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@transmitter01 アイコンは井上さんに描いてもらったやつなのですよ~(>_<) 文章が上がったら試しに描いて見ようかとは思います。下手ですけどね(笑) ケミカルな方は、わたし化学分析やってるので書いてみたいなぁって感じです(>_<)
2011-07-15 09:53:46@messpipette 例えば、「ケミカルな話」というお題での集団執筆が許可されたら、表紙や挿絵を担当する?自分は取り纏めと文章を少し担当するけど。作品が集まるか心配だけどね。
2011-07-15 19:45:58@transmitter01 こんばんは!ケミカルな話なら本文も書きたいです!絵はわたしだけじゃ不安なので他の方にもお願いしましょう。
2011-07-15 20:03:30@ts_p [ケミカルな話]に拙作を投稿させていただきます。全6分割、タイトルは「王水の話」、ペンネームは「とよね」です。 #tknk
2011-07-18 16:52:39@ts_p [1]濃硝酸と濃塩酸をある割合で混ぜ合わせると、『王水』という液ができる。金をも溶かす強い酸化力をもつ液で、人体にとっても極めて有害である。この話をしてくださった高校時代の恩師は、教職に就く前に、とある化学研究所に勤めていた。
2011-07-18 16:53:30@ts_p [2]ある連休前の午後。恩師の後輩が連休明けの実験の下準備として王水を作った。だが後輩氏はとんでもない過ちを犯した。試薬壜のふたをきちんと密閉しなかったのだ。そして誰にも気付かれぬまま、研究所は休みに入った。
2011-07-18 16:54:13@ts_p [3]きたる連休明けの朝。最初に異変に気付いたのは、試薬が保管された部屋に入ろうとした人だった。鍵穴が異常にさびている。そっと鍵をまわして電気をつけ、その人は中の光景に愕然とした。
2011-07-18 16:55:40@ts_p [4]部屋が赤さびに覆われていたのだ。アルミの棚、パイプ椅子、窓枠やカーテンレール、蛇口、水道管。それらに使われているネジの類まで、部屋にある全ての金属が腐食しきっていた。
2011-07-18 16:56:46@ts_p [5]大騒ぎになった。駆けつけてくる人の中に、今しがた出勤してきたばかりの後輩氏もいた。部屋の惨状を目の当たりにした彼は、たちまち自分が作った王水のことに思い至った。果たして原因が王水であると特定されると、その場で男泣きに泣いたそうだ。
2011-07-18 16:57:30@ts_p [6]この話を聞いたとき私はゲラゲラと笑い転げたのだが、自分も働くようになり、彼のささやかなミスが引き起こした損失について考えれば、なかなか笑ってばかりもいられなくなった。私が彼と同じことをしてしまったらどうするだろう? ……たぶん泣くと思う。
2011-07-18 16:58:11@qminxx @kuromimigen @Toyo_ne 王水は腐食性の塩素ガスと一酸化窒素ガスを発生します。なのでこの惨状ができたわけですが、蓋をしても発生は止まらないので蓋が飛ぶか、最悪瓶が破裂するのです。わたしもやりました(笑)
2011-07-18 17:18:07@ts_p ビーカーの壁面をガラス棒で優しくこする。中の透明な液体を決して泡立ててはいけない。最新の注意を指先に込める。「もう、いいんじゃない」という声に頷き、そっとガラス棒を抜く。覗き込む。液体は静かなままだ。何の変化も現れない。溜め息が聞こえて、心に突き刺さった。 #tknk
2011-07-24 17:42:41@ts_p 僕らは大学の化学実習の課題をやっていた。化学教室の各実験台には小さなビーカーを食い入るように見つめる二人組が並んでいた。課題は、硫酸カリウムアルミニウム、つまりミョウバンの合成と結晶化だった。僕らは最後の結晶化の段階まで来ていた。「ダメかな」彼女が呟いた。 #tknk
2011-07-24 17:43:06@ts_p 教授の言葉が頭の中で反響した。「数ミリの結晶でもできれば良い。だけど君達の先輩で5センチ程の巨大な結晶をつくったペアが居たな。彼らはこの間結婚したんだが、当時も仲が良かったよ。愛の結晶と私は命名したんだが」僕らだって、きっと。ビーカーを祈るように見つめた。 #tknk
2011-07-24 17:43:39@ts_p 「あっ」ビーカーの底に、微かな亀裂のような線が浮かび上がった。見る間に太くはっきりとした線になり、無数の菱形の結晶に変化した。「いいんじゃないか」背後から覗き込んだ教授は満足そうな様子だった。僕は実習後に彼女に告ったが、嫌な予感の通りに砕け散って泣いた。 #tknk
2011-07-24 17:44:05@ts_p 有機溶剤。 これはもはや、我々の生活に無くてはならないものだ。 塗料・接着剤・クリーニング・香水・工業製品の洗浄など、数えだしたらきりがない。 この便利な有機溶剤には、いくつか特長がある。それは油脂を溶かすこと。蒸気が空気より重いこと。そして、よく燃えることだ。
2011-07-30 23:40:11@ts_p ある日、Aさんは製品に付いたタール状の汚れを調べていた。有機溶剤の一つであるキシレン を使い、丁寧に汚れを溶かして洗い流し、ビー カーに集めていく。結構な数の製品を洗い、分析に必要な量の汚れを集めた頃には、キシレンは1リットルくらいになっていた。
2011-07-30 23:40:23@ts_p ここまで作業を進めたところで、Aさんは困った。苦労して汚れを集めたものの、これでは薄すぎて使えない。もっと濃い溶液でなければ。Aさんはしばらく思案した後に、いいことを思いついた。そう、薄いのなら濃縮すればいいのだ。Aさんはさっそく、ビーカーをブースの電熱器に乗せた。
2011-07-30 23:43:07@ts_p キシレンの沸点は約140℃。当然その温度になれば沸騰が始まり、蒸気が発生する。その蒸気はビーカーに溜まり、口から溢れ、外側を伝って下へ流れていく。蒸気の行く先には電熱器の熱線があり…… ドカーン!! まるでアクション映画のような爆発音とともに、炎と黒煙が上がった。
2011-07-30 23:43:29@ts_p それはもう、試験室は大騒ぎ。幸いブース内であったため怪我人は出なかったが、ガラスにはヒビが入り、周りは煤で真っ黒。苦労して集めたサンプルも台無し。そしてなにより、後で上司から食らう大目玉を想像して、Aさんは途方 にくれた。
2011-07-30 23:43:52