くろぐだの奇妙な冒険 第12巻 ~ヴィレッジ・ピープル《無知蒙昧》~
第三十五話「ヴィレッジ・ピープル《無知蒙昧》」
#くろくだの奇妙な冒険 第三十五話「ヴィレッジ・ピープル《無知蒙昧》」 1 あぁ、その荷物も持って行く。纏めておいてくれ。後そっちは私が― おっと、始まっていた様だね。しかし私はご覧の通り忙しい。暫くここを開けるから、君達に会うのはかなり後になるだろうね 全く、少し好き勝手にやり過ぎだ
2020-11-29 22:39:36#くろくだの奇妙な冒険 2 「さて…」 かせんはそう言い、椅子に座る四人を見渡した ここはテルイグランドホテル。日向寺が指定した部屋だ。そして、外からは爆音や怒号、悲鳴等が聞こえてくる 「この大混乱の中から、どうやって脱出しようか…」 彼等R.S.C.は現在、絶賛籠城中なのだ 始まりは少し前…
2020-11-29 22:44:38#くろくだの奇妙な冒険 3 「やぁ、ロケットボーイ」 日向寺からそんな電話が掛かって来たのは、まだ朝早い5時過ぎだった 「ぬぁ…なんです…?」 寝惚け半分で欠伸を噛み殺しながら、かせんは律儀に電話に出る。すると、日向寺は単刀直入に話を始める 「申し訳無いが、私のホテルに来てくれないか?」
2020-11-29 22:49:57#くろくだの奇妙な冒険 4 「勿論、ウォーボーイ君も連れて。お嬢さんとフニ君は先に来ている」 そんな言葉に、かせんは呆気に取られる。そして、電話越しに風を切る音が聞こえたのに気付く 「…先生、もしかして外ですか?」 「御名答」 そんな事を嘯く日向寺に、かせんは頭を回す。そして着替え始めた
2020-11-29 22:53:42#くろくだの奇妙な冒険 5 「…スタンド攻撃ですか?」 「その予兆…と言うか、確定事項だね」 日向寺の言葉に、かせんは一瞬動きを止める。そして、急いで荷物を纏め始めた 「分かりました。何処に集合ですか?」 「やぁ、はんちょ~。おはよー」 「おはよー…じゃねぇよ…!」 ホテルのラウンジ
2020-11-29 22:57:12#くろくだの奇妙な冒険 6 そこでかせんと待ち合わせたはんちょ~は、半分キレ気味にかせんに掴み掛かる 「今何時だと思ってるんだよ!」 「え?6時とちょっと」 かせんがあっさり返すと、はんちょ~は呆れた様に溜め息を付いて手を離した 「そうじゃなくてだなぁ…」 「御二方御揃いで御座いますね?」
2020-11-29 23:01:49#くろくだの奇妙な冒険 7 そんな二人に、制服を来たフロントマンが近付く。慇懃に頭を下げ、メモを渡した 「オーナーより、此方を御二方にお渡しするよう仰せ付かっております。御部屋の方は…」 「あ、聞いてます」 かせんはそう言い、頭を下げてエレベーターに乗り込んだ はんちょ~は口を開く
2020-11-29 23:10:20#くろくだの奇妙な冒険 8 「で、だ…お前、本当にあの男を―」 「信用しているよ」 あっさりした一言に、はんちょ~は愕然とした 「な…え、え!?」 「だって僕の疑問は全部解決したしね」 そんな答えに、思わず頭を押さえるはんちょ~。そしてドアが開く 「で、此方の部屋か…」 かせんは言った
2020-11-29 23:16:51#くろくだの奇妙な冒険 9 ホテルの最上階のスイートルーム。その重厚なドアの前に二人は居た 「滅茶苦茶高そうだな…」 そんな事を言いながら、はんちょ~はドアを叩く。と、中からくろぐだが顔を見せた 「あ、かせん先輩とはんちょ~先輩。お久しぶりです」 ペコリと頭を下げるくろぐだ
2020-11-29 23:27:16#くろくだの奇妙な冒険 10 「おう、久しぶりだな」 はんちょ~はそう言って、くろぐだの頭をポンポンと叩いた 「あ、中にどうぞ」 そう言われ、二人は中に入る。普通の部屋とは違い、豪奢な作りのスイートルーム。と、その端にフニコロがポツンと座っていた 「…なんかあった?」 くろぐだに聞くかせん
2020-11-29 23:37:19#くろくだの奇妙な冒険 11 「それが…」 事情を説明するくろぐだ。聞き終えたかせんとはんちょ~は、互いに口をつぐんだ 「成る程、知り合いが敵か…」 「そりゃ戦えんわな…」 沈黙が辺りを支配する。それを打壊したのは、居辛そうなくろぐだだった 「…あの、お茶を用意しますね」 「あ、うん」
2020-11-29 23:45:48#くろくだの奇妙な冒険 12 かせんが頷き、くろぐだはパタパタと備え付けのミニキッチンに向かう。かせんとはんちょ~は椅子に座り―爆破音を聞いた 「!?」 直ぐ様全員が臨戦態勢をとる。それぞれがスタンドを出し、動きを止めて息を飲んだ 「…あれ?」 攻撃が来ない事に、かせんは首を傾げる
