くろぐだの奇妙な冒険 第８巻 ～ザ・ゲーム～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第二十三話「ザ・ゲーム」 1 広々とした一室。長いテーブルの端で本を読んでいたブシドーは、ドアが開く音で顔を上げる 「あ、鴉。着替えたんだね」 視線の先には、何時ものゴスロリに変えた鴉が居た。しかし鴉は返さず、そのまま歩いてブシドーから離れた場所に座った

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#くろくだの奇妙な冒険 2 「あらら、嫌われちゃった」 そう少し不服そうに言うブシドー。それを見て、はむらびは少し溜め息をついた 「全く…どうして迎えに行くだけなのに、こうも騒ぎを起こせるんだ」 そう言い、新聞を叩くはむらび。そこには、昨日の公園での事件がデカデカと一面に書いてあった

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#くろくだの奇妙な冒険 3 「一面なんて凄いね～」 楽しげに言うブシドー。鴉は黙ったまま、一瞬だけはむらびを見た 「お前もだブシドー」 はむらびはそう言って、警察の事件報告書を出した 「狙われたから」 「にしても暴れ過ぎだ」 眼鏡を指で直し、呆れた様に言うはむらび。そして写真を出した

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#くろくだの奇妙な冒険 4 「兎に角。この四人が新たに警戒対象になった」 その写真は、R.S.C.の四人だった。それぞれ隠し撮りされているらしく、軽くボヤけている 「これ鴉のいた高校の制服だよね」 写真を見、そう言うブシドー。だが鴉はフニコロの写真だけを持ち…破り捨てた 「あ、まだ見てない」

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#くろくだの奇妙な冒険 5 抗議の声を上げるブシドー 「…これはオレの獲物だ」 鴉はブシドーをチラリと見て、そう告げた。その声には、怨みが多く込められている 「で、だ」 再びテーブルを叩くはむらび。そして新たに、数枚の資料を取り出した 「私達が直接動くと、また大騒ぎになる」 ブシドーを見る

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#くろくだの奇妙な冒険 6 「だから新たに、数人のスタンド使いを用意した」 配られた資料を見るブシドーと鴉。そしてブシドーは無邪気に言った 「なんか弱そうだね」 「ま、私達に反攻されたら堪らないからな」 そう嘯くはむらび。煙草に火を付け、小さく呟いた 「計画の目眩ましになれば十分だ」

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#くろくだの奇妙な冒険 7 「レストラン、わざわざ開けてくれて良かったね」 かせんはそう笑顔で、後ろの二人に言った。しかし、くろぐだもはんちょ～も浮かない表情である 「…本当に良かったのかよ、かせん」 そう言ったのは、はんちょ～だった 「あの胡散臭い奴を信用して…」 「信用してないよ」

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#くろくだの奇妙な冒険 8 「え？」 あっさり言うかせんに、はんちょ～もくろぐだも驚いた。そんな二人に、かせんは笑顔で返す 「多分あの人も、僕達を信用してない。だから試したんだ。人を殺さないでって」 それは、保険だった。裏切れば当然敵対する。それだけの保険 「もし本当に殺さなければ…」

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#くろくだの奇妙な冒険 9 少し考える素振りを見せたかせん。直ぐに振り返り、笑顔で言う 「その時は、信用するよ」 その笑顔は、笑っていなかった 更に暫く歩き、人通りの少ない路地に差し掛かった時だった。くろぐだの横を通り過ぎた男が、白い手袋を落としたのだ 「あ、あの！」 当然拾うくろぐだ

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#くろくだの奇妙な冒険 10 「これ…落としましたよね」 振り向くその男は、夏だと言うのに長いコートを着ていた。そして手にはステッキが握られており、シルクハットを被っている 「う～む、お嬢さん。拾って頂いたのですね？それを」 ピンと張った髭を指で伸ばしつつ、そう笑顔で言う男 「は、はい」

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#くろくだの奇妙な冒険 11 少し引き気味にそう言うくろぐだ。男は笑顔で手袋を受け取り…こう告げた 「では貴女が、私と《ゲーム》をしてくれるのですね？」 くろぐだがそれに気付いた時には、既に遅かった。目の前に足の高いテーブルが現れ、男が叫ぶ 「彼女は決闘を承諾した！始めよう！ゲームを！」

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#くろくだの奇妙な冒険 12 「くろぐだちゃん！？」 その声に気付いたかせんとはんちょ～。状況を確認し、それぞれスタンドを出現させる 「スタンド使いか、テメェ！」 ファスト・アンド・フュリオスで殴ろうとするはんちょ～。だが、男は動じる事無くはんちょ～を見る 「ああ、ありがとう」

