不思議の街のヴァルダさん(Twitter連載版)

仙台市某所にある不思議な古書店で、時折繰り広げられる小さな事件。『伝承者』を探す妖精を自称するシスターの格好をしたヴァルダさんと、彼女を慕う平凡な大学生アケミによる、日常系サスペンスです。本編では、17世紀の悪魔教徒デュッコ・シュレッカーの残した悪魔祈祷書が作品の鍵となります。盗まれた祈祷書と、安く買いたたかれた『シルレルの詩集』を二人は取り返せるでしょうか?
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DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

午前中には間に合わなかったけど、久しぶりに早い時間に一本上がった。やっぱり、本当の事を使ってお互いを騙す駆引きは書いてて楽しい。途中で起きた甲斐があったな(笑) #10時間寝てないことをアピールする伊集院アケミ

2020-12-19 12:38:16
つきかげ御影 @mgr_tokage

【他者作品】 『片隅に生きる人々(短縮バージョン)』/ 伊集院アケミさん(@arielatomnovelism.jp/novel/TJcyAe95… #ノベリズム 遅くなりましたが、完読いたしました。私は連続した会話で目が滑ることがたまにあるんですけど、この作品においてそのようなストレスが皆無でした。(1/2)

2020-12-19 12:44:11
つきかげ御影 @mgr_tokage

それぐらい読みやすく、相場の世界を気軽に覗ける物語となっております。自分はこの作品を通して、アケミさんの人柄や生き方を知ることができて非常に嬉しい限りです。 この鋭角な文章を真似できる人は誰一人いません。「彼が描いた他の物語もいずれ拝読したい」と心から思えます。(2/2)

2020-12-19 12:44:11
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

僕、完結した作品も結構後から手を入れて直すタチなんですが、宣伝しない作品を読みに来る新規さんは殆どいないし、既読の方は更新されても気づかないので、リテイクバージョンをTwitterで少しずつ再掲載してみようかなと思ってます。ガンガンミュートされまくるかもしれないけど、それはそれで。

2020-12-19 18:36:28
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

んじゃ、始めてみます。一本目は、作者の思い入れの割にあんまり人気がないヴァルダさんです。既読の方も、これを機会に再度読んで貰えると嬉しいです。Twitter版は別にまとめを作ろうかなあと思っているので、投稿途中でもいいねとかリプライを貰えると喜びます。 novelism.jp/novel/UkFIQyrU… #拡散希望

2020-12-19 20:09:37
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

プロローグ「死者の書のしもべ」  僕にはいきつけの古書店がある。いわゆる古本屋ではなく、希少本のみを取り扱っているガチの古書店だ。マンガは貸本レベルの古書なら数点取り扱っているが、基本的には商っていない。

2020-12-19 20:10:14
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

店の名前は『死者の書のしもべ』。店長は台場(だいば)さんという名の、二十代半ばくらいの女性である。見た目はまあ美人と言っても差し支えはないだろう。台場さんはいつも真っ黒なシスターの格好をしていて、「ヴァルダ」と呼ばないと返事をしてくれない。いわゆる中二病を拗らせたタイプだった。

2020-12-19 20:11:13
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

僕は正直、希少本にはそれほど興味がない。でも、このヴァルダさんの話が面白くて、時々実家の蔵から死んだ爺ちゃんの蔵書を持ち出し、彼女の店に遊びに行くのだった。爺ちゃんは中々の目利きだったらしく、持ち出した本に値が付かない事はほとんどなかった。

2020-12-19 20:13:13
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

ちょっとした小遣い稼ぎになることもある。だから僕にとって、ヴァルダさんの店に本を持って行くのは、一石二鳥の良い娯楽だったのだ。

2020-12-19 20:13:41
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「いらっしゃい。こんな雨の中、ここに来るなんて貴方も物好きね。こう出し抜けに降り出されちゃ、商売あがったりだわ」 「こんな日の方が、僕は台場さんといっぱいお話しができるので、嬉しいんです」 「ヴァルダって呼んでって言ってるでしょ? 査定額下げるわよ」 「すみません、ヴァルダさん」

2020-12-19 20:14:01
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

と、ここまでがお約束のやり取りだ。査定額が高いのか安いのか、僕にはさっぱり分からないけれど、本は綺麗にクリーニングされた後、買い取り額の二倍から三倍の値で店に出されている。数日のうちには棚から消えているから、きっと買い手にとっては良心的な店なのだろう。

