くろぐだの奇妙な冒険 第1巻 ~くろぐだ、街に越す~

作者:日向寺皐月(@satuki_hyugaji)さん 「#自分のスタンドを考えてみるタグ」から始まったフォロワースタンド使い化企画連載小説(三次創作) 第1巻分まとめ 2巻→ https://togetter.com/li/1608736
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日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 序 《二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。一人は泥を見た。一人は星を見た》 ―フレデリック・ラングブリッジ

2020-09-20 00:06:17
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第一話「くろぐだ、街に越す」 1 地方都市の一つ。周囲を山と海に囲まれた立地でありながら、それなりの街として栄えたこのT市の駅に、一人の少女が降り立った 彼女の名前はくろぐだ。つい数時間前まではT市から離れた田舎に居た彼女は、高校進学を期に此方に越してきた

2020-09-20 00:15:16
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 2 「よいしょっと…」 小柄な彼女が運ぶのは、自分の身体程の大きさのある旅行鞄。引っ越し用の荷物は先に運ばれてるとは言え、女の子の一人旅には荷物が付き物だ。 重いながらも、ゆっくりと運ぶくろぐだ。だが、そんな彼女の後ろに良からぬ事を企む男が一人。 「うしし…」

2020-09-20 00:21:12
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 3 「ラビット・フット」 彼がそう言うと、掌の上に小さな兎の様なモノが現れた。そしてそれの頭を撫でると…男の姿が掻き消えた。 しかし、背後でそんな事が起こっているのを知らないくろぐだは、ゆっくりと自分のマンションに向かう。 そして、地図を見ようとし…気付いた。

2020-09-20 00:27:30
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 4 「あれ!?鞄は!?」 さっきまで左手を圧迫していた鞄が失くなり…彼女は慌てて周囲を見渡す と、視界の端に走る男の背中が映った。その手には、見覚えのある鞄が 「あっ!ちょっ!ど、泥棒!」 言うが早いか、くろぐだは駆け出す。しかし、男の方が早い

2020-09-20 00:30:38
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 5 「ちょ、ちょっと!」 くろぐだの制止も虚しく、男は裏路地へ消えていく。しかし此方は初めて街に来たばかりの女の子。当然敵う筈もなく… 「ま…待って…」 息も絶え絶え、くろぐだは路地の途中で止まってしまう。しかし地図もスマホも鞄の中。そう、これは俗に言う迷子だ

2020-09-20 00:33:27
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 6 「ど…どうしよう…」 くろぐだは焦った。初めて来た街で、初めて来る路地に迷う。其ほど絶望的な状況はあるだろうか 兎に角さっきの大通りまで出よう。彼女はそう考えたが…気付いた。必死で追いかけたので、道を覚えていないのだ そんな時、ふと掌に付いた傷を見た

2020-09-20 00:37:36
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 7 それは、何か鋭いもので斬り裂かれたようなものだった。見れば、息継ぎの為に手を付いた塀の上に、キラリと光るものが 彼女はそれを拾い、呟いた。そこにあったのは… 「…矢?」 金に光る、不思議な紋章と虫のモチーフが付いた矢だった。しかも半分程掛けてしまっている

2020-09-20 00:41:43
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 8 不意に、何処からか杖の音がした。規則的に鳴るそれは、ゆっくりと此方に近付いてくる。 「迷子かな?お嬢さん」 そんな声のした方を見ると、路地の先に一人の男が立っていた。背が高く、深緑の着流しと紫紺の羽織、そしてグレーのハットが目立つ 「ここは路地が多いからね」

2020-09-20 00:46:33
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 9 「えっと…」 少し困惑した表情でくろぐだは聞く 「貴方は…?」 男はひょいとハットを持ち上げ、質問には答えずに彼女の手を見る。そして、ニヤリと笑ってこう聞いた 「君は…もし、何か《力》を手に入れられるのであれば…何を望む?」 「力…?」 くろぐだの目は点になった

2020-09-20 00:50:16
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 10 「そう、力だ」 そう言って、男はゆっくりくろぐだから矢を取り上げる 「何でも構わない。君の望みはあるかい?」 「えっと…」 くろぐだは悩んだ。もしかしたら自分は疲れて、夢か何かを見ているだけかもしれない。だから、どんな願いでも叶うと言われ…

