「創作物を通してメッセージを出すこと」と「創作物を言葉で説明すること」

SPAでまどかマギカに対する討論記事が掲載された事と、それに対するある種の皮肉について、森川嘉一郎先生が少しだけ創作物について語ってくださいました。
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森川嘉一郎 @kai_morikawa

SPAの『まどか』特集について、「作り手がそんな小難しいこと考えてるわけないじゃん」という反応を散見する。それぞれの論の当否はさておき、私がこれまで話をしてきた経験では、作り手は読み手の想像よりはるかに色々なことを考えてる。物書きや監督だけでなく、絵師も、フィギュアの原型師も。

2011-07-13 17:50:59
森川嘉一郎 @kai_morikawa

私は作家やクリエイターを神格化したり、読み手の上位に置いたり、創造のプロセスを神秘化したりするのは好きではないのだけれど、あらゆる作品は、パっと見ただけではわからないような作り手の様々な考えを宿していると見なすべきだと思う。たとえ世間でどんな下らない作品と見なされていたとしても。

2011-07-13 17:51:11
森川嘉一郎 @kai_morikawa

ただ、とりわけ日本では、作り手がその作品について、言葉で語ることを潔しとしない風土がある。作品のみを通して伝えるのが正道であって、内容や手法や制作過程についてペラペラと語るのは邪道だと、作り手にも読み手にも版元にも思ってる人が多い。「評論家」に対する嫌悪も、背景を同じくしている。

2011-07-13 17:51:21
森川嘉一郎 @kai_morikawa

それは作品を「商品」として、商業的に回す分には大きな弊害はないのだが、過去からの積み重ねを含め、作品にどれだけ創意が投じられているかを対外的に語る言葉を持たない状況は、表現規制に抗してそれらを護るべき価値のある「表現」として説明しなければならなくなる時、いきなり大きな問題となる。

2011-07-13 17:51:32
森川嘉一郎 @kai_morikawa

過去からの表現の積み重ねと作家の多大な創意によって作られる様々な「作品」と同じく、作品に投じられた創意とその価値を対外的に説明するための言葉や論理は、一朝一夕には作れない。そこは、もう少し大事にしてゆきたい、と思う。

2011-07-13 17:51:46