映画レビュー「魔女見習いをさがして」 コンセプトは興味深いが…

現在公開中のアニメ映画「魔女見習いをさがして」のレビューです。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

現在公開中のアニメ映画「魔女見習いをさがして」を見てきました。 本作は99年から02年にかけてテレビ朝日で放送された「おジャ魔女どれみ」シリーズの約20年ぶりの新作スピンオフ映像作品。 pic.twitter.com/MLyLICnoCo

2020-12-03 23:34:34
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私は「どれみ」はリアルタイム世代より少し上で、2年目辺りまでは見ていた記憶が微かにあるくらいの思い入れの人間。 で、この作品はコンセプトが面白いので是非見に行きたいと思い、約一ヵ月で全201話を観賞して映画に挑みました。 全201話マラソン記録(フォロワー限まとめ) togetter.com/li/1629722

2020-12-03 23:34:34
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この新作は「どれみ」の正統続編ではなく、「どれみ」を劇中劇に置いた設定の新作。 主人公は三人の成人女性(うち一人は劇中で成人入り)。「どれみ」が幼少期に放送されていて好きだったという。 つまり我々観客に近い設定の人物。本作の最も大きな特徴はこのコンセプトじゃなかろうか。 pic.twitter.com/5uPo0XAoTM

2020-12-03 23:34:36
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私は「どれみ」シリーズは個人的な理由でどうも苦手で、シリーズ全てを見てもやはり苦手な部分は苦手なままだった。それでもシリーズ完走した時は普通に感動したくらいには思い入れも出来た。 で、この映画がどうだったのかというと…

2020-12-03 23:34:36
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

残念ながら、私はどっきり どっきり DONDON!!もしなかったし、不思議なチカラがわいてくる気もしないどーしよ?(どーする?)な映画でした。 以下ネタバレ。 pic.twitter.com/9LG2ap7usX

2020-12-03 23:34:37
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

まあ『どれみは劇中劇で主人公達はどれみとは関係ないただの成人女性』というコンセプトからして特定のファンの怒りをどうしても買う作品なのは誰でもわかると思います。 が、私は単純に脚本が微妙だと感じました。 コンセプトはとても面白いのにあまり活かしきれているとは思えない。

2020-12-03 23:34:38
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

このコンセプトが狙うところって、要は『映画を見に来る観客と主人公達の同化』であることは間違いないと思うんです。主人公達はどれみファンの観客の器(入れ物)でもある。 つまり「あるあるw」系の楽しさが必要不可欠になってくる。

2020-12-03 23:34:38
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

しかし、この「あるある」を誘発する器としてこの主人公三人の女性にどうにも真実味が無い。 「現実のフツーの女性」というのは描くのが難しい。 pic.twitter.com/G748od7Ilb

2020-12-03 23:34:39
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「どれみ」シリーズの特色は、確かにクラスメイトとかの「普通っぽさ」でしたけど、私はテレビシリーズを見てる時点でその「普通っぽさ」は、極めて表面的な造型である傾向が強いと感じていました。 pic.twitter.com/p8PdOrayYy

2020-12-03 23:34:40
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「どれみ」シリーズが上手いのは単発回のキャラクターの描写じゃなくて、あくまで沢山の話数とシリーズを経た積み重ねとしての描写。一話だけだと食い足りない回が結構多かった。

2020-12-03 23:34:41
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

私が思うこの主人公達の最大の問題点は、『積み重ねてきた人生のバックボーンが全く見えない』というところ。 この三人、ホントに幼少期から今までずっとどれみ好きだった?という違和感。 pic.twitter.com/7Ad5tm1BOA

2020-12-03 23:34:42
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

作品の愛好の仕方って人それぞれだと思うんです。 幼少期に見てただけだけど凄く印象に残ってる人、幼少期から大人になるまでずっとその作品一筋な人、好きだけど見るのは一年に一回だけの人等。

2020-12-03 23:34:42
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ある作品のファンであることをたらしめる時、それはグッズを持ってるかとかパロディだとか台詞の引用とかじゃあないと思うんです。 『その人の作品との距離感』こそが、その人の作品愛を計る物差しじゃないでしょうか?

