【再放送】アルパイン・サンクチュアリ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:サイバネ技術が普遍化した未来。無限の広がりと輝かしき繁栄を得るはずだった人類は、Y2Kカタストロフィによる混乱と、枯渇IP資源を巡って暗黒メガコーポが引き起こした熾烈な電子戦争により、致命的な技術衰退を経る。やがて電子戦争終結から長い年月が経過した、或る日……)

2020-12-25 21:55:00
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特別再放送プログラム【アルパイン・サンクチュアリ】 #2 pic.twitter.com/mxdyolVe64

2020-12-25 22:00:01
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雲ひとつない青空の下、武装ヘリは着陸。装甲服とヘルメットに身を包んだハイデッカー1個小隊を、雪原へと吐き出した。彼らはマシンガンを装備していた。何かがおかしい。これが本当に公的機関なのか。ネオサイタマはどうなったのだ。リケは固唾を飲み、監視カメラの映像を見守るしかなかった。 32

2020-12-25 22:03:00
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彼らは一糸乱れぬ統一感で前進し、データセンターのメインハッチ前に立つ四つの墓標金属柱を気にも留めず踏み倒し、整列した。隊長格らしき者が拡声器で言った。「我々は新警察機構ハイデッカーだ!デンワ・テレコム社は20年以上前に滅びた!よってこの施設を接収する!ここを開けろ、市民!」 33

2020-12-25 22:06:00
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『信じるものか』スピーカーから、やや上ずったリケの声。『お引き取り願おう』ガシャン。ハッチ付近の天井が開き、迎撃用の遠隔操縦マシンガンが出現した。他の暗黒メガコーポに攻撃された時に備え、デンワ社が設置したものだ。銃口が威圧的にハイデッカーたちを睨んだ。まだ発砲はしていない。 34

2020-12-25 22:09:00
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「「「……」」」ハイデッカーたちは表情ひとつ変えず、全員一斉にマシンガンの銃口を睨み、雪原にタンを吐いた。そして同じ背丈、同じ顔つきの隊長が、トランシーバーで誰かに連絡した。 35

2020-12-25 22:12:00
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リケは混乱していた。デンワ社が20年以上前に滅びた。彼らは確かにそう言った。「嘘だ…」リケは首を横に振った。「でたらめだ…」カメラ映像を見ながら、立ち去ってくれと祈った。殺し合いなど嫌だ。本社が滅びたはずも無い。では何故彼らが来た。考えるな。今はここを守り抜くのだ。聖域を。 36

2020-12-25 22:15:00
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ハイデッカーが隊列を変えた。引き返すのか……?リケが安堵の息を吐いた。その直後。彼は歩み出てきた奇妙な男の姿を見た。「あれは……何だ?」リケの額から嫌な汗が流れた。軽装で雪原を歩くその男は、白黒のニンジャ装束を着ていた。そして片手を数メートル先の迎撃マシンガンにかざした。 37

2020-12-25 22:18:00
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「イヤーッ!」凄まじいカラテシャウト!男の掌から白い冷気の波動が生じ、次の瞬間、迎撃マシンガンが凍りつき動作不能!ナムアミダブツ!アイスブラスト・ジツである!「アイエエエエエエ!ニンジャ!?」リケを理解不能の恐怖が襲った!「イヤーッ!」さらにニンジャはカラテでハッチを破壊! 38

2020-12-25 22:21:00
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「アイエエエエエ!」リケは施設の非常防衛装置を全てオンにし、自らもライフル銃を持って回廊に走った!だが無駄な努力だった。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャは回廊に仕掛けられた各種トラップを側転回避し、ジツで凍らせ、ジャンプカラテキックで破壊しながら近づいてきたのだ! 39

2020-12-25 22:24:00
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「アイエエエエエエ!」リケは激しい恐怖と混乱で、心臓に痛みを覚えた。この日のために生きてきたはずなのに、立っていることもできなくなり、へたりこんだ。謎のニンジャが接近してくる。「守らねば……守らねば……!」震える指で、彼はライフル銃の引き金を引いた。BLAMN! 40

2020-12-25 22:27:00
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「イヤーッ!」ニンジャは両手を前にかざし、冷気の盾を作った。タツジン!リケの放った銃弾は氷のキューブの中に閉じ込められ、回廊に落下!「アイエエエエエエエエ!」それでリケの理性は吹っ飛んだ。彼は悲鳴をあげ、回廊を張って逃げた。ニンジャとハイデッカーが容赦ない歩みで彼を追った。 41

