昔の平仮名と片仮名の話

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草場純 @kusabazyun

「昔は平仮名と片仮名が混乱していた」という文を見て、おやっと思った。この場合の昔は百年くらい前、あるいはそれ以前を指している。確かに平仮名と片仮名の「使い分け」の歴史には変遷があるが、それは混乱とは違う。

2020-10-10 13:02:22
草場純 @kusabazyun

混乱しているのは、むしろ古い文を読む我々の方だと私は思う。「混乱」の元は、ハ、ミ、ニなどの平仮名(!)のせいだろうと私は推察する。現代でも片仮名の「へ」と平仮名の「へ」は殆ど区別がつかない。同様に変体仮名の中にはハ、ミ、ニ、毛、のように片仮名に似た平仮名も結構あるのだ。

2020-10-10 13:14:44
草場純 @kusabazyun

古い文を読んでいて「これハあれニ・・」などという文を見ると、つい平仮名に片仮名を混ぜているように解釈しがちだが、そうではない。これらは全て平仮名なのだ。だから現代文にするときには「これはあれに・・」と翻字する必要がある。ところが時々「これハあれに・・」などとしてあるのを見かける。

2020-10-10 13:28:32
草場純 @kusabazyun

これは翻字者の脳内では「昔の人は助詞の『は』を読みやすくするために片仮名にしたのだろう」との善意の解釈が働いているのだろうと、私は推察する。だがそうではない。私の経験では、確かに助詞には「は」よりも「ハ(平仮名です、念のため)」の方が多く使われるような気はする。

2020-10-10 13:34:12
草場純 @kusabazyun

しかし最も多く使われるのは「者(を崩した平仮名)」である。だから「これ者あれ尓・・」というような文はよく出てくる。これを「これはあれに・・」と翻字するのは正しいし、そうするべきだと思う。だが、もしそうするなら「これハあれニ・・」も同様に「これはあれに・・」とすべきだろう。

2020-10-10 13:40:26
草場純 @kusabazyun

「これハあれに・・」は、いかにも奇妙で、混乱していると私は思う。  もう一つ、「ジャック」は昔は「ネーブ」と言った。明治時代の本でこれを「子ーブ」と書いてある文献を見て変だ、混乱していると思われた人がいる。しかし逆にこれは変ではない。なぜなら子はネの変体片仮名であるからだ。

2020-10-10 13:46:45
草場純 @kusabazyun

変体平仮名と違って変体片仮名は数が少ない。しかし子=ネは、その代表的なもので、古文書には頻出する。むしろネより多いと思う。そして今度は漢字の子と区別がつかない(手書きでは小さく書くがフォントでは出ない)。だから混乱して見えるがそうではない。混乱してしまうのは現代人のなの方だ。

2020-10-10 13:52:22
草場純 @kusabazyun

かつて明治生まれの女性で「カ子」さんという名前をお見掛けした。私は「かこ」さんとはまた洒落たお名前だと思ったが、よく考えるとそうではなく「カネ」さんだった。片仮名名だったのである。私の祖母は「志げ」といって子供心に変だと思っていたが、実はこれは平仮名名であったのだ。

2020-10-10 14:01:51
がべ@ごいた @jj1srf

そうだったんですね! 私の祖母の名は「志ゃう」 戸籍見て初めて知って不思議に思ってました。 twitter.com/kusabazyun/sta…

2020-10-10 15:39:02
草場純 @kusabazyun

@jj1srf 志を崩した平仮名は、「し」と同じぐらい使われていました。特に語頭では「し」よりずっと多く、古い国語辞典では見出しに常体仮名を使っているにもかかわらず、Shiだけは「志」が見出しというものもあったそうです。ですので、名前の場合も頭文字が志になるのが多いのは理解できます。

