何が悲しいのかすんすんと鼻を鳴らしては泣き、ここにはいない男の名を呼んだが、

2020-10-12 20:40:47
帽子男 @alkali_acid

しかし時の支配者の問いには細かに答えた。 神は信徒にめったに休息を許さず、絶え間なく喜悦に狂わせながら抱いて、祭殿である黒金の要塞を闊歩し、あちこちに鎮座する遺物を鑑賞して歩いた。

2020-10-12 20:42:57
帽子男 @alkali_acid

そうして古の時代に別の神が作った武具や兵器について事細かに理解した。 「前より女性の扱いが上手になったね…というか、昔の君に戻ったというべきか…そうでもないか。壊さないぎりぎりのところを見極めて玩具にし続けるのは、新しいね…おっと…」

2020-10-12 20:45:04
帽子男 @alkali_acid

別の信徒である赤みがかった肌に片方だけ尖った耳をした童形の学究、狂気発明者ケロケル・ケログムが、これまた時の支配者と瓜二つの分身に抱かれて合流する。 全身に荒淫の跡があり、目の下に隈はできているものの、口ぶりだけは落ち着き払っている。 「そろそろ雄と雌の区別はついてほしいけど」

2020-10-12 20:47:16
帽子男 @alkali_acid

「ケロケル。熱力学の第二法則について語れ」 「モックモウ。影の槍の流血の呪いについて語れ」 教師であり奴隷である男女の寛げられた孔を指や剛直で穿り返しながら、時の支配者はさらに講義を要求する。

2020-10-12 20:49:15
帽子男 @alkali_acid

嬌声と咽泣を挟みながらも、モックモウとケログムは系統だった知識を絶対の主に捧げた。 それぞれから学を絞り出しおえると、さらに分身の数を増して、白と赤の肢体から快楽を貪り尽くす。 だが分身の数は百万にも及び、残りの一部は黒金の要塞の外で、また別の信徒と武芸を競っていた。

2020-10-12 20:52:39
帽子男 @alkali_acid

鏡の女王ティターネイア。人間に非ざる妖精の君主にして獰猛極まる気性の烈婦は、時の支配者の病んだ愛欲の対象とならない唯一の存在であった。 新たな神は、この若々しくも年降りた媼のうちに、何か侵し難い気配を感じ取っているようだった。

2020-10-12 20:54:46
帽子男 @alkali_acid

ティターネイア自身も、時の支配者の寵愛を受けることにほとんど関心を払わなかった。 女王の望みはむしろ、あらゆる種族を征服、蹂躙、隷属させ、供物として神に捧げるところにあった。 「神よ。御身の霊気の働きは妖精と異なりますが、呪文は互いに翻訳が可能…さあ!」

2020-10-12 20:57:30
帽子男 @alkali_acid

絶世の美男の群が虚空に漂いながら、荒々しい美女に向かって一斉に詠唱を行う。 妖精が操る魔法のうちでは際立って強大な破壊の呪文が幾重もの津波となって、麗しい標的に押し寄せる。 だがティターネイアは鏡を呼び出して、すべての攻撃を吸収する。 「さあ!防御を!」

2020-10-12 20:59:25
帽子男 @alkali_acid

今度は時の精霊の群は整然と隊形を整えて合唱すると、泡の膜を生み出し、跳ね返って来た破壊の呪文を受け止め、そらす。一部は手傷を負ったが、すぐに無傷のものと交代する。 「守めは速く。攻めはさらに速く。神よ!時を意のままになさる御身ならば!妖精の速さも必ずや我がものとされましょう」

2020-10-12 21:02:27
帽子男 @alkali_acid

時の支配者は、武芸や諸学を一つものにするつど過去へ遡り、また別のものを修めた。 「ガミ。じゃあ次は…んっ…何でそんなに…僕の体に詳しいのかな…っ」 「時の靭性は限界に達しつつある」 「また…それ…?速く存在を安定させないとね」 「存在を安定」

2020-10-12 21:06:48
帽子男 @alkali_acid

「ガミが…この世の始まりから唯一にして大いなるものとして、ただ一つの神として君臨していたことにするんだ…ほら…吸ってもでないよ…モックモウにすればいいだろ。そろそろ君の分身を」 「唯一にして大いなるもの」 「ほかの神は全部存在しないことにする…そうすれば…時空に…」

2020-10-12 21:08:38
帽子男 @alkali_acid

「冥府への道を開き、妖精の軍勢を導く」 「今度はそっちか。妖精は君の奴隷だろ?どうしてそんなことしてあげるのさ」 「…ダリューテ」 「はいはい」 「ダリューテを我が花嫁とする…そのために…」

2020-10-12 21:09:54
帽子男 @alkali_acid

準備が整うと、妖精の軍勢を引き入れる試みを始めた。 時の支配者は一度不死なる民の騎士団に敗北したが、それらはすべて朧な夢と消えた。 鏡の女王が水鏡の術なる秘儀を用いて、すでに一度向こうから開いた妖精の国、至福の地への門を再び開く。幾つも。

2020-10-12 21:12:08
帽子男 @alkali_acid

ティターネイアが輝く湖を湧き出させ、そこに光の触手を伸ばして、同族を引き攫い、臣従を求め、拒まれれば魔法で隷属させてゆく。 やがて奪われた民を奪還しようと、尖った耳に切れ長の瞳、高い鼻と細い顎を持つ種族の精鋭が押し寄せてきた。

2020-10-12 21:14:19
帽子男 @alkali_acid

時の支配者は、黒金の要塞にあった暗黒の甲冑や闇の戦車、影の槍、黄泉の大鎚、太陰触(つきむしばむもの)と呼ばれる増殖する凧の如き兵器などを繰り出して迎え撃った。

2020-10-12 21:16:43
帽子男 @alkali_acid

鏡の女王には、狂気発明者が飼いならした、生きた鉱脈とでもいうべき怪獣、大地を蚕食するもの、あるいは鉱蛆を騎獣として与えた。 敵の将軍は銀の冠に金で接いだ砕珠をはめこんだ、不思議な装身具を帯びた公達で、諸手に槍と剣を同時に操り、配下の騎士はみな老練で勇猛だった。

2020-10-12 21:18:27
帽子男 @alkali_acid

時の支配者は敗北した。 しかし敗北は苦ではなかった。 多くの学びがあったからだ。過去へ遡り、幾度も幾度も妖精の小隊と死闘を繰り広げるうちに、次第に戦に熟達し、また見識も増していった。

2020-10-12 21:20:08
帽子男 @alkali_acid

冠の騎士は、先を読むことができた。また冠には時の支配者とは別の神が宿っていた。燃える炎の如き意思をもつ神が。それは騎士の静かな森の木のような意思と噛み合って恐るべき勇武を発揮した。 時の支配者は指揮、采配、進撃と撤退、決断と熟慮、臨機応変の工夫を一つ一つこの妖精の老将から掴んだ。

2020-10-12 21:22:03
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