2020-12-03 23:34:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この主人公達は、幼少期にどれみを見た、このシリーズから入った、このグッズを持ってる、聖地巡礼をするといったことで「どれみファンであること」が表現されるんだけど、それを日頃どれくらいの距離感で愛好してるのかが全然わからないんですよね。

2020-12-03 23:34:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

例えば「疲れた時はどれみに限る」とか「落ち込んだ時はどれみ」とか「とりあえず携帯に動画が入ってる」とか。「ファン」って、何とかして自分の日常の中に好きな作品を入れ込もうとしますよね。 でもなんかそこに全然三人特有の個性を感じない。

2020-12-03 23:34:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

三人の個性は、どれみ達をなぞるかのようにハッキリつけられているにも関わらず、作品の愛好の仕方に差異がない。皆魔法玉を持っててLINEのやり取りでどれみスタンプを使って休日の趣味は聖地巡礼。 うーん、「あるある」の楽しさとしてはあまりにも表面的すぎるんじゃないでしょうか。

2020-12-03 23:34:44
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

どれみ愛」をいかに表現出来るかによって面白さが変わってくるのに、なんというか各キャラの間に「推しキャラ」の差異くらいしか無くて、まず作り手自体が「どれみファン」に対して全然思い入れが無いし、リサーチ不足なんじゃないかと思う。 pic.twitter.com/5Lhu1LyMke

2020-12-03 23:34:45
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

大体、いい歳した女性がキッズアニメの聖地巡礼をしたりグッズを身に付けたりしてるのに、「オタク度」にも触れられない。 オタクって普通、好きな作品っていくつかあるモノですよね? その中でいかに「どれみ」が特別な作品なのか。その「差異」こそが登場人物の「どれみ愛」を定義するんじゃないのか

2020-12-03 23:34:45
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この三人、というかこの世界の中でアニメは「どれみ」しかない、そんな世界観の狭さすら漂ってるくらい人間味が希薄なんですよね、この映画。 pic.twitter.com/fBt52PdOO3

2020-12-03 23:34:46
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ある種のメタフィクション的構造なんだけど、劇中劇の「どれみ」と、それが存在している現実との距離感やバランスが良くない。 アニメの地続きの現実、のようにしたいのだろうけどそれがどっちつかずでかえってリアリティがない。

2020-12-03 23:34:47
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

じゃあどこでどれみっぽさを演出するのかというと、ふんだんに流れる劇中BGM。これはシリーズを見ていたら否が応でも感動してしまう。 でも、それって映画の話の内容とは関係がない気がする。

2020-12-03 23:34:47
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

さて、この三人の主人公はそれぞれ仕事や人間関係で悩みを抱えている。それがどれみの聖地巡礼や人との出会いで解消されていくという構造。 でもなんだかここも因果関係がよくわからない展開が多い。 pic.twitter.com/FatfZxmh9c

2020-12-03 23:34:48
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

成長型のプロットを使うなら、主人公が抱える命題は適切に克服されなければならない。 でも、最終的なオチの「三人でMAHO堂を開く」というのは三人の人生の課題において一体何の解決になってるんだろうか?

2020-12-03 23:34:49
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

劇中劇である「どれみ」と、現実の人間である三人をMAHO堂開店によって繋ぎ、なんとなく奇跡っぽくして『魔法ってアルンダヨ!』と言いたいのだろうけど、用意した店で三人が同じ幻覚を見る終盤の怒涛の展開は、正直集団幻覚に見えて恐怖すら感じた。 pic.twitter.com/KUqVb7BToI

2020-12-03 23:34:49
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

なんというか、「どれみ愛」「どれみ盲信」「キャラの希薄さ」が絶妙に絡み合って、よくわからない幻覚映画になっている、そんな印象を少し感じる作品でもあった。

2020-12-03 23:34:50