【旅、マスクして】福間健二 #k2fact279

12月15日から24日まで。動きにくい感じになっている人が多いと思う。そういうときに、映画の上映で、鹿児島、松本、松山に行くことができた。四年ぶりの松山。予定が二転三転したのだが、人とおいしいものに出会って、充実した二泊三日だった。愛媛のことは、以前にも書いている。県名としていちばん好き。いろいろと書きたいことが出てくる土地だ。 四十年近く前に初めて松山に行ったときの目的は、オーティス・クレイのライヴ。音楽、その「Precious Precious」。 https://www.youtube.com/watch?v=nohuEWNzHFQ
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福間健二 @acasaazul

まだ海の音がする。貝殻の耳。旅から戻ったところ。図々しいかな、コクトーの詩を思い出して自分の作品も思い出した。枯葉の国。でも、ひとりで行ってふたりで帰ってくるのでなく、ふたりで行ってふたりで帰ってきた旅。ふたつの、おいていかれた人体のような島を見た。(旅、マスクして1)#k2fact279

2020-12-15 15:15:34
福間健二 @acasaazul

松山、郡中港。突堤の釣り人を遠くに見ながら歩いた。使われていない灯台から声がした。ウィンクでもすればなんとかなる。何が、だろう。マスクしてないおばさんたち、強気だ。あいているスペースがあると埋めたくなるが、おいていけない体二つ。灰色の海に落とさない。(旅、マスクして2)#k2fact279

2020-12-16 10:58:33
福間健二 @acasaazul

【訂正】 松山、郡中港。 ↓ 伊予、郡中港。 (旅、マスクして2)#k2fact279

2020-12-17 10:34:49
福間健二 @acasaazul

五色浜神社の猫たちも強気だ。カメラを向けても動じない。五色浜、五人の平家の姫を乗せた小舟が流れつき、姫たちは隠れて暮らすが、やがて身を投げて五色の石になったという伝説。で、五色姫通り。春には五色姫復活祭がある。愛媛、かわいいプリンセスという意味だ。(旅、マスクして3)#k2fact279

2020-12-17 10:10:00
福間健二 @acasaazul

心臓がドキドキするその体を弓にする。放たれる矢にもなる。古代のどこかの、自分の役割がわからないプリンセスの話だ。変転の末、いまは肥料を売っているらしい、ひと気ない古い家の前。椅子の上の帽子、だれのだろう。ここはマンアン港。萬代、いつまでも安全に、だ。(旅、マスクして4)#k2fact279

2020-12-18 11:26:33
福間健二 @acasaazul

秘密と速度。使いすてにされない弓。箱に入った歴史からは飛ばない矢。あるのだが、きこえない。萬安、マンアン。御中、オンチュー。そして松前、マサキ。地名をどうしろと言うのか。マスクしながらありったけの雷を轟かせて怒っている人。いるのだが、きこえない。(旅、マスクして5)#k2fact279

2020-12-19 11:37:58
福間健二 @acasaazul

余戸、ヨーゴ。東、中、南、西の四町に分かれている。いまだからではなく、いつもマスクしている人の説明。余りってどういうことか。その目配せと予言能力に対抗して光を移動させる。逆回転するプリンセス、実は枯木だ。伊予鉄道御中線、往復九八〇円の冒険、ここまで。(旅、マスクして6)#k2fact279

2020-12-20 11:08:29
福間健二 @acasaazul

市電に乗った。煙がひどかったね。松山市三番町の最近の火事のことを、マスクした日曜日の中学生が話している。男子たち。窓から見る地面には椋鳥の白い糞。ふりそそぐ午後の光。才能よりも努力。どの背中もそう言っている。紅マドンナを名乗れない愛果28号、おいしい。(旅、マスクして7)#k2fact279

2020-12-21 12:16:24
福間健二 @acasaazul

夜十二時をすぎても街には人の群れとそれを乗せるタクシー。ホテルの部屋には聖書と『坊つちゃん』。マリアとマドンナ。ちょっと古いが、琴姫、ボンカレー、お市の松山容子のふるさと。生まれて死ぬ。はじまって終わる。物語だ。人が体験するのはその途中から途中まで。(旅、マスクして8)#k2fact279

2020-12-22 10:48:28
福間健二 @acasaazul

城と温泉。漱石と子規。万作と十三。まだあるだろうけど、冬はみかん一色。でも、気になるのは映画館。サンシャインがもうすぐ閉館になる。ルナティックは大丈夫か。太陽がなければ月も輝かない。一番町、二番町、三番町。緑を感じる。ダーク・オリーブ・グリーンだ。(旅、マスクして9)#k2fact279

2020-12-23 11:35:49
福間健二 @acasaazul

蔦の露口に入れず、斜め向かいの小判道場に。マスターは九十二歳。六十年続いたこの人情酒場も今年かぎりだ。朝、街には紫の主張。再会不可能なパープル・プリンセスを思い出すじゃないか。大丈夫、鍋焼きうどんのコトリの前の行列にマスクしてサンタ帽子の姫君たち。(旅、マスクして10)#k2fact279

2020-12-24 10:57:36