2020-12-25 22:30:00
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リケは必死で逃げた。非常時の対応方法は頭に叩き込んである。IP資源ごとこの施設を崩壊させるのだ。リケはライフル銃を杖代わりに進み、どうにかメイン電算機室の扉を開け、逃げ込んだ。……直後、後方から飛んだアイスブラスト・ジツがリケの片足を凍らせ、転倒させ、床に這いつくばらせた。 42

2020-12-25 22:33:00
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「うう……」リケは這い進もうとしたが、足が衣服ごと床に凍りつき、身動き不能であった。「信号によれば、あのジジイ1人か。30年も閉じ込められていたのだ、気が狂って当然だな。他に生き残りがいないか、念のため探せ」後方から、ハイデッカーに命令を飛ばす冷酷なニンジャの声が聞こえた。 43

2020-12-25 22:36:00
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リケはそれでも必死で上体を起こし、体を捻り、ライフルを構えた。「イヤーッ!」ニンジャのつま先が彼を蹴りつけた。「グワーッ!」リケは再び倒れ、ライフルは床に転がり、ジツで凍らされた。ニンジャは老人の横にうずくまり、襟首をつかんで強引に顔を上げさせた。 44

2020-12-25 22:39:00
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「ウウーッ……」リケはまだ目の前がチカチカしていた。すぐ横にニンジャがいた。「ドーモ、電算室まで案内ありがとう。私の名前はフローズンです」その声は冷気を伴っていた。黒いメンポの表面は霜で覆われていた。今にも砕けそうなリケの心を、愛社精神が守った。「お前たち……何者だ……?」 45

2020-12-25 22:42:00
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「おや、まだ会話ができる。手荒な真似をお許しいただきたい。だが先に銃を向けたのは、あなただ」フローズンは諌めるように言った。「何者だ…」リケは呻いた。「先ほども言ったように、我々は新警察機構だ。あなたを救助に来てあげたのだ。可哀想に、本社の倒産も知らず、こんな場所に30年も」46

2020-12-25 22:45:00
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「救助……」リケはその言葉を復唱した。相手は公的機関だ。敵対暗黒メガコーポではない。混濁した頭の中で、僅かな希望が芽生えた。フローズンが冷たい声で言った。「そうだ。だから殺さずにこうしている。差し当たってIP資源を貰う。この施設の管理権限パスワードを教えてもらおうか、老人」 47

2020-12-25 22:48:00
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「それはできん」リケは驚いた顔を作って言った。「まず本社か、できんならばこれから言う連絡先に連絡を取らせてくれ。上司に相談を……」「そんな悠長なことをしている暇はない」フローズンはいらだたしげに舌打ちし殴りつけた。「我々はIP資源の保護を最優先にしている。パスを吐きたまえ」 48

2020-12-25 22:51:00
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「死んでも吐くものか」リケは捨て鉢に笑った。「たとえデンワ社が倒産していたとしても……」「ドーモ、ホンシャ、ノ、ヒトデスカ?ワタシノ、ナマエ、ハ、イチバン、デス」リケの声を遮るように。電算機室に入ってきたハイデッカーに銃を突きつけられ、ロボは楽しげにアームを振り上げていた。 49

2020-12-25 22:54:00
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「バカ!黙っていろ!」リケは車道へ飛び出した子供でも見るような顔を作り、叫んだ。彼自身も、なぜそんなことをしたのかわからなかった。イチバンはただのショーギ・ロボットなのに。「何だ、それは…?」ニンジャの目に残忍な光が灯った。「「「どうします?」」」ハイデッカーが振り向いた。 50

2020-12-25 22:57:00
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「スキャンしろ」フローズンは老人の心拍数の変化を感じ取りながら、ハイデッカーに命じた。「ワタシ、ハ、ショーギ・ロボット、イチバン、デス。リケ=サン、ガ、ツクッテ、クレタ」イチバンは愛らしいカメラ・アイを忙しく動かしながら、室内の人間たちを見た。「ミンナ、デ、ショーギ、シヨウ」51

2020-12-25 23:00:02
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フローズンは鼻歌を歌い、そのロボットに歩み寄った。「待ってくれ」リケが声を震わせた。フローズンはロボの目に手を乗せた。「愛くるしい奴だな。お前がこれを作ったのか?」「ハ、ハイ、倉庫にあった旧いキットから、私が作り、プログラムを」「イヤーッ!」「ピガーッ!」アイ・カメラ凍結! 52

2020-12-25 23:03:00
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「イヤーッ!」さらにフローズンはそれを掌握!凍りついたイチバンのアイ・カメラは、粉々に砕け散った!「!」リケは心臓にカタナを突き立てられたような衝撃を受けた!「カメラ、ノ、セツゾク、ガ、カクニン、デキマセン。カメラ、ノ、セツゾク」イチバンはブザーを鳴らし不安げに首を振った。 53

2020-12-25 23:06:00