年末とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~盗まれたワインを取り戻せ~】

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雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

年末とくべつ読み切り【痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘~盗まれたワインを取り戻せ~】 (実況感想ハッシュタグは #エルフ三人娘 だと後で拾えるので嬉しい)

2020-12-06 13:30:47
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「随分山奥まで来たけど、本当にこの道で合ってるんだろうな?」馬車がどうにか1台通れなくもないほどのやあっ道をえっちらおっちら登り進む三人組。先頭を歩くのは、胸にサラシを巻き、竹の軽鎧に身を包み、ギザギザ歯で長身のバンブーエルフ、メンマだ。

2020-12-06 13:33:15
もるげんれえて @morghenrate

初手バンブーエルフやめろ!!!!!! #エルフ三人娘

2020-12-06 13:35:54
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「だいじょぶだいじょぶ!この道しかないもん」メンマの後ろにつづくのは、ボサボサの金髪に簡素な貫頭衣でニコニコ笑うクソバカエルフのハカセ。クソバカエルフなんて名前の種族だが、実際はかなり賢い。ただ、陽気で無邪気で何段かカッ飛んだ思考ゆえ、その叡智を理解することは少々難しい。

2020-12-06 13:34:49
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「日が暮れる前にたどり着きたいゆ」最後尾を歩くのは、ミスリル銀の保管箱を背負うズングリとしたポテサラエルフのポテチ。顎の力が弱く、ポテトサラダを主食とするエルフだ。

2020-12-06 13:36:32
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彼女たち3人は、細かい種族は違えど、ヒューマンならざる旅エルフである。引きこもりがちなエルフは時おり旅に出て、他のエルフとパーティを組み、外の世界の知識や文化に触れ、同時に自分たちが無害な隣人であるということを伝えているのだ。

2020-12-06 13:37:05
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「ポテチの言う通り、こんな山奥で野宿は勘弁してほしいぜ……ん?おお!村が見えたぞ!」坂を登りきったメンマが目にしたのは、眼下に広がる広大な農地だ。中心には家々が集まる集落も見える。「あれあれ!」「今夜はゆっくり眠れそうゆね」後からつづく博士とポテチの顔にも笑顔が広がる。

2020-12-06 13:41:02
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まだまだ日は高い。ゆっくり歩いても日が暮れるまでには十分間に合うだろう。「よっしゃ!行くぞ!」「「おー!」」3人は元気を取り戻してずんずんと山道を下っていった。

2020-12-06 13:42:08
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……3人が農地の村に着いたのは、ちょうど夕暮れ時だった。そんな3人に話しかけてくる青年が1人。「おや?ワイン運びのお三方ですかな?予定では明日と聞いてましたが、少々早いお着きですな!」青年は少し酔っているようだ。

2020-12-06 13:45:34
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「ワイン運び?」メンマは首をかしげる。「またまた、今年も上出来ですよ。どうですか?試飲でもなされていっては。さあさあ、どうぞこちらへ!」青年は相変わらず勘違いしながら、3人を強引に酒場へ案内する。

2020-12-06 13:48:33
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「どうするよ?」「んゆー」「ついてこついてこ!」メンマとポテチは少し悩んだが、ハカセは即決だった。「ま、ハカセがついていくっていうんなら」「間違いないゆね」クソバカエルフたるハカセの叡智はずば抜けており、ハカセの判断が間違ったことはあまりない。

2020-12-06 13:49:55
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「親方ー!一足早く運び手さんがご到着ですよ!」3人を引き連れた青年が元気よく酒場に入ってく。「おおう!来よったか!」親方と言われた男はたくましい肉体の豪快なヒゲ男である。「どうぞどうぞ……んんん?おい!この方達は運びてじゃねえぞ。ただの旅エルフじゃねえか!」

2020-12-06 13:54:04
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「あれえ!?たしか今年の運び手は旅エルフの3人組だって……」「ばかやろう。旅エルフ3人組でも男の3人組なんだよ。っとまあ、細かいことはまだ言ってなかったしな。勘違いするのも仕方ねえわい!ブワハハハ!」親方は豪快に酒を煽る。どうやら、なかなかゴキゲンなようだ。

2020-12-06 13:56:25
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「そうそう、アタイたちはただの旅エルフ。偶然この近くを通りかかったんで寄ってみただけなんだ」メンマは親方を見る。「なるほど、偶然、か」親方もメンマを見る。「偶然なら仕方ねえよなあ!ブワハハハ!」親方は豪快に笑う。「ああ、しかたないだろ?」メンマもギザギザ歯をむき出しにして笑う。

2020-12-06 14:00:25
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親方はコップを3つ用意し、ワインをなみなみと注ぐ。「今年の新酒がもうすぐ解禁するんだが、この時期に偶然やって来たお客様だ。一足先に試飲でもどうかね?」「ヘヘ、待ってました!ハカセ、ポテチ、頂こうぜ!」「んゆ!」「うわーい!」3人は遠慮なくコップを受け取る。

2020-12-06 14:02:49
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新種というのはどこの世界でも希少価値があり、この地方でもそれは例外ではない。この農地で作られた新種はいくらかが都に運ばれて解禁日を待つことになる。しかし、それは表のルール。物好きたちの間では、原産地で”試飲”と称してこっそりと先に飲むことは、よく知られた裏文化である。

2020-12-06 14:05:44
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流浪の民のクソバカエルフは、各地で様々な分化を知る生きた叡智だ。ハカセからこの話を聞いたメンマとポテチは興味を持ち、時期を見計らってわざわざ山奥の農地へとやってきたというわけだ。

2020-12-06 14:07:21
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……それから日が暮れるまで、3人は村人たちと”試飲”を堪能した。飲みながら聞いたところによると、明日は新酒が都に向かって運ばれるため、前夜祭のようなものだということだ。「旅エルフさん!うちの名物はワインだけじゃないんだよ。来る途中にでっかい葉で埋め尽くされた畑を見たかい?」

2020-12-06 14:10:32
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「ああ、見たぜ。ありゃあブドウじゃねえよな」「そう、あれはうちのもう一つの名物、オオバタロイモさ」「イモ!?」イモという言葉にポテチが大きく反応して食いつく。「そ、それは、ホテサラにすゆん???」今日一番のキラキラした目で身を乗り出す。

2020-12-06 14:12:28
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「いや、ポテサラにはしないんだが……」「しなんゆか……」ポテチが目に見えてしょんぼりする。「ハハハ、まあまあ。あが、味は確かだよ。その証拠に洞、あなた達が殺気から食べているそれ。オオバタロイモなんだからね」「んゆ!?」

2020-12-06 14:15:03
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ポテチは目を丸くして、目の前に盛られているモチモチとした小さな粒粒を見つめる。「こ、これがイモ……ポテチの知らないイモだゆ……」「オオバタロイモはイモのままじゃ食べにくくってね。茹でて潰して濾し取って、あとはまあいろいろやるとモチモチした美味しい料理のできあがりっていうわけさ」

2020-12-06 14:18:12
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「んゆー……」ポテチは粒粒をじっくり見る。その目つきは一気に鋭くなり、もはや分析観察しているような雰囲気すらある。「オオバタロイモのこと、詳しく聞きたいんゆけど」「お!いいよ。どうせなら作ってるところも見せようか?」「お、お願いすゆ!」ポテチはポテポテとキッチンに向かっていった。

2020-12-06 14:20:53
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「まったく、ポテチの料理好きときたら……」「いつものことだよねー」「そうだな!ハハハ!」「あははー!」残されたメンマとハカセはひとしきり笑うと、また”試飲”を再開した。

2020-12-06 14:22:33
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