2020-11-29 23:57:45#くろくだの奇妙な冒険 13 「敵は…?」 かせんが呟くと、再び爆発音がする。だが、今度ははんちょ~が気付いた 「外じゃねぇか?」 そう言い、カーテンを開けるはんちょ~。朝日が射し込み、全員が一瞬目を細め… 「…煙…!?」 眼下に広がる街に、爆煙が広がっていた。そして新たな爆発が
2020-12-01 00:17:31#くろくだの奇妙な冒険 14 「何だ何だ!?」 「え?なんで…!?」 全員が窓に顔を押し付け、外の様子を伺う。と、小さくではあるが、空を飛ぶ鮪の様なものや、ただの巨人の様なもの、走り回る恐竜の様なものが見えた 「もしかして、あれ…」 「スタンドか?」 そんな事を口々に言っていると、電話が
2020-12-01 00:39:17#くろくだの奇妙な冒険 15 「はい、もしもし」 「やぁ、ロケットボーイ」 かせんが出ると、日向寺がそう言った 「多分気付いたとは思うが…今回の攻撃はかなり特殊だ。街中のスタンド使いを一気に制御下に置いて、破壊の限りを尽くしている」 「対策はありますか?」 かせんは単刀直入に聞いた
2020-12-01 00:52:52#くろくだの奇妙な冒険 16 「手紙を開けるな」 日向寺も直ぐに返す。どうやら余裕が無いらしい 「相手スタンドは、弱い意思を持った人間を操る。何気無く手紙を開ければ、その意思を持って操られる」 「分かりました」 「それから―」 日向寺が話を続けようとすると、突然電話が切れた
2020-12-01 00:57:30#くろくだの奇妙な冒険 17 「あ、切れた…」 かせんはそう言い、電話を戻した。そして冒頭に繋がる 「…脱出する必要はあるのか?」 はんちょ~はそう言い、紅茶を飲む。電話の後、くろぐだが入れたのだ 「わ、私も…」 くろぐだも恐る恐る手を上げる 「ここには食糧もありますし」 「だからだよ」
2020-12-01 01:06:57#くろくだの奇妙な冒険 18 かせんは強く言った 「そんな環境、絶対に何か罠があるからね。ゾンビ映画の鉄則だよ」 「ゾンビ映画かよ…」 そんなかせんに、はんちょ~は呆れ半分で呟いた。そして、カップに手を掛ける 「でも、安心出来る環境が一番注意しなきゃいけないんだよ」 と、その時
2020-12-01 01:16:06#くろくだの奇妙な冒険 19 「お客様。オーナー招待のお客様」 ノックの音と共に、そんな声がドアの向こうからした。一瞬、全員が顔を見合わせる。そして、かせんとはんちょ~は立ち上がる 「…ロスト・エンファウンド」 フニコロはそう小さく呟き、スタンドを出して援護の構えを取る
2020-12-01 21:52:53#くろくだの奇妙な冒険 20 くろぐだはドアの視角になる所に隠れ、かせんに合図した。それを確認し、かせんはドアを開ける 「…はい。何でしょう」 かせんがドアを開けると、ホテルマンが慇懃に頭を下げる 「オーナーから此方を皆様にお渡しするよう、追加のお達しがありまして」 そう言い、手紙を出す
2020-12-01 22:04:41#くろくだの奇妙な冒険 21 「つい先程届きました。後、何やら外が騒がしい様子で御座います。外出は控えた方が宜しいかと…」 「あ、有り難う御座います」 かせんが手紙を受け取ると、ホテルマンは再び慇懃に頭を下げて立ち去った。ドアを閉め、全員を見渡すかせん。その手は震えていた 「て…手紙…」
2020-12-01 22:49:14#くろくだの奇妙な冒険 22 「遅い…と言いたいが、何方かと言えば早過ぎだな」 何時もの長い部屋にある椅子。そこにはむらびは座り、入って来た人物に声を掛ける 「貴様を呼んだのは他でもない。だが、貴様は理由が分かって居るのだろう?」 そう言い、はむらびは手元の資料を投げた 「日向寺皐月」
2020-12-01 23:16:54#くろくだの奇妙な冒険 23 「同然」 日向寺は投げられた資料を掴み、チラリと一瞥する。そして、ニヤリと笑ってから椅子に座った 「だが、貴様は私と共に来ない。だろう?」 そうはむらびが言うと、日向寺は大きく頷いた。そして、ハットをテーブルに置く 「私はあくまで、答え合わせに来たのだよ」
2020-12-01 23:24:25#くろくだの奇妙な冒険 24 「君達の企みと、このT市が何故スタンド使いを大量に産み出すのか。それらのね」 「ほう、面白い」 はむらびはそう言い、手を組んで日向寺を見据える。そして日向寺は指を二本伸ばした 「先ず、この街の秘密。何故スタンド使いが多いのか。それは簡単だ」 日向寺は言った
2020-12-01 23:32:17