2020-10-10 16:03:19
あやしょう @aysgstr

いまでも「志ちや」という質屋の看板をみかけるけど、あれはひらがなだったのか。 twitter.com/kusabazyun/sta…

2020-10-10 17:29:17
あやしょう @aysgstr

ここでのジャックは、トランプの「J」のこと。 twitter.com/kusabazyun/sta…

2020-10-10 17:30:18
草場純 @kusabazyun

@aysgstr そうです。一番見かけるのは「生楚者゛」で「きそば」と読みます。この場合、「生」は漢字、「楚」と「者゛」は平仮名です。「生」は「灘の生一本」のときの「き」で、「混じりけのない」「なま」などの意味を持ちます。楚・者は、そ・は で意味を持たないので仮名です。

2020-10-11 01:39:36
草場純 @kusabazyun

@aysgstr 補足をありがとうございます。トランプのジャックの話です。ジャックは、ネイブ、ファンテなどと呼ばれ、ジャックに落ち着いたのは、そのあとのことと言われます。

2020-10-11 01:42:13
草場純 @kusabazyun

@aysgstr う奈ぎ、志る古、お手毛登(おてもと)なども見かけます。もちろんこれら、楚・者・奈・志・古・毛・登などは、草書体に近い崩した字体になっています。  そう言えばたしか、ツイッターで変体仮名の実例を紹介している人がおられますね。

2020-10-11 01:55:56
草場純 @kusabazyun

@aysgstr 蕎麦屋の紺の暖簾に「生楚者゛」と白く染め抜いてあるのは、東京ではよく見かけますよ。楚も者も大きく崩されているので、読めないかも。変体仮名の「者」は「む」から点を取り去ったような字です。

2020-10-11 02:02:16
あやしょう @aysgstr

@kusabazyun だいたい音読みでいけますが、「者」が「は」は想像つかないですね・・・。 調べてみましたが、私の名前にある「茂」も「も」の変体仮名にあるんですね。 残念ながらTwitterでは出せないようですが→𛃛 codh.rois.ac.jp/char-shape/hen…

2020-10-11 02:03:47
草場純 @kusabazyun

@aysgstr その通りです。大体音読みですが、それも崩れた慣用読みとか、更に唐音とか宋音なども使われ、訓も出てきます。また「者」のように変な来歴なのもあります。「者」をなぜ「は」と読むかと言うと、漢文の読み下しでは、者の字を「は」と読むことが多いからです。そんなのわかるかい!と言いたくなります

2020-10-11 02:24:28
草場純 @kusabazyun

@aysgstr この表を見ると、八、二、三を字母としたハ、ニ、ミという平仮名が、現代の片仮名によく似ているのが読み取れますね。この表はよくできていますが、使用頻度が分からないのは難点です。この表にある変体仮名が全て平等に使われたわけではなく、めったに見ないようなのもあります。文献にもよりますが。

2020-10-11 02:32:05
あやしょう @aysgstr

@kusabazyun 使用頻度一覧ではないですが、ここ↓の検索窓にひらがな1字を入れると、各作品の用例が出てくるようですね codh.rois.ac.jp/char-shape/sea…

2020-10-11 02:38:15
あやしょう @aysgstr

@kusabazyun 用例一覧の画像の任意の文字をクリックすると、元の文献の画像がピンポイントで出てきたりとか、かなりすごいですね、これ

2020-10-11 02:40:15
草場純 @kusabazyun

@aysgstr すごいけど「崩し字検索」となっているのはちょっと気になりますね。変体仮名は確かに漢字を崩して作ったのですが、平仮名です。平仮名と崩し字は深い関係はあるものの、同義ではありません。当然 漢字の崩し字もあり、それは崩しても漢字です。ここは「変体仮名検索」として欲しかった。

2020-10-11 02:47:11
あやしょう @aysgstr

@kusabazyun 草場先生に言われて気づきましたが、漢字を入れると、漢字のくずし字も検索できるようです

2020-10-11 03:02:01
あやしょう @aysgstr

@kusabazyun ただあくまでくずし字検索なので、ここではキーワード検索はできないようですね(?)。 古典籍の全文検索はどこで?と探してみましたが、以下のところでは25の文献から全文検索できるようでした。昔のゲーム用語を検索してみようかと思いましたが、名前と表記がわからない… kotenseki.nijl.ac.jp/?ln=ja

2020-10-11 03:04:24