出来の良い悪役とそうではない悪役の違いは、その「最期」で決まるというのをちょっと考えてみた話

悪役の最期の描写って肝心ですよね。 自分なりに好きな悪役達の良い所をまとめてみました。 あとネタバレがいっぱいです。
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惣流・ドルフ・ラングレン弐号機 @YZNlfuMP8Vbaaoj

物語の悪役、又は宿敵の"最期"を上手く描くというのはとても重要な事だ。 何事も「終わり良ければ全て良し」という言葉があるが、終わりが悪ければ如何に過程が良くても台無しになってしまう。 今回は良くも悪くも印象に残った様々な悪役達の最期を、サラッとした感想と共に並べて語って行きたいと思う pic.twitter.com/OzHVAj6m8J

2020-11-12 20:06:31
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『終わり良ければ全て良し』の語源は、シェイクスピアの戯曲のタイトルから来ている。 そのシェイクスピア作品で最も造型的に優れている悪役とされているのが『オセロー』に登場するイアーゴーだ。 奸計をめぐらし嘘で主人公オセローを破滅に陥れる、憎まれ役なイアーゴーの最期に注目したい。 pic.twitter.com/QzvLQZeL1t

2020-11-12 20:46:11
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策略によって自らの妻を手にかけたオセローはイアーゴーの自白によって自害する訳だが、主要人物が死亡する中で捕らえられたイアーゴーが命を落とす場面は無い 具体的な"制裁"という形も無いまま生き残る作中唯一の悪人であるイアーゴーは、悪役造型草創期の段階を象徴したかの様なキャラクターである pic.twitter.com/hC6KxxE7j4

2020-11-12 21:08:50
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文学作品では、ドストエフスキーの『悪霊』に登場したピョートルという人物がいる。 カリスマ的人物スタヴローギンを政治に祭り上げようとし、事が失敗に終わると自身は殺人を犯してまんまと逃亡する。 この"裁かれない悪"という悪役の方向性と帰結は、勧善懲悪ではない物語から成る面白さの一つだ。 pic.twitter.com/VkvY1r4IF1

2020-11-12 22:08:00
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文学作品ではない、大衆娯楽小説の悪役として雛型となったのが、ホームズの宿敵であるモリアーティ教授だ。 ホームズと取っ組み合った末に滝壺に落ちて死亡する最期が特徴的であるが、この高所から落下して退場する幕引きは、後の様々なジャンルの悪役キャラクター達にも見られる共通項である。 pic.twitter.com/6QMVLHUrrH

2020-11-12 23:00:47
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モリアーティと云えばBBCのドラマ『SHERLOCK/シャーロック』でのアレンジによって様変わりしたスタイルも特筆だ シャーロックの友人達を救う唯一の術を知るモリアーティは、自ら命を絶つ事でその突破口を見事に塞ぎ宿敵を追い詰める 自殺という形で幕を閉じたその最期も面白いと思わせる方向性の一つだ pic.twitter.com/oA2bQGrDUt

2020-11-13 08:20:02
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悪役造型を試みる場合、作り手は極めてシンプルな選択肢を見出だす その悪役の顛末、つまりは"殺すか殺さないか"のどちらかを選ぶ事だ この落とし所の着け方によって、悪役の完成度は良い方にも悪い方にも大きく左右される 善悪の境界がハッキリとした作品の場合、悪役は死をもって償うケースも多い

2020-11-24 05:33:10
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そういった生殺与奪の権利を巧く表したのが『恐怖の岬』という映画でのラストだ 逆恨みで異常者に付きまとわれた主人公は、闘いの末に奪取した拳銃を這いつくばる相手に向けて「殺しはしない。お前は一生檻の中だ」と言い放つ ここでは悪役がより苦しむという選択を、作り手による神の視点で導き出した pic.twitter.com/0WjPcaCP2G

2020-11-13 09:16:08
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ディズニーアニメは、"因果応報"という形で悪役の最期を印象的に描いた映像メディアの元祖だろう。 短編のトゥーン作品とは違い、長編の『白雪姫』では悪役の"死"が明確に描かれた。 追い詰められた魔女は岩石で小人達を押し潰そうとするが、落雷による足元の崩落で落下しその岩の下敷きとなる。 pic.twitter.com/qJUamZ3w4K

2020-11-13 09:54:34
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『白雪姫』とは対照的に、次作の『ピノキオ』に登場するファウルフェロー、ストロンボリ、コーチマンといった悪役達は作中裁かれる事がなく曖昧な形のままで行方をくらます。 これは必ずしも悪は罰を受けるとは限らない、とにかく"悪人には関わるな"という現実的史観とも言える教訓話の示唆であろう。 pic.twitter.com/qUPzBcx47D

2020-11-13 10:24:03
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宮崎駿監督作品では、高所からの落下により命を落とす悪役が何人か存在している。 『未来少年コナン』のレプカは、独裁者としての権力の座をその手中に収めかけたが、最期はその象徴であるかの様な空中要塞ギガントと運命を共にした。 pic.twitter.com/XWs7HiXhnK

2020-11-14 02:12:57
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『天空の城ラピュタ』の悪役ムスカもまた空中都市ラピュタを我が物にしようとするが、失敗に終わり古代兵器や外壁と共に散る。 中間管理職の地位にあったレプカとムスカは権力志向型の悪役であり、その死に様は一時の玉座からの転落という意味合いも込められていた。 pic.twitter.com/9yzGH2EEfj