2020-09-20 00:53:31
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 11 「えっと…色々楽したり、楽しんだり…あ、後何かあった時戦えたり…」 それらを口にすると、男は一瞬驚いた表情を浮かべる。そして、大笑いした 「成程成程!面白い。貴君の様な心の持ち用こそが…」 そこまで言い、男は口を噤む。それから…急に大きな声を出した

2020-09-20 00:59:44
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 12 「祝え!新たなるスタンド使いの誕生を!」 「え、え」 突然の事に慌てるくろくだ。しかし男は彼女の事を気にせず更に言葉を紡ぐ 「祝え!新たなるスタンドの誕生を!その名はブラック・オルマ・ニョルニール!祝福せよその誕生を!」 「…え?」 くろくだは辺りを見渡した

2020-09-20 01:04:49
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 13 そこはさっきまでの路地で… と、視界の端に走る男の背中が映った。なんだか既視感のある状況である。唯一違うとすれば… 「は…ハンマー…?」 彼女の左手、さっきまで傷があった筈の左手に、自分より大きな大鎚が握られていた。しかも、何故かメカメカしい見た目をしている

2020-09-20 01:08:29
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 14 「な、何これ…ってそうじゃない!」 彼女は慌てて前を見た。走る男の背中。荷物を奪われた自分。なら、やることは追いかける事で― 「うわわわ!」 当然、彼女の身体が宙に浮く。左手の大鎚が飛んでもないスピードで飛んでいるのだ。そして何故か、左手が離れない

2020-09-20 01:11:36
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 15 「ちょっちょっちょっ!」 車程のスピードで飛ぶ大鎚。慌てて両手で柄を握ると…目の前に、男の背中が見えた 「ぶつかるぶつかる!避けてぇー!」 「げぇ!?」 後ろを向き、驚き声を上げる男。急いで横に避けると…突然大鎚のスピードが落ちた 即ち、地面に落ちたのだ

2020-09-20 01:15:03
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 16 「いてて…」 地面にぶつけた所を擦ると、左手の大鎚が消えていた。何だったのか、くろくだが悩んでいると… 「きき、君もスタンド使いなのかい!?」 「スタンド…?」 くろくだが聞き返すが、男は慌てた顔で荷物を投げて寄越す 「と兎に角!荷物は返すよ!だ…だから…」

2020-09-20 01:18:37
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 17 くろくだは呆然とするが、目の前の男はぷるぷると震えている 「ここ、殺さないで!」 そんな悲痛な声を聞いてしまったくろくだは…鞄を開け、財布から二万程取り出して差し出した 「えっと、その…これ以上は無理ですが、良かったらどうぞ」 「…え?」 男は驚く

2020-09-20 01:21:36
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 18 そして二万とくろくだを見比べ…そっと手を伸ばした 「お嬢様…申し訳ねぇ…」 「いえいえ、その…困ってそうだったので…」 震える手で男は二万を受け取り、両手を合わせて感謝の意を表す。そして、思い出した様に喋り出した 「あ、そうだ。俺は駿足の兎って呼ばれてます」

2020-09-20 01:25:23
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 19 「この辺りは俺の縄張りです。何か困った事があったら、俺に言って頂ければ何でもしますぜ」 「何でも…?」 そんな事を言われたのは本日二度目だ。くろくだはそう思ってくすりと笑う。それから、彼女の願いを告げた 「道案内…お願いできますか?」

2020-09-20 01:28:14
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 20 かくして、始まった彼女の冒険。果たしてこの世界は何方に転ぶのか。この私にも想像出来ない初めての世界。さぁ、皆様。この世界を存分にお楽しみ下さいませ

2020-09-20 01:30:22
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 スタンド使い名鑑 くろくだ:16歳の女子高生。長い黒髪と小柄な背が特徴 性格は穏やか且つ優しく、スリにお金をあげてしまう程。反面、あまりにもピュアで世間知らずな面も スタンドは「ブラック・オルマ・ニョルニール」メカニカルな大鎚型で、今回は空を飛ぶのに使った

2020-09-20 13:30:08
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