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#くろくだの奇妙な冒険 13 「あぁ？」 そう言い、はんちょ～は拳を見た。メタリックに輝く拳…の上に、白い手袋が乗っかっている 「君も拾ってくれたのか」 「な…！？」 はんちょ～が気付いた時には既に遅く、はんちょ～の後ろに豪奢な椅子が現れる。見れば、かせんもくろぐだも椅子に座らされていた

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#くろくだの奇妙な冒険 14 「いや～、私は運が良い。実に、運が良い」 そう笑顔で言い、紅茶を嗜む男。はんちょ～は椅子から立ち上がろうとしたが、何故か離れられない 「紹介が遅れたね。私の名前はタチバナ。ダイアのタチバナと呼ばれている…一介の勝負師さ」 タチバナは言い、三人の前に紅茶を置く

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#くろくだの奇妙な冒険 15 「飲み給え。極上のアッサムだ」 そう言われても、誰も手を出さない。それを見たタチバナは、少し悲しげな表情をした 「大丈夫。私のスタンド、ザ・ゲームはあくまで決闘するだけのスタンドさ。それに毒は無いよ」 タチバナの言葉を聞き…最初に手を出したのはくろぐだだった

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#くろくだの奇妙な冒険 16 それを見て、嬉しそうな表情のするタチバナ 「流石は最初に手袋を取ったお嬢さんだ。思い切りが良い」 そう言い、タチバナは三人を見渡した 「ここから解放されるのは簡単さ。私との勝負に勝てば良い」 タチバナの前のテーブルに、カードやダイスが現れる 「勝負は色々ある」

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#くろくだの奇妙な冒険 17 「カードにダイスにルーレット…お好きなものをどうぞ」 「好きなもの…って言われても…」 高校生であれば、賭け事をしないのが普通。戸惑うかせんとくろぐだ…だったが。一人、乗り気な男がいた 「んじゃ、俺がパパっと終わらせりゃ良いんだな？」 はんちょ～だった

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#くろくだの奇妙な冒険 18 「おや、乗り気とは素晴らしい」 そう笑顔で言うタチバナ。そして手元のカード等に目を落とす 「さて、どれで私と勝負―」 「おっと、俺が持ってるこれで勝負だ」 そう言い、はんちょ～はポケットから賽子と椀を出す 「シンプルに丁半、どうだ？」 「良いでしょう！」

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#くろくだの奇妙な冒険 19 そう言い、タチバナとはんちょ～は手を合わせた 「…いや、何で持ってるんだよ」 かせんは静かに突っ込んだ 「何でって…学生の必需品だろ？」 「僕の知ってる学生の必需品に、賽子も椀も無いんだけど」 そんなコントを繰り広げる二人を、タチバナは咳払いして注意を引かせた

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#くろくだの奇妙な冒険 20 「では、決闘を開始しようか。ルールは、君の持ってきた賽と椀での丁半。三回勝負で宜しいね？」 はんちょ～は頷き、タチバナに賽子を椀を渡した。それを受け取ったタチバナは、器用に指で賽子を操る 「では一回目…入ります！」 宙に舞う二つの賽子。それは一瞬で椀に収まる

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#くろくだの奇妙な冒険 21 直ぐにテーブルに伏せられる椀。そしてタチバナははんちょ～を見た 「丁半、何方に？」 「…半！」 はんちょ～はそう言い、タチバナと視線を合わせる。ゆっくりと持ち上げられる椀。出目は… 「サブロクの…半！」 「しゃっ！」 3と6、半だった。ガッツポーズするはんちょ～

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#くろくだの奇妙な冒険 22 「お～」 見ていた二人も、タチバナも拍手する。はんちょ～は嬉しそうに頭を掻いた 「なかなかな幸運ですね、君は。では次参りましょうか…」 タチバナはそう告げ、また指で賽子を弾く 「入ります！」 椀に音を立てて飲み込まれる賽子。テーブルに伏せられた椀を、全員が見た

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#くろくだの奇妙な冒険 23 「…丁半、何方に？」 再び聞くタチバナ 「今度も半で行こう」 そうはんちょ～が告げた時、タチバナは一瞬ニヤリとした。そして、椀を持ち上げる 「な！？」 賽子の出目は… 「ニニの…丁」 2が二つ。はんちょ～は驚く…が、直ぐに平然を装う 「ま、この方が楽しいだろ」

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#くろくだの奇妙な冒険 24 その時、タチバナは言った 「因みに…負ければ命はありませんよ？」 「な…！？」 ほぼ三人同時に、そう驚く。タチバナはその反応を見て、楽しげに笑う 「最も、今回は三人もいらっしゃるのです。誰か一人でも、私に勝てれば解放しましょう」 「…負ければ？」 かせんは聞く