ハイヌ-ン・ニンジャ・ノーマッド #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【今回のエピソード】 ・「ニンジャスレイヤーPLUS」に掲載の過去編エピソード ・時系列は戦国時代のどこか ・ニンジャスレイヤーはネオサイタマだけでなく、過去にもさまざまな時代、さまざまな場所に存在した ・ニンジャスレイヤーとなった主人公「キルジマ」は、薬師の「ユフコ」に命を救われた

2020-10-20 19:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【これまでのあらすじ】 ・街道街オミノロシは、冷酷な代官の支配下にあった。 ・キルジマはユフコに別れを告げ家を出た。 ・次の日の正午、キルジマは代官の伝令がニンジャであると見抜いており、庄屋屋敷の前でこれに挑みかかった。 ・伝令の正体はトゥームストーンという名のニンジャであった。

2020-10-20 19:55:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サムライニンジャスレイヤー【ハイヌーン・ニンジャ・ノーマッド】 #3

2020-10-20 20:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トゥームストーンは黒い刀を大上段に構え、畳四枚の距離でニンジャスレイヤーを威圧した。ニンジャスレイヤーは臆することなく切り掛かった。ニンジャの速度で。そして弾き返された。鋭い金属音が大通りに鳴り響いた。 1

2020-10-20 20:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二度、三度、四度。やはりニンジャスレイヤーは弾き返され、逆に蹴りを防御の上から受けて転がり、二連続バック転を決めて斬撃をかわした。……踏み込めぬ。一見隙だらけのように見えて、攻め入る隙がない。然り。これは墓石の構えと呼ばれる、堅牢なる古イアイドーの業前であった。 2

2020-10-20 20:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

太陽を背負うトゥームストーンの体は、さながら無敵の黒い塔のように聳え立って見えた。トゥームストーンの発光する白い瞳が、落武者キルジマ・タカユキを睨め下ろす。「どうした、ニンジャスレイヤー=サン! 掛かってくるがよい!」 3

2020-10-20 20:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは体勢を立て直し、敵を睨んだ。相手はおそらく齢二百を超えるリアルニンジャ。積み重ねたカラテと剣の業前は歴然である。そして、それだけではない。敵の黒い刀はおかしなまでの質量を帯びていた。 4

2020-10-20 20:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

見よ。トゥームストーンが構える刀の側面には、びっしりと呪術的な片仮名が刻まれ、不吉な黒曜石のオブツダンを思わせる威容であった。……あれは何だ。ひと瞬きする間だけ、キルジマの両目が赤く発光した。一瞬、敵の黒剣から立ち上る墨色の煙を察知する。常人の目には見えぬニンジャ気配を。 5

2020-10-20 20:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((あれはただの剣ではないぞキルジマよ。刀身のルーンカタカナを見よ。古きニンジャのジツが込められ、自在にその重量を変える)))キルジマの脳裏に、警告の声が響く。(((今は本来の何十倍もの重みを持つがゆえ、オヌシがどれほど打ち込んでも守りが崩れぬのだ))) 6

2020-10-20 20:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ならばどうする、墓石の構えを崩さねば勝機は無いぞ)))(((……未だ憎悪が足りぬ、憎悪を燃やすのだ、キルジマよ)))「ニンジャ……殺すべし……!」キルジマはスリケンを弾いた時と同じ、破れ霞の構えをとって敵を迎え撃たんとした。 7

2020-10-20 20:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

破れ霞。すなわち、両手で強く引き絞るように柄を握りしめてセイガンを整えたのち、腕を交差させ、刀身を地面と水平に構える。深く息を吐きながら腰は低く、縮められたバネ仕掛けのように力を溜める。未だ癒えぬ左腿と背。傷が開き、血が滲み出した。だが殺意に満ちたキルジマの目は表情一つ変えぬ。8

2020-10-20 20:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうした、楽しませてくれ、ニンジャスレイヤー=サンとやら!掛かって来んなら、こちらからゆくぞ!」両者は睨み合いながら、じり、じりと、同心円状に横歩きした。深いターコイズ色の空の下、ひび割れた土に砂煙が立ち、乾いた丘羊栖菜が両者の間を転がってゆく。 9