2020-12-19 20:14:38
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

勿論、ネットで売ったり、神保町の古書店に持ってったりすれば、もっと実入りが良くなるんだろうけど、もしこの店が潰れたら、ヴァルダさんとお話しするという僕の娯楽がなくなってしまうので、別に幾らだってかまわないのだ。

2020-12-19 20:14:50
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「ところで今日は、どんな本を持ってきたの?」 「太宰治の『晩年』の初版本です。なんだかとても有名な本だって聞いたので……」 ヴァルダさんは、僕の手から本を受け取り、即答でこう言った。 「これは戦後に養徳叢書から出た再販本ね。状態は良いけれど、部数も出てるし、あまり価値はないわ」

2020-12-19 20:15:24
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「そうでしたか……」 「本人の署名なんかがあれば別だけどね、何かある?」 「いや、そういうのは、とくには見つからなかったですね」 「では、千円ってところかしら。売値も倍がいい所ね」

2020-12-19 20:15:55
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

昭和十一年に砂子屋書房から出たものだったら、相応の価値があるのだという。初版・五百部な上に、戦火のせいで現存数も少ないそうだ。 「それだと、いくらくらいになるんですか?」 「そうね。頁が切れてない『アンカット本』の美品なら、数百万円にはなるでしょうね」

2020-12-19 20:16:16
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「はあ……。そんな不良品みたいな本に、高値が付くんですねえ」 「昔は自分の好みに合わせて製本して、蔵書に加えるのが一般的だったのよ。太宰はプルーストの訳本まで持ってきて、わざとそうさせたらしいわ。どうする? 売る?」 「お願いします」  まあ、無駄足になるよりいいさ。

2020-12-19 20:16:33
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

プロローグはこれでおしまい。折角、ツイッターで連載するんで、なんか思いついたら突発でなんか書き足そうかなあって思ってます。ヴァルダさんも最初は静かですが、だんだん頭おかしい人になるんで期待してて下さい。「さっさと先にすすめやー」って人は、ノベリズムで読んで貰っても構いませんよ。

2020-12-19 20:20:45
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

第一話「持ち主署名ーオーナーシグネチャー」いきます。 いいねや、コメント等を頂けると大変喜びます。 novelism.jp/novel/UkFIQyrU…

2020-12-19 21:12:05
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「随分涼しくなってきたというのに、こんな強烈な夕立なんておかしなものね。電燈をつけておかなくちゃ、まともに物も見えないんだもの」 「お化けでも出そうですね」 「まあ古書店なんて商売は、あんまり明るくちゃ工合が悪いわ。西日が一杯に入るような店だと、クロスがみんな離れてしまうし」

2020-12-19 21:12:43
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

【死者の書のしもべ】はかなり年季の入った店だが、空調はちゃんと効いていた。だが、採光についてはどうやら完璧ではないらしい。

2020-12-19 21:13:26
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「ヴァルダさんは仙台の生まれなんですか?」 「私は伝承者を導く心の妖精だから、生まれとかそういうのはないわ。強いて言えば、この店かしらね?」 「知ってます。ヴァルダさんは『死者の書のしもべ』だから、それで店の名前も同じにしたんですよね。伝承者に見つけてもらいやすくするために」

2020-12-19 21:13:43
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「その通りよ。今のこの姿は、真の伝承者の登場までの仮初の姿なの。その時が、私の本当の戦いの始まりだわ――」

2020-12-19 21:13:56
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「ヴァルダさん、今日も飛ばしてるなあ……」と思いながら、僕は内心ゾクゾクしていた。完全に設定を作りこんでいるヴァルダさんは、こういう中二病テイストのセリフを、臆面もなく吐きまくるのである。

2020-12-19 21:14:10
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「貴方の生まれは仙台?」 「いえ。港区の虎ノ門病院で産湯に浸かりました」 「あら? 東京のど真ん中じゃない」 「母の実家がそっちにあったんです。お上相手の堅い商売をやってたそうですが、時代が変わりましてね。どんどん借金が増えて、結局森ビルに取られたそうです」

2020-12-19 21:14:52
DJ全力(元ネット仕手筋・サイバーエージェント・裏社会ジャーニー大賞受賞) @arielatom

「今じゃ、跡地は地下鉄の出入り口になってますよ」 「あら? ボンボンって、思ってもらえるだけでもいいじゃない」  年に似合わぬ古い本を持ってくる僕は、ヴァルダさんから、どこかの好事家の息子と思われているようだった。

2020-12-19 21:15:08
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