2020-11-14 02:32:39
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漫画版『風の谷のナウシカ』に登場したナムリスは弟に対する劣等感が故に権力を志向したが、その本質は歪な内面性にある。 事が終わると燃え尽きて虚無的な思考となり、自分の命すら蔑ろにしたままゴミの様に空へと消える。 屈折感情を交えたそのシニズム観は、宮崎駿が最も力を入れた悪役造型だろう pic.twitter.com/wubJ7BJvG9

2020-11-14 03:55:46
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日本の少年漫画の固有の様式では、敵を倒す際の演出というものが重要視されている。 仲間同士が力を合わせて敵を討ち倒し、読者の高揚感を高めるという『聖闘士星矢』を代表とした見せ場は、少年ジャンプだけではない他の少年漫画雑誌にも共通するフォーマットとして定着した。 pic.twitter.com/2tl1AIo7I3

2020-11-14 06:04:48
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そんな中で1つの変化球であったのが『ドラゴンボール』の中での決着の付け方だ。 悟空と最も因縁深い宿敵フリーザとの闘いでは、高揚感溢れる勝利とは言い難い、虚しさと苦味を伴う結末として悪役の最期が演出されていた。 pic.twitter.com/RypHqXtwPz

2020-11-14 06:40:17
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後に生き延びていたフリーザはトランクスの手によって本当の最期を迎える訳だが、最大の宿敵だった悪役を新キャラにアッサリと倒させるという展開は、他の作品ではなかなか真似出来ないストイックさがあった。 強敵であると同時に、インフレバトルを加速させる舞台装置の様な役割を果たしたと言える。 pic.twitter.com/iK47EUOpUL

2020-11-14 21:49:41
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『ドラゴンボール』の中で最もカタルシスを感じさせるトドメの演出は、セルとの決着シーンであろう。 悟空と悟飯が力を合わせて放つ親子かめはめ波は、従来の少年漫画らしい勢いによる"熱さ"と悪役を吹き飛ばし消し去るという定番イメージをも植え付けた。 pic.twitter.com/wcGzAgHfLW

2020-11-15 02:54:57
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そして原作最後の敵である魔人ブウ戦では、世界中の人達からの力を貰い元気玉で消し飛ばすという方法で決着となる。 ただ敵を討ち倒すだけではなく、悪役に敬意を表してトドメを刺す最終的な幕引きは、シリーズ随一の名場面として今尚深く刻まれている。 pic.twitter.com/N0TOSq4hse

2020-11-15 03:23:23
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こういった世界中の人間の意思力を集めて糧にしながら敵を倒すという見せ場は、王道展開として人気が高く『ワイルドアームズ2』や『大神』に『マジンガーZ/INFINITE』等の終盤にも類似した影響下が見られる。 だが悪役を倒す過程において、その王道さは時にパターン化の一途を辿る諸刃の剣ともなる。 pic.twitter.com/ZAtNpW0ayW

2020-11-15 04:17:15
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基本ドラゴンボールの決着方法は、一度やった倒し方はもう繰り返さないという縛りの様なものがある。 ストレートな決着に相討ちや双方痛み分け等、初期から様々なバリエーションを展開してきたのが特徴だ。 pic.twitter.com/UFf9aOcF4F

2020-11-15 06:00:24
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『復活のF』では時間を巻き戻した後に"不意討ち"という手段でフリーザを倒し、『ドラゴンボール超』では絶対神である全王によって悪役ザマスは無慈悲に消滅させられる この超常的存在の力を借りた決着は、王道パターンとは明らかに違う変則的な帰結だ 当時はあまり良い評判ではなかったと記憶している pic.twitter.com/jpsrWbc0TH

2020-11-15 06:35:41
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しかしどういう形であれ、このマンネリを打破しようとする姿勢と理念はとても大事だ。 『ドラゴンボール超 ブロリー』ではその変則性が活かされ、悪人ではないブロリーを倒さない。という決着方法を見せた。 敵を消滅させる常套手段のイメージが強い、かめはめ波を最後に外すという"意外性"が要である pic.twitter.com/6E5RNGv7V0

2020-11-15 07:07:17
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アニメ『美少女戦士セーラームーン』の最終回では、セーラームーンにとって最も因縁深い宿敵クイン・ベリルに対して仲間達の思念が合わさり、合体技で敵を消し飛ばすという高揚感溢れる演出が行われた。 主題歌がかかり激しい盛り上がりを見せるその手法は、少女漫画が原作ながらも実に少年漫画的だ。 pic.twitter.com/ogfXJMJRpL

2020-11-15 14:56:11
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次作の『R』では、ちびうさとセーラームーンの親子による2つの銀水晶の力で敵を滅ぼすという、前作同様の王道さを見せる 漫画版でもこういった高揚感を高める展開がなされており、ダーク・キングダム編でのエンディミオン=タキシード仮面に支えられての勝利は、アニメ版にも負けないカタルシスである pic.twitter.com/aKoktFBed0

2020-11-15 22:24:45
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アニメと同じく全五部構成からなる漫画版は、そういった超常的存在との決着の付け方が連続しており、少々マンネリとも言える似たようなパターンとなっていく。 アニメ『S』での決着では、セーラームーンが敵を"倒す"のではなく、消滅寸前の場から土萠ほたるを助ける事に焦点を置く捻りが加えられた。 pic.twitter.com/SBCdXv05lw

2020-11-16 02:34:29
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