2020-10-20 20:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

乾いた正午の日差しが照りつけ、キルジマの刃が鋭く輝く。トゥームストーンは直ぐには斬り込まない。睨み合い、相手の呼吸を読みながら、この殺し合いの瞬間を楽しんでいるのだ。 10

2020-10-20 20:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

通りに出ていた町人らは皆、長い袖で視線を隠し、子や妻の手を引いて家の中へと逃げ戻った。刀を抜いた侍を直視することは不敬罪にあたるからだ。ヨツヤノクニ足軽隊はその場に正座し、固唾を飲んで成行きを見守った。帰りの大八車は、ケシと米俵だけでなく、落武者の死体でなお重みを増すだろう。 11

2020-10-20 20:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

廃銀山から枯れた街道へ、びゅう、と侘しい風が吹き下りた。 12

2020-10-20 20:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」トゥームストーンがついに斬り掛かった。刹那、黒い刀は何十倍にも重みを増し、ニンジャの両腕の筋肉が張り詰めた。黒い刀が一直線に振り下ろされる。ニンジャスレイヤーは間一髪、横っ飛びでこれを回避した。尋常なカタナの使い手であらば、これで大きな隙を晒す事となったであろう。13

2020-10-20 20:42:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当然、キルジマもそこを狙った。だがトゥームストーンは、黒い刀をそのまま地面に叩きつけたのだ。黒い刀はあたかも木槌のように跳ね返った。轟音が鳴り、足元がびりびりと揺れた。この震動により、ニンジャスレイヤーは攻め入る好機を逸したどころか、返す刀で向こう脛を浅く斬りつけられた。 14

2020-10-20 20:45:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのまま両者は大通りで激しく斬り結んだ。トゥームストーンの刀は自在にその目方を変じ、ある時は鬼の鉄金棒のように重く、ある時は水銀のように軽やかに動いた。この変幻自在の太刀筋に翻弄され、キルジマは鎧の上から数カ所を浅く斬りつけられ、そのたびに霧のような血が吹き出した。 15

2020-10-20 20:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

さらにキルジマは腿を斬りつけられた。だがこれは、捨て身の一撃を放つためであった。剣先がトゥームストーンの脇腹をかすめ、血が飛んだ。「イヤッー!」「ヌウーッ?」好機を得た。ニンジャスレイヤーは墓石の構えを崩すため、脚を狙い、横薙ぎの回転斬撃を繰り出した。 16

2020-10-20 20:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤアアアアーーーーッ!」だが……阻まれた。トゥームストーンが地面に突き立てた刀によって、受け止められていたのだ。「ヌウッ!」まるで金剛石の墓石を殴りつけたかのような衝撃と痺れが、キルジマの腕へと返った。 17

2020-10-20 20:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「手負いか、ニンジャスレイヤー=サン! その足では踏ん張りが効かぬと見える!」ニンジャ筋力の篭った斬撃が、厚さ一寸にも満たぬ刀一本で阻まれようとは。ニンジャスレイヤーが体勢を崩す一方で、トゥームストーンは両手両足をカラテのための予備動作に当てていた。そして、解き放たれた。 18

2020-10-20 20:57:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」トゥームストーンの槍めいた側面蹴りが、ニンジャスレイヤーの胴当てを捉えた。めきめきと肋骨が軋む。「グワーーーッ!」ニンジャスレイヤーはくの字に折れ曲がって後方へと飛び、障子窓を突き破って庄屋の屋敷へと蹴り込まれた。 19

2020-10-20 21:00:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「呆気ないものよ!」トゥームストーンは哄笑しながら、スリケンを四枚、屋内へと投げ込んだ。そして浅く斬りつけられた己の脇腹を握力で止血し終えると、足軽隊に命じた。「何を愚図愚図しておるか! ヨツヤノクニの名において、あの落武者を仕止めて参れ! 奴は手負いだ!」 20

2020-10-20 21:03:00